最終更新日:2025年1月27日
U083
日本近現代文学講読Ⅰ
研究として読む日本近代文学単位条件
通信 2単位教員
履修条件
小説を読むことが好きな者。研究として日本近代文学のテクストに対峙したいと願う者。
到達目標
文学テクストを研究するとは、高校の現代文あるいは文学国語で学習したような「登場人物の心情」を追い、〈作者〉の意図にたどり着くことを目的としない。〈作者〉の手になる「作品」ではなく、先行する多くの作品、社会状況、読者の反応までも織り込まれたテクストという概念をこの講座では用いる。特に近代の文学のテクストには、海外の文学や哲学思想、あるいは美術や音楽といった多様なメディアが織り込まれている。さらに文学が近代の複雑な社会を生きる人々を描くものであるとするならば、それを読む際には歴史や政治、経済といったコンテクストへの目配りも欠かせない。日本近現代文学講読Ⅰでは『現代の日本文学ー二葉亭から大江までー』(明治書院)をテキストとしてそこに掲載されたテクストを受講者自らがその織物を解きほぐし、そのテクスト性を批評的に読み、それを論じることを到達目標とする。
学習成果
「作品」を読み、感動し、そこから人生訓を見出す。勿論、そのような読書経験も貴重である。しかし大学の文学部で人文科学として文学テクストを読むとは単なる感想文に留まらない批評的読解であるべきことを忘れてはならない。「到達目標」の項にも書いたが、海外の文学や哲学思想、美術や音楽との間テクスト性(インターテクスチャリティ)を明らかにする精読力を意識して身につけたい。そして歴史や政治、経済といった社会状況(コンテクスト)のなかでテクストをどう読まれてきたか、あるいは現在、それをどう読むべきか。批評的読解力とそれを言語化する能力がこの講座の成果となろう。
テキスト教材
佐藤泰正ら『現代の日本文学-二葉亭から大江まで-』(明治書院)
参考図書
『新集 近代の小説』(株式会社おうふう)
加藤周一『日本文学史序説(下)』、『日本文学史序説(補講)』(ちくま学芸文庫)
※臼井吉見『大正文学史』、平野謙『昭和文学史』(いずれも筑摩叢書。目下絶版だが、多くの図書館に所蔵あり。)
『近代文学大事典』など
評価の要点
論点設定、コンテクスト調査の緻密さ、読解の独自性、論理展開の妥当性などで判定する。
自ら対象テクストを精読し、深く思考すること。現在のところ生成AIは文学に関しては全くの無知である。サイトの引き写しは評価の対象にならない。先行研究を直接あるいは間接引用する際は、必ず引用であることを注記番号を付し明らかにし、引用元の書誌情報を明示すること。書誌情報の表記は以下の例を参照する。(例: 野本聡「テロルと、ダダと、オナニーと――記憶のなかのアヴァンギャルド――」(『昭和文学研究』』第70集、昭和文学会、2015年3月)。
評価方法と採点基準
レポート課題に合格した後、科目終了試験を受験し、その評価が60点以上であれば単位の認定となる。
履修上の注意事項や学習上のアドバイス
「評価の要点」にもあるが、第一に対象となる文学テクストを自身で精読すること。そして、そこに表象された事柄について調べること。その作家の伝記事項のみを解釈の根拠とするだけでなく、その思潮的傾向を調査すること。レポート課題は二つのテクストを比較検討することが求められる。二つのテクストを比較し、その相同性と差異を明らかにする。そして一方のテクストになぜそれが不在しているのか。それを考えることが批評的読解の第一歩である。
作品を解説するインターネットのサイトには間違いが散見する。生成AIは現在のところ文学に関しては全くの無知である。フェイクチャックは必要である。必ず図書館に赴き、書籍資料に当たること。それらの文献、先行研究論文を調べ、自分の中で咀嚼すること。そして、そこに自分の見解を付加すること。コスパ、タイパ重視で課題に取り組んでも自己の成長を促すことはできない。
レポート課題
提出数 2第1課題
第1設題
教科書所収のテクストのうち、明治から大正時代に書かれたテクストを一つ選び、他のテクスト(教科書に収録されているテクストでも収録されていないテクストでも構わない)と比較し、自身で論点を設定して論じなさい。
第2課題
第1設題
教科書所収のテクストのうち、昭和初年から昭和20年代までに書かれたテクストを一篇選び、他のテクスト(教科書に収録されているテクストでも収録されていないテクストでも構わない)と比較し、自身で論点を設定して論じなさい。
備考・補足
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授業回数別教育内容 | 身につく資質・能力 | 学習範囲 (予習・復習を含む) |
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二葉亭四迷(近代文学の誕生) | |||
森鷗外(明治文学の展開①) |
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幸田露伴、北村透谷(明治文学の展開②) | |||
樋口一葉(明治文学の展開③) | |||
國木田獨歩(明治文学の展開④) | |||
島崎藤村、正宗白鳥(自然主義文学) | |||
夏目漱石(反自然主義文学?) | |||
泉鏡花(幻想文学) | |||
永井荷風、谷崎潤一郎(耽美派) | |||
志賀直哉、有島武郎(白樺派) | |||
芥川龍之介(大正文学の終焉と昭和文学の始まり) | |||
横光利一、川端康成(新感覚派) | |||
梶井基次郎(昭和文学の多様性①) | |||
中島敦、堀辰雄(昭和文学の多様性②) | |||
小林秀雄(文芸批評というジャンル) | |||
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