最終更新日:2026年4月2日

1年次入学生:1年 3年次編入学生:3年 短期大学部:-
全学共通

A003

日本国憲法

主権者の一人としての基本的な知見を獲得するために

単位条件

通信 2単位

教員

小田桐 忍
授業を始める前に

本科目は、大学から配付される授業用資料(以下「資料」)をテキストとして使用する。授業では、資料の1ページから103ページまでを講述する。試験範囲もこれに準ずる。付録として「日本国憲法」全文(221ページから237ページまで)を本文末尾に添付する。各自活用していただきたい。この教材は、本科目担当者が(以下「小職」)2000年4月から2025年3月まで勤務した三大学で講述した日本国憲法講義録が基になっている。当時、販売した冊子は既に手元にないが、電子データが残っていたので、今回、通信事務局に労をとっていただき、紙媒体にて受講者の皆さん(以下「皆さん」)に配付される。

履修条件

なし

到達目標

本科目の到達目標は、副題にある通り、皆さんにわが国の主権者の一人として日本国憲法に係る基本的な知見(歴史・原則・判例など)を獲得していただくことにあります。かかる目標を達成するために、資料は皆さんにとって有益な役割を果たすことでしょう。一浪後、小職が早稲田大学(以下「早大」)の文系全学部(受験日順に、政治経済学部、法学部、商学部、文学部、教育学部、第二文学部、社学科学部)を受験し、何と六学部で不合格やっと一学部(夜間の社会科学部だけ)に受かり、早大正門近くの布団店の二階の三畳間に下宿したのが今から約半世紀前の1980(昭和55)年でした。講義でお世話になった先生たちは学徒出陣で太平洋戦争に動員され、繰り上げ卒業された方々でした。早大の大学院法学研究科に進学して、修士課程及び博士後期課程で師事した(正確には、1985年4月から2002年5月に逝去されるまで公私にわたりお世話になった、とは言っても、初就職先の上越教育大学は自分の力で探し、賄われました)井上茂(お茶の水女子大学学長退任後は、早稲田大学法学部客員教授、中央学院大学法学部教授、当時の文部省から依頼されて湘南国際女子短期大学学長を歴任しました。)も東京帝国大学卒業後、昭和17年から終戦まで応召されました。そうした方々から復員して学業を再開することができた喜びを直に拝聴しました。彼らの声を、そして当時を知る先輩たち(例えば、小職も既に他界した両親から子どもの頃に折にふれ聞かされました。父は昭和2年に樺太の豊原で生まれ、昭和23年に北海道に引き揚げてくるまで、現地のロシア人と炭鉱で働きました。その後も70歳まで炭鉱労働者でした。母は昭和8年に北海道の幾春別で生まれ、母子家庭だったため弟や妹たちの面倒を見ながら働かねばならず、夢だった女学校の進学を諦めました。同級生たちが進学し登校する姿を見ながら、悔しくて泣きながら働いたそうです。)の思いを生で聞けなくなってしまいました。さびしい気持ちと同時に、過去を風化させてはいけません。実は本科目には「過去を風化させない」ためにも皆さんに履修していただきたいという小職の切なる願いが込められています。本科目の到達目標は、皆さんにとって、短期的視野に立てば、卒業要件を満たすことですが、長期的視野からも、つまり次世代に平和な世界を継承するためにも、ぜひ日本国憲法を学習していただきたいのです。日本国憲法には、大日本帝国が陥った侵略戦争の歴史に決別して、平和国家の建設に向けてフレッシュなスタートを切ったわが国の新しい「かたち」が103の条文に明文化されています。憲法改正が政治の世界で話題になり、国政選挙の争点として問われる時代だからこそ、実は憲法改正権は、改正を声高に叫ぶ政治家にではなく、皆さんの手中に握られていることを再確認していただきたいのです。翻って、世界情勢に眼を向ければ、ウクライナでもイランでも、米・ソの二大国が軍事力による制覇に躍起になっているではありませんか。皆さんにおいては、今回の履修を機に、どうか一人の主権者として獲得した知見を鋭意活用してください。Festina lente (σπεύδε βραδέως)!

学習成果

(1)日本国憲法を最高法規として理解し、自分自身の問題として、主体的に捉え考えることができる。
(2)日本国憲法に関する基礎知識を獲得し、主権者として将来の憲法論議に参加することができる。
(3)憲法判例に関する討議に積極的に参加し、客観的に形成された自分の意見を述べることができる。
(4)わが国の歴史を振り返り、日本国憲法の現代的意義について考察し、説明することができる。
(5)聖徳大学で日本国憲法を学習することの意味について十分に理解し、それを活用することができる。

テキスト教材

小田桐忍『日本国憲法講義録』2026年3月(皆さんに配付された資料を指す)

評価方法と採点基準

・レポート課題の場合
資料の吟味熟読ができているかどうかについて、皆さんから提出されたレポート課題を通して評価する。
・科目終了試験の場合
資料を吟味熟読し、要点を把握できているかどうかについて、また採点する側を想定し、丁寧な論述がなされているかどうかについて、レポート課題合格後の科目終了試験を通して評価する。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

・学業と職業の両立を目指す皆さんの健闘を祈念します。
・テキストは付せんなどを使用して、どこに何が書かれているのか注意しながら、講読してください。

レポート課題

提出数 2

第1課題

Web提出可
[本文中に指示あり]

第1設題

Ⅰ・Ⅱ両方の問いに答えなさい。(出題範囲:授業回数第1回から第7回まで)

[Ⅰ]説明文(1)~(30)を読んで、その説明が正しい場合は「○」を、説明が誤っている場合は「×」を解答欄に記入しなさい。なお、「説明が正しい」とは資料の中で説明している通りの内容であることを指す。(30問×3点)

(1)現行憲法の学問の自由は、一般に、学問研究活動の自由、研究成果を発表する自由、以上の2つを保障することを内容としたものと解されている。学問の自由は、特に、真理の発見・探求を目的とする研究活動の自由であり、思想・良心の自由の一部を形成するものである。また、研究成果の発表の自由は、研究の結果を発表することができなければ、研究自体が無意味になってしまうので、当然これに含まれ、表現の自由の学問的側面に該当するのである。

(2)日本国憲法は、象徴たる天皇に国家機関の1つとしての地位を認め、その象徴の地位に相応しい一定の国事に関する行為を行なう権能を与えている。日本国憲法の天皇は「この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」(第4条)とされている。

(3)日本国憲法は、思想及び良心の自由や表現の自由を保障しつつも、内心における学問的思索は特に高い程度の自由が保障される必要があるところから、その第23条で「学問の自由は、これを保障する」と定めている。大日本帝国憲法には、学問の自由を保障する規定はなかった。従って、1933(昭和8)年の京大滝川事件に象徴されるように、権力による学問の自由や大学の自治に対する侵害が行われた。

(4)現行憲法の天皇の国事行為は、儀礼的・形式的に行なう権能しか与えられていない。その行使は常に「内閣の助言と承認」を必要とする(第3条)。「助言と承認」とは、本来ならば、事前に意見を申し出る(助言)、事後に同意を与える(承認)という意味であろうが、ここでは両者を1つの行為と見なし、内閣の同意の意味であると解することになる。

(5)日本国憲法は、太平洋戦争における敗戦を契機として誕生した。太平洋戦争は、1945(昭和20)年8月14日、日本が連合国側のポツダム宣言を受諾し無条件降伏することにより終結した。ポツダム宣言では、戦後日本の平和主義の確立、基本的人権の尊重及び国民主権の確立が要求され、この方向への根本的な変革を日本に求めた。

(6)摂政は、天皇が長期にわたって国事行為が行えない場合に、天皇に代わって置かれる法定代理機関である。現在の皇室典範では、「天皇が成年に達しないとき」、「天皇が精神若しくは身体の重患または重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないとき」、皇室会議の議により、摂政を置くことができるとなっている。なお、この場合でも、皇族女子に摂政資格が与えられることはない。

(7)日本国憲法第21条第2項の「検閲の禁止」とは、公権力、専ら行政権が発表されるべき表現の内容を審査し、不適当と認めるときは、その発表を禁止する行為である。検閲は、表現の自由に対する事前抑制の典型であることから、憲法は特にこれを禁止している。

(8)近代憲法の基本原則の一つは、基本的人権の保障である。絶対君主国家の抑圧専制政治に反抗し、自由と平等を理想として戦った市民階級にとっては、市民の基本的人権の保障こそが最大の目標であった。

(9)日本国憲法は、わが国の民主主義と平和主義を実現するための政治機構の原理として、権力分立主義を採用している。国会、内閣、裁判所は、それぞれ固有の権能として、立法権、行政権、司法権を有し、相互の抑制と均衡を保たせることによって、国家権力の集中、拡大を防止し、民主主義政治の実現を推進しようとしている。

(10)憲法は最高法規である。近代的意味での憲法は、法律、政令、規則、条例といった国法秩序において、それらの頂点に位置し、最も強い効力をもつ最高法規である。従って、もし憲法の内容に矛盾する法律がある場合、当該法律は無効となる。

(11)大日本帝国憲法は、天皇主権を絶対的な基本原則とする。明治憲法第1条は、「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」と規定し、第4条は、「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ」と規定して、天皇は、国家の元首(国際法上、対外的に国家を代表する者)であり、統治権の総攬者(政治権力を一手に掌握する者)として、その地位は、第3条で「神聖ニシテ侵スヘカラス」のものとされていた。

(12)基本的人権は、生まれながらにして有する「天賦の権利」(自然権)に立脚して、基本権を確保するためには、国家の権力を制限し、個人の基本権に対して権力の介入を禁止する「国家からの自由」(自由国家)を確立させることが不可欠であった。

(13)明治時代の議会(いわゆる帝国議会)は、民選による貴族院と、皇族、華族、多額納税者といった特権的身分により構成される勅選の衆議院があり、これが貴族院を抑制する役割を果たしていた。

(14)日本国憲法は、過去の悲惨な戦争体験の反省から、「戦争の放棄」を明文化し、徹底した平和主義を基本原則として掲げている点に最大の特色がある。前文は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」、「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と宣言し、平和主義の確立が憲法制定の重大な動機であるとしている。

(15)立憲主義を基調とする憲法は、近代国家の生成に至る近世以降の歴史的産物であり、政治権力の組織化というよりも、国家権力に制限を加えず国民の権利と自由を制限するところに憲法の本質があると見なす。

(16)日本国憲法は、国民主権をその基本原理として定める。しかし、大日本帝国憲法と同様に、日本国憲法は、その第一章で天皇制の存置を認める。日本人の中の特定の人物に「天皇」という特別な地位を与え、一般国民と区別することは民主主義の趣旨とは相容れないことであった。その内容においては、明治憲法下にいう天皇制とは本質的に異なっていたとしても。

(17)連合国最高司令部の指示もあり、日本政府は、吉田茂を主任とする委員会を発足させ、憲法改正草案を作成した。だが、当該政府案は、「天皇が統治権を総攬する」という原則に変更を加えないなど、保守的な色彩が濃厚であったために、総司令部は全面的に拒否し当該政府案は潰えた。

(18)憲法規範の特質は、自由の基礎法である。市民革命を経た近代憲法の最大の目的は、それまで抑圧されていた個人に着目し、何よりも個人の人権を保障することであった。

(19)20世紀の憲法は、実質的な自由と平等を確保するためには、これまで市民の自律に委ねられていた市民生活の領域に国家は一定の限度まで積極的に関与し、社会的・経済的弱者の救済に努力しなければならないという考え方を尊重するようになった。

(20)日本国憲法第2条は、「皇位」すなわち国家機関としての天皇の地位は世襲であることを規定している。何人が皇位に就き得るのかについては、国会の議決した民法典によって規定する立場を採用している。

(21)大日本帝国憲法は、明治政府の最初の成文憲法として、わが国の立憲政治に相応の役割を果たしてきたが、明治維新後の民主主義思想を基調とする自由民権、議会開設の運動と、それに対抗する象徴的天皇制との妥協を図って制定した憲法である。

(22)明治天皇の大権(権能)は、統帥大権と統治大権があるとされる。後者は徹底した天皇中心主義であった。議会は天皇の立法権の協賛機関であり、行政権は各国務大臣が単独で天皇を補佐して行ない、当該大臣は議会に対して責任を負うが、天皇に対して責任を負うことはなかった。

(23)日本国憲法は、前文で「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とし、更に本文第1条は、「天皇は、日本国の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と規定し、大日本帝国憲法下における天皇主権の立場を根底から否定し、国民が主権者であることを確定している。

(24)人権保障の確立は、1215年のフランスのマグナ・カルタから始まり、1628年の権利請願及び1689年の権利章典、そして1779年のヴァージニアその他のアメリカ諸州の人権宣言そしてその影響を受けて成立した1789年のイギリス人権宣言へと続いている。

(25)憲法は、全ての国家が制定している最高法規である。その国家が、いかなる社会・経済体制であろうとも、政治権力とそれを行使する機関が存在しなければならない。そうした政治組織と作用、国民と国家の関係を規律する基本的・根本的な法律を、「立憲的意味の憲法」と呼んでいる。

(26)伊藤博文は、憲法調査のために渡欧した。彼はドイツやオーストリアに赴き、ウィーン大学のグナイストやベルリン大学のシュタインといった憲法学者の教えを受けつつ、帰国後、特に立憲君主制のプロイセン憲法を参考にして大日本帝国憲法を起草した。

(27)公共の福祉に関する「比較衡量」とは、要するに、「基本的人権を制限することによって得られる利益またはその価値と、それを制限しないことによって維持される利益または価値とを比較衡量して、前者の利益またはその価値が高いと判断される場合には、それによって人権を制限することができる」というものである。

(28)皇室財産には、国有財産で皇室の用に供される皇室用財産と皇室の私有財産とがある。皇室経費は皇室経済法によって、内廷費、宮廷費、皇族費の3つに区分し、予算に計上される。なお、内定費とは、「内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるもの」を言う。これは、宮内庁が経理する公金である。

(29)1919年のワイマール憲法は、その人権宣言の中でも、特に有名な「経済生活」の章において、以下の通り規定した。「経済生活の秩序は、すべての者に人間に値する生活を保障することを目的とする正義の原則に適合しなければならない」(第151条)と明言し、社会的経済的弱者の保護とそのための国家の積極的活動の義務を定めた。

(30)日本国憲法は、国民主権の理念を、現実の政治では国会中心の代表民主制の原理を通じて具体化している。国民主権の建前からは、国民の全てが直接国政全般に参加することが望ましいが、国民の数が多くなれば、それは現実には不可能である。そこで、国民は代表者を選出し、代表者を通じて政治参加する直接民主制を採用する。

(1) (2) (3) (4) (5)
(6) (7) (8) (9) (10)
(11) (12) (13) (14) (15)
(16) (17) (18) (19) (20)
(21) (22) (23) (24) (25)
(26) (27) (28) (29) (30)

[Ⅱ]わが国の象徴天皇制について「180字以上200字以内」で論述してください。なお、評価基準は以下の通りとします。資料を使って明確に論述できている場合10点、字数は指示通りだが内容が充実していない場合5点、字数も指示に従わず内容も充実していない場合0点とします。

第2課題

Web提出可
[本文中に指示あり]

第1設題

Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの問いに答えなさい。(出題範囲:授業回数第8回から第14回まで)

[Ⅰ]説明文(1)~(20)を読んで、その説明が正しい場合は「○」を、説明が誤っている場合は「×」を解答欄に記入しなさい。なお、「説明が正しい」とは授業用資料の中で説明している通りの内容であることを指す。(20問×4点)

(1)日本国憲法第26条は、全ての国民が一定の教育を受けることは民主主義の不可欠の要件であるとして、教育を受ける権利を保障している(第1項)。このことは同時に、児童の保護者である国民に対して、法律の定める9年の普通教育を受けさせる義務を負わせる意味を持っている(第2項)。従って、義務教育は無償とされている。

(2)財産権は、民法上の物権、債権、著作権などの無体財産権及び鉱業権、漁業権などの公法上の権利を含む、財産的価値を有する全ての権利を称する。日本国憲法第29条第1項は、個々の財産権の保障と同時に、制度としての私有財産制度をも保障する「二重の保障」の規定と解されている。

(3)自衛権は、独立国家であれば当然に有する権利である。それは、国連憲章第51条においても「集団的自衛権」として認められている。日本国憲法もこのような自衛権まで放棄したわけではない。だが、自衛権が認められているとしても、それにともなう自衛のために必要な防衛力と自衛力の保持が認められるかどうかは、重大な論争のあるところである。

(4)自衛隊問題に関する政府見解によると、自衛権は国家固有の権利として日本国憲法第9条の下でも否定されていない。そして、自衛権を行使するための実力を保持することは、憲法上も許される。つまり、自衛のための必要最小限度の実力は、憲法で保持することを禁じられている「戦力」に該当しない。ここに言う「自衛のための必要最小限度の実力」とはいかなるものかは必ずしも明確ではない。わが国の政府は、それについて「他国に侵略的な脅威を与えるような攻撃的兵器は保持できない」と説明してきている。

(5)日本国憲法第22条第1項の保障する職業選択の自由は、自己の従事する職業を決定する自由を意味する。また、自己の選択した職業を遂行する自由、すなわち「営業の自由」もそれに含まれるとするのが通説・判例である。

(6)日本国憲法第29条第3項は、私有財産を、正当な補償の下に、「公共のために用いる」ことを認めている。ここで「公共のために用いる」とは、道路、鉄道、空港、学校の建設など、直接公共の用に供する公共事業に当てるためだけではなく、広く社会公共の利益のため財産権を制限する場合も含むと解される。その場合、特定の私有財産を犠牲にするから、「正当な補償」が必要である。

(7)最高裁判所は、戦力とは、「わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しない」とし、また安全保障条約は高度の政治性を有するものであって、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限り、司法裁判所の審査には原則としてなじまない性質のものであると判示し、原判決を破棄・差戻した。

(8)日本国憲法第26条第1項は、全て国民に対して、教育を受ける機会均等の権利を保障し、第2項では、保護者に対して、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を課し、義務教育の無償制度を規定している。全ての国民が一定水準以上の教育を受けることは、民主主義政治の正しい運営をなすための要件であると共に精神的自由権を維持するための具体的手段でもある。

(9)日本国憲法第22条第1項は、居住・移転の自由も保障している。この自由は、自己の好む場所に住所や居所を決定し、移動することのできる自由を意味する。一時的な移動、すなわち旅行の自由はこれに含まれない。

(10)生存権に関する判例として有名な朝日訴訟においては、「第25条第1項の規定は、全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したに止まり、直接個々の国民に対して具体的権利を付与したものではない。具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって、はじめて与えられるというべきである」(最大判昭和42年5月24日)と判示している。

(11)日本国憲法第28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と定めて、勤労者に対する生存権の保障を具体化している。すなわち、本条は、労使関係において経済的劣位にある使用者を労働者と対等な立場に立たせることによって、使用者の人間に値する生存を確保し、実質的な自由・平等を実現しようとするものである。

(12)「現行犯」とは、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者」(刑事訴訟法第212条第1項)を指す。現行犯逮捕の場合は、逮捕権の濫用が少ないことから、「令状」を必要としない。その場合を除き、被疑者を逮捕するときは、司法官憲(裁判所または裁判官のこと)の発する「令状」(被疑者について、当該者の氏名、住所、罪名、被疑事実の要旨、有効期間などを明示した文書)を被疑者に示した上で、身柄を拘束するのが原則である。

(13)選挙人が誰に投票したのか、秘密が保障されることを「秘密選挙」と称する。全ての人が自由な自分の判断を、他人によって歪められず、投票できるためには、投票の秘密が保たれなければならない。日本国憲法第15条第4項は、「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない」として、その重要性を示している。

(14)団体行動権とは、労働者の団体が使用者と労働条件について交渉する権利であり、交渉の結果として締結されるのが労働協約である。団交拒否は団結権の侵害であると同時に、労働組合法によって不当労働行為と目される点で、この権利の保障がなされている。また、団体交渉権とは、労働者の団体が労働条件の維持・改善の目的で行うべき全ての行動を言う。ここでは同盟罷業、怠業など、業務の正常な運営を阻害する争議行為を言う。

(15)刑事被告人は、「公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利」を持つ(日本国憲法第37条第1項)。「公平な裁判所」とは、裁判所の組織構成の面において、公平かつ偏りのない裁判所を意味する。この公平性を維持するため、裁判官の除斥、忌避の制度が設けられている(刑事訴訟法第20条以下)。

(16)教育を受ける権利に関して争われている重要な問題としては、教育の内容を決定し、実施できる権能(教育権)の主体は誰であるかという問題がある。この教育権の主体については、国が関与・決定する権能を有するとする国家の教育権説と、それは教師、親など国民全体にあり、国は教育の条件整備の任務を負うにとどまるとする国民の教育権説とが対立している。

(17)日本国憲法第27条によれば、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」として、勤労の権利を宣言し、勤労の義務を定めている。憲法第25条の生存権の保障については、労働能力のない者に対しては国がその生存を保障する責任を負うことを意味しているが、生存権の具体的実現は、労働能力のある者に対して働くことのできる権利を保障することによって行われるものである。従って、憲法は生存権の保障の実現的規定として勤労の権利を保障する。

(18)日本国憲法第22条第2項が保障する外国移住・国籍離脱の自由は、国際社会の発展に伴う人間の基本的自由と目されている。従って、その制約には、より厳重な基準が要求されることになる。外国移住とは、永続的に外国に住所を移すことであるが、一時的な海外旅行もこれに含まれる。海外渡航には、旅券を所持していれば、入国審査官から出国の証印を受けなくても出国できる。

(19)国籍離脱は、自己の志望によって日本の国籍を離れることである。かつてはどの国もこの自由を厳しく制限していたが、国際社会の発展と共に、漸次その自由が認められ、日本国憲法も徹底した形でこれを保障している。ただし、国籍法は国籍離脱の結果無国籍となることは認めていない。

(20)日本国憲法第25条第1項は、全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営むことのできるように、国家の責務として、その実現のために国家が努力すべき施策を講ずる義務を定めたものである。第2項では、国家が積極的に施策を講じる義務の内容として、全ての生活部門において、社会福祉、児童福祉、老人福祉の向上増進に努めなければならないことを定めている。

(1) (2) (3) (4) (5)
(6) (7) (8) (9) (10)
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(16) (17) (18) (19) (20)

[Ⅱ]次の説明文を読んで、空欄①と②に入る最も適切な用語を解答欄に書き込みなさい。なお、「最も適切な用語」とは、授業用資料の中で使用するものとする。(2問×5点)

(1)日本国憲法第36条は、アメリカ合衆国憲法修正第8条の「残虐で異常な刑罰を科してはならない」に由来する。拷問及び残虐な刑罰は、人身に対する最も直接的な権力的弾圧であるから、これを「絶対的に」禁止しようとするものである。この【 ① 】とは、被疑者や被告人から自白を得るため、肉体的生理的苦痛を与えることを指す。

(2)日本国憲法第40条は、刑事訴訟法による手続において無罪の判決を受けた者は、抑留または拘禁されたことにより、損害を受けたのであるから、それに対して国に【 ② 】を求めることができることを保障している。

解答欄

①                     

②                   

[Ⅲ]選挙法の基本原則について「180字以上200字以内」で論述してください。なお、評価基準は以下の通りとします。資料を使って明確に論述できている場合10点、字数は指示通りだが内容が充実していない場合5点、字数も指示に従わず内容も充実していない場合0点とします。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
資料3ページから7ページまでを読了後、憲法の歴史・分類・原則などについて考察しましょう。インターネットなどで現代憲法と福祉国家の関係について検索してみましょう。なおモンテスキューはフランスの思想家である。
憲法をめぐる歴史的考察力 左記の通り
資料9ページから15ページまでを読了後、わが国における明治時代から今日までの憲法史について学習しましょう。日本国憲法前文を精読(音読を含む)してみましょう。
わが国の憲法史の考察力

左記の通り
資料17ページから25ページまでを読了後、国民主権と象徴天皇の両立について考察しましょう。併せて皇室財政についてもインターネットなどで検索してみましょう。なおボーダン(あるいはボダン)はフランスの思想家である。

国民主権の意義の理解力
左記の通り
資料27ページから33ページまでを読了後、人権宣言の歴史について考察しましょう。その上で注意すべき人権の主体についてインターネットなどで検索してみましょう。なおロックはイギリスの思想家である。

基本的人権の根底に対する洞察力
左記の通り
資料34ページから38ページまでを読了後、基本的人権の限界としての「公共の福祉」について考えてみましょう。なお基本的人権と特別権力関係の詳細を説明できるようにしましょう。 公共の福祉の理解力

左記の通り
資料39ページから46ページまでを読了後、特に包括的基本権について検討してみましょう。その上で「プライバシー」の権利についてインターネットなどで詳細に検索してみましょう。

プライバシーと合理的差別に関する説明力
左記の通り
資料47ページから60ページまでを読了後、精神的自由権としての思想・良心の自由、信教の自由、表現の自由、学問の自由について検討してみましょう。併せて教科書検定とポポロ事件についてインターネットなどで検索してみましょう。
精神的自由権に関する理解力 左記の通り
資料61ページから65ページまでを読了後、職業選択の自由、移住・移転の自由、財産権の保障について検討してみましょう。併せて移住・移転の自由の大切さについて各自考察してみましょう。
経済的自由権に関する理解力 左記の通り
資料66ページから72ページまでを読了後、生存権(いわゆる「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」)、教育を受ける権利、労働基本権について検討してみましょう。その上で朝日訴訟についてインターネットなどで検索してみましょう。

社会権に関する理解力 左記の通り
資料73ページから78ページまでを読了後、人身の自由と刑事手続の保障について検討してみましょう。その上で現行犯逮捕についてインターネットなどで検索してみましょう。

刑事手続に関する理解力
左記の通り
資料79ページから85ページまでを読了後、現行憲法が保障する国務請求権と参政権(普通選挙制度を含む)について理解を深めましょう。その上で国民の三大義務についてもインターネットなどを使用し検索してみましょう。

選挙制度に関する説明力
左記の通り
資料87ページから90ページまでを読了後、わが国の現行憲法が明文化する平和主義について考察してみましょう。その上で日本国憲法第9条をめぐる各種判例についてもインターネットなどで検索し閲覧してみましょう。
平和主義に関する理解力
左記の通り
資料91ページから96ページまでを読了後、わが国の統治機構について考察してみましょう。その上で司法権の独立(その歴史を含む)と違憲法令審査権についてインターネットなどで検索してみましょう。

わが国の国会(立法権)に関する説明力
左記の通り
資料97ページから103ページまでを読了後、裁判員制度と国民投票制度について考察してみましょう。その上であなたが主権者としてできることを自省してみましょう。
あなたが裁判員制度と国民投票制度で果たすべき役割の説明力 左記の通り
授業回数別教育内容第1回から同第14回までの中から、あなたが一番関心を持った授業回数を一つ選んでください。当該回数の教育内容について調べ学習を行い、あなたの考えをまとめてみましょう。
憲法に関する総合的知識力
左記の通り
科目終了試験