最終更新日:2025年2月18日

1年次入学生:2年 3年次編入学生:4年 短期大学部:-
心理・福祉学部 心理学科

P089

心理学的支援法Ⅱ

学生相談概論

単位条件

通信 2単位

教員

設樂 友崇

履修条件

「発達心理学II(青年〜老年)」および「心理学的支援法I」の既習が望ましい。

到達目標

学生相談は、高等教育機関において学生ひとりひとりが十全な学生生活を送ることができるように、心理学の専門性をもとに学生本人やコミュニティ全体に対して教育の一環として提供される様々な活動である。本コースでは現代における学生相談の基本的な考え方や実践の概要を学ぶ(心理学科教育目標1:広い視野の育成)。また、自分自身の学生生活を学生相談の考え方・視点で見直すことで、受講生が当事者として課題を発見し、問いを立てることを目指す(心理学科教育目標6:日常生活の中からの課題発見)。

学習成果

・現代における学生相談の基本的な考え方について説明できる。
・学生相談実践の概要について説明できる。
・受講生自身の学生生活を振り返り、そこから見いだされた課題と可能性について考察することができる。

テキスト教材

日本学生相談学会編『学生相談ハンドブック 新訂版』(学苑社)2020

参考図書

【概論】
・日本学生支援機構『大学における学生相談体制の充実方策について─「総合的な学生支援」と「専門的な学生相談」の「連携・協働」─』2007年(通称:苫米地レポート)(平成19年3月30日発表)
https://www.jasso.go.jp/gakusei/archive/jyujitsuhosaku.html
・文部科学省『大学における学生生活の充実方策について(報告)─学生の立場に立った大学づくりを目指して─』2000年(通称:廣中レポート)(平成12年6月)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/012/toushin/000601.htm
【事例に触れる】
・高石恭子・岩田淳子編著『学生相談と発達障害』(学苑社)2012
・鶴田和美他『事例から学ぶ学生相談』(北王子書房)2010
【心理教育】
・齋藤憲司・石垣琢磨・高野明『大学生のためのストレスマネジメント—自助の力と援助の力』(有斐閣)2020

評価の要点

・学生相談の基本的な考え方および各学生期の心理的特徴と課題を理解できているか。
・それらの理解をもとに受講生自身の学生生活を振り返り、理論との共通性や自身の体験の個別性・独自性を述べることができるか。

評価方法と採点基準

レポート合格後の科目終了試験で評価する。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

テキストを熟読することと、自分自身の学生生活を関心をもって振り返ることが大切です。

レポート課題

提出数 2

第1課題

⚠第1設題は指定解答用紙をダウンロードし、解答を記入してしてください。
第2設題は手書きまたはパソコンで作成してください。

パソコン印字可解答用紙あり
[1200]

第1設題

【指定解答用紙】 学生相談の説明として、次の文章の(  )に適切な言葉を入れなさい。

学生相談(英訳①  )とは、大学、短期大学、高等専門学校などの(②  )において(③  )として提供される、全ての学生の人間形成を促す様々な活動を指す。
本邦の学生相談の理念は戦後に導入され学生助育と訳された(④  )に端を発する。その後、②を取り巻く時代ごとの状況を受けて理論的実践的な強調点は変遷したが、今世紀に入りいわゆる廣中レポートや苫米地レポートにおいて改めて学生相談は③であることが明示され、学生一人ひとりの全人的な成長を支援するという当初の④の理念へと回帰した。
学生相談の中心的活動は学生相談室などキャンパス内の専門機関である(⑤  )において提供される(⑥  )などの個別相談である。これは“狭義”の学生相談と呼ばれることがあり、学生支援の三層モデルでは(⑦  )に該当する。⑤の具体的な名称は学生相談室、カウンセリングセンター、保健管理センターなど学校ごとに異なっており、聖徳大学では(⑧  )が該当する。

④の理念を背景に本邦最初の⑤が設置されたのは1950年代である。現在、学生支援の三層(第1層日常的な学生支援、第2層制度化された学生支援、第3層専門的学生支援)それぞれのありようは各校によって(しばしばキャンパスによっても)様々である。しかし、多くの⑤では学生へ個別の直接的支援を行うだけでなく、特定の学生グループ、全学生教職員、保護者に対しても予防活動や広報啓発活動など正課内外の教育的働きかけが行われている。特に学内各部署の教職員との(⑨  )は⑤の活動の大きな比重を占める。⑤は自校の個性や特徴を活かし、コミュニティ全体と交流しながら活動を展開していく。その中には専門家としてのよりよい実践のために(⑩  )を積むことや、事例、調査、質的など様々な手法の(⑪ )を通じて自らの実践を検証評価したり学内外と共有したりする活動も含まれる。

ところで、学生にとって②は(⑫  )の場、様々な(⑬  )を営み生活する場、そして将来の(⑭  )につながる場である。多様な学生が在籍する今日、学生一人ひとりのライフサイクル上の位置は異なっている。しかし、学生は何らかの変化を得るべく学生生活に入るし、⑪に伴う新しい知や⑫との出会いによって変化せざるを得ない。いずれの発達段階にある学生も学生生活における様々な課題や悩みに取り組むことを通じて自分を見つめ、時に再発見し、理解し、その人らしく成長していく。
その過程を支援するため、学生相談担当者は発達の各段階で遭遇しやすい生物心理社会的な危機や課題とその背景に注意を払うことは重要である。と同時に、当該学生が様々な個人史を経て現在②に在籍できていることを可能にしたある種の力を信じること、つまり学生の内的外的資源も注目する必要がある。これらを専門的に(⑮  )、経過に応じてその⑭を更新しつつ、学生がそれらの資源を自身の成長のため学生生活において主体的に活用できるよう支援することが非常に重要である。
また、学生相談では学生毎の個別性という側面だけでなく、②という環境に由来して多くの学生に共通な特徴性からも学生を理解しようとする。後者の理論のひとつが鶴田(2001)による(⑯  )で、これは大学生の学年ごとの心理的課題を明らかにし、学年が上がるにつれてそれらが変化することに注目して大学生を理解しようと視点である。⑯では学生生活は(⑰  )、(⑱  )、(⑲  )、(⑳  )の4期に分けられ、各期の終わりが次の期の始まりと緩やかに重なるサイクルを描いているされる。このように⑯の視点は個々の学生を⑮、経過を振り返り、予後を予測することに活用できるだけでなく、②に所属する学生たち全体を理解し、各期に必要な支援を考えることにも役立つ。

なお、本学のような通信課程には様々なライフサイクルの学生が所属しており、それぞれの年代の発達課題や学生生活以外での出来事と呼応して、より個別性の高い、多様な学生生活が展開される。それに伴って複雑で未知な課題も生起することが予想されるが、それらに対する理解を一つひとつ深めていくことは、相談の主体である学生だけでなく学生支援を担う教職員にとっても成長と発展の好機となろう。

第2設題

【1200字】 ヨコ書 パソコン印字可

自分が最も関心のあるテーマを扱っている回を一つ取り上げ、各種統計や事例(自分自身や周囲の学生の体験なども可とする)を示しながら当該テーマにおける現状と課題について説明し、当該テーマ領域において求められる学生相談・学生支援のあり方について論じなさい。

第2課題

⚠第1設題は指定解答用紙をダウンロードし、解答を記入してしてください。
第2設題は手書きまたはパソコンで作成してください。

パソコン印字可解答用紙あり
[1200]

第1設題

【指定解答用紙】 学生生活サイクルに関するAからJの文章は、それぞれどの期について説明したものであるか。最もふさわしい時期に分類して答えなさい。
入学期(①、②、③) 中間期(④、⑤) 卒業期(⑥、⑦、⑧) 大学院学生期(⑨、⑩)

A. 学生は、論文執筆や具体的な進路選択など現実生活上の課題を通して、これまでの学生生活を振り返り内面の整理を行うという「もう一つの卒業論文」に取り組むことがある。
B. 親しい友人や恋人など横の関係の中で自己を探っていく。また、所属団体でリーダーの役割を担うことになるなど、人の世話をするという課題にも直面する時期である。
C. 学生時代を終えて社会に着地することが課題となる。これまで先送りしてきた人生上の課題がこの時期に改めて模索されることもある。
D. 学問の受動的な消費者から能動的な生産者への転換要請、より濃密な縦横の人間関係への適応が求められる中で、学生生活への違和感、自分の能力への疑問、対人関係上の問題が起こる。
E. 学生が入学前の慣れ親しんだ生活から離れ、新しい学生生活へと移行する時期である。学生は入学に伴って生じる問題と、入学以前から抱えてきた問題とに直面する。
F. 進路を具体的に決定し、学生生活を終えて学生としての自分と別れる時期であり、将来への準備をする時期である。
G. 自由の中で自己決定することを通じて、学生の側から能動的に新しい生活・修学環境に慣れていくこと(オリエンテーション)が課題となる。生活上の居場所を見つけること、人間関係を築くこと、修学意欲を高めることにまつわる問題や悩みによって、高揚と落ち込みを体験しやすい。
H. 学生になっていく過程では入学前の生活を心理的に終わりにするという課題が含まれる。受験生や職業人としての自分、入学前の生活や人間関係に別れを告げることは、孤独や孤立、寂しさや抑うつを感じる契機にもなる。
I. 進路決定は取り組んでいる最中にも、決定した後でも、不安や迷いを感じることがある。決定の過程を通じて親の価値観と自分の価値観のズレに直面することも多い。将来への準備という点で、選んだ進路だけでなく選ばなかった進路も大切な意味を持つ。
J. 専攻の選択など学生生活内の進路、卒業後の進路、そして人生をどう生きるかなど大きな意味での進路と、幅広い時間軸での進路がテーマとなる。自分自身の関心を絞り目標を設定していく時期である一方、中だるみが生じやすく、スランプや無気力、無関心にも陥りやすい。

第2設題

【1200字】 ヨコ書 パソコン印字可
学生生活サイクルの視点で自分自身の学生生活を振り返り、印象に残っている学生期における出来事をひとつ以上取り上げて、その前後で自分自身がどのように変化したか、そのことが現在の自分にどのような影響を与えているかを論じなさい。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
学生相談の現在 今日の高等教育機関の状況を反映した学生相談の課題について理解できる。 pp.10-24
学生相談の理念と歴史 日本における学生相談の歴史と三層モデルに至る経緯について理解できる。 pp.25-44
学生を理解する視点 学生生活サイクル理論など現実面と内面の双方から学生を理解する視点を得る。 pp.45-59
学生相談における見立て 学生相談活動において個々の学生を見立てるための次元について理解できる。 pp.60-74
相談の方法と進め方 学生相談機関における相談の進め方と対応の工夫について概略を理解できる。 pp.75-103
特別なニーズがある学生の支援 特別なニーズがある学生を学校全体で支援する際の留意点を理解できる。 pp.104-129
連携と協働 学生相談機関と学内外の資源との連携と協働について理解できる。 pp.130-147
大学と学生の危機 高等教育機関における様々な危機と対応の留意点について理解できる。 pp.148-161
学生に向けた活動の仕事 学生相談機関が学生に向けて行う個別相談以外の活動について理解できる。 pp.162-178
教職員に向けた活動 卒業期における学業と進路の問題を理解できる pp.179-192
保護者に向けた活動 学生相談機関が保護者に向けて行う種々の活動について理解できる。 pp.193-203
広報と情報発信活動 学生相談機関が学内外に向けて行う種々の広報活動について理解できる。 pp.204-216
学生相談機関システムの整備 高等教育機関において学生相談システムならびに学生相談機関を整備する際の要点について理解できる。 pp.217-232
学生相談カウンセラーの研鑽・研究 学生相談カウンセラーにとって研修と研究が専門性向上に必要であることを理解できる。 pp.233-260
学生相談における倫理 学生相談カウンセラーの活動における倫理について理解できる。 pp.261-278
試験
ふたつのレポート課題をふまえ、学生相談の視点や各学生期の特徴について基本的な理解を確認します(穴埋め/選択問題)。また、本講義で取り上げた視点・考え方を用いて受講生自身の学生生活を考察し、そこから見いだした自分自身と/あるいは大学コミュニティの課題や可能性について論じていただきます(論述問題)。