最終更新日:2025年1月27日

1年次入学生:2年 3年次編入学生:3年 短期大学部:-
文学部 文学科

U098

日本近現代文学講読Ⅱ

同時代文学としての戦後小説(通信)/サブカルチャーと交差する近現代詩の諸相(スクーリング)

単位条件

通信 1単位 面接 1単位

教員

野本 聡

履修条件

小説を読むことが好きな者。文学テクストを研究対象とし批評的に読解したい者。サブカルチャーに関心を持つ者。

到達目標

文学テクストを研究するとは、高校の現代文あるいは文学国語で学習したような「登場人物の心情」を追い、〈作者〉の意図にたどり着くことを目的としない。〈作者〉の手になる「作品」ではなく、先行する多くの作品、社会状況、読者の反応までも織り込まれたテクストという概念をこの講座では用いる。特に近代の文学のテクストには、海外の文学や哲学思想、あるいは美術や音楽といった多様なメディアが織り込まれている。さらに文学が近代の複雑な社会を生きる人々を描くものであるとするならば、それを読む際には歴史や政治、経済といったコンテクストへの目配りも欠かせない。日本近現代文学講読Ⅱでは『現代の日本文学ー二葉亭から大江までー』(明治書院)をテキストとしてそこに掲載されたテクストを受講者自らがその織物を解きほぐし、そのテクスト性を批評的に読み、それを論じることを到達目標とする。
スクーリング授業においては近現代詩を精読する。米津玄師「カンパネルラ」は言うまでもなく宮澤賢治『銀河鉄道の夜』の登場人物の名前を踏まえている。その歌詞にある「波打ち際にボタンが一つ」は中原中也「月夜の浜辺」から引用されている。講読においては与謝野晶子の短歌とAKB48(少し古いか。乃木坂46の歌詞にも言及する)が唄う歌詞に共通するイメージを探るなど詩篇とサブカルチャーとの関連を検討する。
 単なる詩史的知識を得るだけでなく、詩篇を創造的に読解する力をともに身につけたい。

学習成果

「作品」を読み、感動し、そこから人生訓を見出す。勿論、そのような読書経験も貴重である。しかし大学の文学部で人文科学として文学テクストを読むとは単なる感想文に留まらない批評的読解であるべきことを忘れてはならない。「到達目標」の項にも書いたが、海外の文学や哲学思想、美術や音楽との間テクスト性(インターテクスチャリティ)を明らかにする精読力を意識して身につけたい。そして歴史や政治、経済といった社会状況(コンテクスト)のなかでテクストをどう読まれてきたか、あるいは現在、それをどう読むべきか。批評的読解力とそれを言語化する能力がこの講座の成果となろう。とくに日本近現代文学講読Ⅱでは第二次世界大戦後の文学の特異性を現在にどう読むべきかを意識したい。

テキスト教材

通信部分は
佐藤泰正ら『現代の日本文学-二葉亭から大江まで-』(明治書院)
面接部分はプリントを配布します。

参考図書

加藤周一『日本文学史序説(下)』、『日本文学史序説(補講)』(ちくま学芸文庫)
※臼井吉見『大正文学史』、平野謙『昭和文学史』(いずれも筑摩叢書。目下絶版だが、多くの図書館に所蔵あり)
『近代文学大事典』

詩篇テクストはプリントを配布する。

 

評価の要点

論点設定、コンテクスト調査の緻密さ、読解の独自性、論理展開の妥当性などで判定する。
自ら対象テクストを精読し、深く思考すること。現在のところ生成AIは文学に関しては全くの無知である。サイトの引き写しは評価の対象にならない。先行研究を直接あるいは間接引用する際は、必ず引用であることを注記番号を付し明らかにし、引用元の書誌情報を明示すること。書誌情報の表記は以下の例を参照する。(例: 野本聡「テロルと、ダダと、オナニーと――記憶のなかのアヴァンギャルド――」(『昭和文学研究』』第70集、昭和文学会、2015年3月)。

評価方法と採点基準

レポート・スクーリング両方が合格後、総合的に評価する。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

「評価の要点」にもあるが、第一に対象となる文学テクストを自身で精読すること。そして、そこに表象された事柄について調べること。その作家の伝記事項のみを解釈の根拠とするだけでなく、その思潮的傾向を調査すること。レポート課題は二つのテクストを比較検討することが求められる。二つのテクストを比較し、その相同性と差異を明らかにする。そして一方のテクストになぜそれが不在しているのか。それを考えることが批評的読解の第一歩である。
作品を解説するインターネットのサイトには間違いが散見する。生成AIは現在のところ文学に関しては全くの無知である。フェイクチャックは必要である。必ず図書館に赴き、書籍資料に当たること。それらの文献、先行研究論文を調べ、自分の中で咀嚼すること。そして、そこに自分の見解を付加すること。コスパ、タイパ重視で課題に取り組んでも自己の成長を促すことはできない。

レポート課題

提出数 1

第1課題

横書き縦書きパソコン印字可
[1600]

第1設題

教科書所収のテクストのうち、昭和20年代以降に書かれた戦後文学のテクストを一篇選び、他のテクスト(教科書に収録されているテクストでも収録されていないテクストでも構わない)と比較し、自身で論点を設定して論じなさい。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
通信:椎名麟三
通信:太宰治
通信:武田泰淳
通信:大岡昇平
通信:三島由紀夫
通信:遠藤周作
通信:大江健三郎
スクーリング:詩とはなにか?――AKB48と与謝野晶子
スクーリング:米津玄師と中原中也「月夜の浜辺」「一つのメルヘン」
スクーリング:「●」――なに、これ?
スクーリング:尾形亀之助『色ガラスの街』――自閉する私
スクーリング:『シン・ゴジラ』は宮澤賢治『春と修羅』から始まっている
スクーリング:くちづけの詩学――高田敏子「別の名」、吉原幸子「初恋」
スクーリング:立原道造「のちのおもひに」を読む――抒情詩と物語の再生
スクーリング:まとめ
試験

スクーリング受講についての準備物・連絡事項

スクーリングにて精読する詩篇テクストは開講前に配布する。