大学:科目終了試験に関するアドバイス

2024.10.20 New

大学:科目終了試験に関するアドバイス

「心理学的支援法II」について(2024.10.20更新)
これまで科目終了試験を採点する中で気になっていることがあります。それは、ご自身がすでに提出されたレポートで書かれた文章と重複する文章が「無言及のまま」解答で用いられているのが散見されたことです。中には自己剽窃と認められる解答もありました。過去にご自身が書かれた文章であるとはいえ、大学の科目試験の解答ですので引用は適切に行なってください。もちろん、レポートは公刊されたものではないので〇〇(2024)というような通常の引用形式には馴染まないかもしれません。しかし、例えば「すでに本科目のレポート課題で論じたように」とか「提出済のレポートを再掲すると」など、引用の意図を明確に示すことが重要です。その際、多量の直接引用は避け、適宜言い換えや要約を行い、解答の論旨に必要十分な量を引用することも心がけてください。
「漢文講読Ⅰ」・「漢文学の基礎Ⅱ」の論述問題について
● 論述問題では必ず作品の原文を引用して論じるようにしてください。原文には、基本的に書き下し文、または、現代語訳をつけるようにしてください。また、適当に作品を引用するのではなく、ちゃんと自分の論旨と関係する作品や文章を引くようにしてください。引用されているものと、説明文がかみあっていないことがよく見られます。こういう場合は加点できません。
● 詩を引用する場合、基本的には2句単位で引用します。
【例】「朝辞白帝彩雲間、千里江陵一日還(朝に辞す 白帝 彩雲の間、千里の江陵 一日にして還る)」。
● ただし、場合によっては、四句、八句を引用したほうが良いです。今回の「漢文学の基礎Ⅱ」の『詩経』の漸層法を説明する場合は、一章(四句)、乃至、二章(八句)を引用したうえで説明を加えた方が良かったです。そのほうが視覚的にも説得力が増しますし、どういったものを漸層法ととらえているか、学生の理解を見ることができるからです。レポートの場合は、字数制限があって、内容が長いものは作品のタイトルだけ挙げて概説を加えるだけでもよかったですが、特に字数制限の無い場合は、しっかりと自分の理解度が伝わるように工夫しましょう。だからといって、無駄に論述を長くしすぎてもいけません。このあたりのバランスにも学生のセンス・学習態度が窺えます。また、無意味に作品の全文を引用して、訳を加えただけのものも大して評価できません。
● 六義の説明(特に表現方法に関する部分)なども、やはりある程度作品を引用すべきです。そして、詩句のどこが、どのような表現につながっているのかを論じます。
● 最後に、ほかの科目にも共通する注意点を述べます。教科書や参考書を参照するのはかまいません。ただし、課題の説明文に教科書などの説明文(日本語で書かれた部分)をそのまま引き写してくるのはやめてください。その場合は点数自体をつけません。必ず、自分なりに教科書などの説明をかみくだいて、分かりやすく記述するなどの工夫をしてください。また、書き下し文や現代語訳を参考書などから引用した場合は、「書き下し文、現代語訳は誰々訳『~~』(○○出版社)に拠った」などと記載してください。※これは論述問題に限ります。問題が、「原文を書き下し文・現代語訳にせよ」だった場合に同じことをしたら点数をだしません。
「漢文学の基礎Ⅰ」について
● 江戸時代の訓読の流派については、『訓読論』・『続・訓読論』(ともに勉誠社※聖徳大学の図書館も所蔵しています)や、柳町達也『漢文読解辞典』(角川書店)の「訓点本解題」などを参考にしてください。試験前のレポート作成の段階で、これらも学習済みのものとして、試験を作成しています。レポート作成時に、参考書などの文書を自分なりの表現に工夫するだけではなく、「ヲコト点」・「~点」など、訓読が時代や流派の違いで、実際にどのように変わるのかに興味をもって、自己学習してほしかった部分です。
● 上記の問題が選択問題ということもあって、ほかの問題は少し難しくしてあります。ですが、訓読文を見慣れていたり、あるいは、『白楽天詩選』を参考に原文に返り点を打つといった特訓したりしているはずなので、原文の読解も時間をかければなんとかなるはずです。返り点(レ点・一二点など)を追いかけるだけでなく、どういった言葉からひっくり返るのか、返らないのかに注目して学習することで、熟語や品詞を覚えられるはずです。
たとえば、「低眉信手続続弾(眉を低れ 手に信せて続続と弾く)」であれば、「低眉」・「信手」は熟語ではないことが分かります。また、「続続」が動詞を修飾する副詞(連用修飾語)であることも分かります。また、「大絃噌噌如急雨(大絃 噌噌として 急雨のごとし)」であれば、「大絃」・「噌噌」・「急雨」が熟語(2字の結びつきが強い言葉)であることがわかり、同じような文句にぶつかったときに、「噌噌を絃にし」とか「急に雨の如し」とか「急のごとく雨」といった簡単な誤読をせずにすみます。※上記の用例は白楽天の「琵琶行」からのものです。なお、「大絃」などは「大なる絃」と訓読しても間違いではありませんが、一般的ではありません。
レポートなどを機械的にこなすだけですと、こうした文脈を読む感覚は身につきません。
● また、詩型についてもあまり理解ができていないようでした。今回の試験で扱った漢詩は「七言絶句」です。これが詩であるとしっかり理解できていれば、句を越えた無茶な読み方はしなかったはずです。「七言絶句」など聞き慣れないと思う方は、教科書の「五言」とか「近体詩」というのをほぼ無視していたのでしょう。ここも、どうして「五言」「七言」などと言うのか、「近体詩」とはどういうものか、「古詩」と何が違うのかに興味をもって自己学習しておく必要がありました。これらについては、最近の漢和辞典の附録を見るととよいです。たとえば、『全訳漢辞海』(三省堂)附録「中国古典の文体・詩律」など。また、「近体詩」の語釈などを見ても学べます。このほか、小川環樹『唐詩概説』(岩波文庫)なども参考になります。『白楽天詩選(上・下)』(岩波文庫)にも、作品の最後に詩型と韻目が書かれているので、それを手がかりに詩型の特徴がつかめます。
● 最後に、教科書や漢文の文章を読んで「なんだこれは?」と思った言葉や表現は辞書を引いて調べましょう。辞書を引く労を惜しんではいけません。漢文に関する言葉で分からないことは漢和辞典を、教科書・参考書などの地の文(説明・概説・訳文など)で分からない言葉は国語辞典を引いてください。これは漢文だけでなく、ほかの外国語の科目などについてもいえることです。手持ちの辞書で解決しなければ、図書館などで大型の辞書を利用したり、専門書・訳注本を参考にしましょう。漢和辞典は1文字(親字)だけを調べるのではなく、そこにつづいて並んでいる熟語も眺めるようにすると良いです。
スマートフォンなどで言葉を調べるのも良いですが、語釈を見てお終いにするのではなく、用例も確かめましょう。あわせて、その語釈が何の辞典から引用されているのかも確かめる必要があります。また、できれば、はじめて調べた言葉は、教科書の余白部分とか専用のメモ帳を作ってメモすると良いです。これは、言葉の意味をおぼえるまで続けるとよいです。それで、「この言葉、見たことあるな」と思って教科書やメモ帳を見返せるようになると、言葉が身についてきたと言えるでしょう。