最終更新日:2025年5月5日
V029
学校の制度
現代公教育制度の原理と法的構造を理解する単位条件
通信 2単位教員
履修条件
なし
到達目標
公教育を支える教育理念に関する4つの考え方(成長者助成、精神的育成、社会的形成、人格的覚醒)について理解する。
日本国憲法の教育に関する条項及び教育基本法の目的・目標、学校教育法の幼稚園の目的・目標、幼稚園教育要領のねらい及び内容の構造について理解する。日本の幼児教育の歴史、教育制度について学び、公教育制度を構成する教育法規を理解する。
学習成果
1.公教育を支える教育理念に関する4つの考え方(成長者助成、精神的育成、社会的形成、人格的覚醒)について説明することができる。
2. 日本国憲法の教育に関する条項及び教育基本法・学校教育法の目的・目標、幼稚園教育要領のねらい及び内容の構造について明確に述べることができる。また、公教育制度を構成している教育関係法規を理解し説明することができる。
3.わが国の幼児教育の歴史、教育制度を理解し、教育制度をめぐる諸課題について例示することができる。
テキスト教材
古橋和夫編『新訂 子どもの教育の原理』(萌文書林)2024年
日本国憲法(プリント)
参考図書
古橋和夫編『三訂 教職入門』(萌文書林)2024年
評価の要点
学修の成果に関するレポートを作成し、それに基づいて評価する。
1.成長者助成、精神的育成、社会的形成、人格的覚醒の教育理念に関する4つの考え方について明確に説明することができる。
2. 日本国憲法の教育に関する条項及び教育基本法・学校教育法の目的・目標、幼稚園教育要領のねらい及び内容の構造について明確に説明することができる。
評価方法と採点基準
レポートについては、テキストや参考文献をふまえて、内容を的確にまとめ論述すること。
レポートは、①主題の明確さ(内容がまとまっているか)、②内容の正確さ、③レポートの構成、④文章表現力(わかりやすく説得力のある文章かどうか)の観点から評価する。
科目終了試験についても、①から④の点から評価する。
履修上の注意事項や学習上のアドバイス
テキスト教材及び参考図書を活用し、教育思想家の原典にもあたって理解するように努めること。レポートは要点を的確にまとめ、論の展開、構成に注意を払うこと。レポートの作成にあたっては、参考にした文献名は必ずあげておくこと。
レポート課題
提出数 2第1課題
下記の2つの設題から1つ選択すること
第1設題
4つの教育観(成長者助成、精神的育成、社会的形成、人格的覚醒)についてまとめ論述しなさい。
第2設題
日本国憲法、教育基本法、学校教育法、幼稚園教育要領における教育の目的・目標・ねらい等の関連についてまとめなさい。
第2課題
指定用紙をダウンロードして印刷し、解答を記入して、レポート作成にあたっての注意事項〈必読〉の「③送付の方法」により送付してください。
第1設題
日本国憲法、教育基本法、学校教育法、幼稚園教育要領における教育の目的・目標・ねらい等について、つぎの文章の( )の中に適切な言葉をいれ文章を完成しなさい。
教育法規上の教育の目的と目標について、日本国憲法、教育基本法、学校教育法、幼稚園教育要領について体系的で有機的に結びつく目的と目標の構造を理解する。
日本国憲法第11条は、基本的人権の享受と本質について、次のように規定している。
「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない(1 )の権利として、現在および将来の国民に与へられる。」
この後、個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利、思想と良心の自由、信教と学問の自由、表現の自由、生存権等についての条文が続くが、教育を受ける権利、教育を受けさせる義務については、憲法第26条において、次のように規定している。
「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく(2 )を受ける権利を有する。」
「2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育はこれを(3 )とする。」
教育基本法(平成18年12 月改正)は、前文のなかで(4 )の尊厳という従来からの価値にくわえて、公共の精神、豊かな人間性と創造性、伝統の継承といった新しい価値をくわえている。そして、「教育の目的」(第1条)について、「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行なわれなければならない。」としている。
「人格の完成」と「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」という教育の目的を実現するために、第2条において、学問の自由を尊重しつつ、5つの教育の目標をかかげている。
一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、(5 )を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、(6 )の保全に寄与する態度を養うこと。
五 ( 7 )と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
また、教育基本法の改正をうけて、学校教育法も改正(平成19年6月)されている。幼稚園は、学校教育の筆頭に位置づけられている。「学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、(8 )学校、大学及び高等専門学校」(学校教育法第1条)である。
また、以前の学校教育法においては、小・中学校の教育目標は規定されていたが、「義務教育」という観点から教育の目標を規定する条文はなかった。しかし、学校教育法の改正で、教育基本法に明確にされた「義務教育の目的」を実現するために、達成すべき具体的な内容を10の目標として定めた。
一 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、(9 )意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
二 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
三 我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
四 (10 )と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
五 読書に親しませ、生活に必要な(11 )を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
六 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
七 生活にかかわる自然現象について、観察及び(12 )を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
八 健康、安全で幸福な生活のために必要な(13 )を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
九 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
十 (14 )についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。
学校教育法はまた、幼稚園、小学校、中学校、高等学校等の教育目的・教育目標をかかげているが、ここでは幼稚園の目的・目標について理解することにしよう。幼稚園教育の目的については、学校教育法22条に次のように規定されている。「義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な(15 )を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする。」
これは、教育基本法の「幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の(16 )を培う重要なものである」(第11条)に対応したものである。
幼稚園教育は、「義務教育及びその後の教育の基礎を培うもの」であることを明示している。さらに教育目標にかなった環境が設定されることが明確になるように、「適当な環境」の前に「幼児の健やかな成長のために」の文言が追加された。そして、学校教育法第23条は、幼児教育の進展状況をふまえて次の5つの教育目標をかかげている。
一 健康、安全で(17 )な生活のために必要な基本的な習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
二 集団生活を通じて、喜んでこれに参加する態度を養うとともに家族や身近な人への(18 )感を深め、自主、自律及び協同の精神並びに規範意識の芽生えを養うこと。
三 身近な社会生活、生命及び自然に対する興味を養い、それらに対する正しい理解と態度及び思考力の芽生えを養うこと。
四 日常の会話や、(19 )、童話等に親しむことを通じて、言葉の使い方を正しく導くとともに、相手の話を理解しようとする態度を養うこと。
五 音楽、身体による表現、(20 )等に親しむことを通じて、豊かな感性と表現力の芽生えを養うこと。
これら一から五の目標は、幼稚園教育要領における幼稚園教育の5つの目標に対応している。幼稚園教育要領は、幼稚園教育の基本について次のように述べている。「幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、幼稚園教育は、学校教育法に規定する目的及び目標を達成するため、(21 )を踏まえ、環境を通して行うものであることを基本とする。」
幼稚園教育要領第2章(ねらい及び内容)において、「ねらいは、幼稚園教育において育みたい(22 ・ )を幼児の生活する姿から捉えたもの」と規定している。また、「内容」は「ねらい」を達成するために指導する事項であり、子どもの側からいえば体験し身につけることが望ましいことである。
「ねらい」と「内容」は、さらに幼児の(23 )の側面から、「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の領域にまとめられている。これらの5つの領域に示された15の「ねらい」は、到達目標ではなく「幼稚園教育における生活の(24 )を通じ、幼児が様々な体験を積み重ねる中で相互に関連をもちながら次第に達成に向かうもの」であるとしている。
また、「内容」については、「幼児が環境に関わって展開する具体的な活動を通して(25 )的に指導されるものである」ことに注意をうながしている。
備考・補足
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授業回数別教育内容 | 身につく資質・能力 | 学習範囲 (予習・復習を含む) |
|
教育とは何かー4つの教育の理念と子ども観について 成長者助成、精神的育成、社会的形成、人格的覚醒の教育理念に関する4つの考え方について考える。人間存在論の観点から、4つの教育観の不可分な関係について理解する。 |
教育・保育の本質に関する理解力 | テキスト | |
子どもの可能性と教育者の援助と指導について 「おと」の詩を題材として、子どもの可能性と保育者の役割について考える。テキストの「保育 者のあり方」を考え理解する。 |
保育者の役割に関する理解力 | テキスト | |
教育の歴史的考察─コメニウスの教育観と合自然の教育について 『大教授学』の内容について理解する。合自然の原理から子どもの自発性、実物教育、直観教授 の教育原則が導きだされたことを学ぶ。 |
合自然の教育に関する理解力 | テキスト | |
ロックの子ども観と教育について 『教育に関する考察』の内容について理解する。精神白紙説、形式陶冶説の教育的な意味につい て理解する。 |
伝達・形成の教育理念に関する理解力 | テキスト | |
ルソーの『エミール』と消極教育について 『エミール』の教育的意義について、子ども観、教育方法の点から理解する。またその後の影響 について考える。 |
成長助成の教育理念に関する理解力 | テキスト | |
ペスタロッチの教育の実践と教育観について 「生活が陶冶する」教育理念、教授法の分野における生産労働と教育の結合、実物教育、直観教 授等について理解する。 |
教育理念に関する理解力 | テキスト | |
フレーベルと幼稚園教育について 『人間の教育』に見られる主要な特徴について理解する。あらゆる善の源泉は遊びの中にあると したフレーベル教育思想の意義について学ぶ。 |
教育理念に関する理解力 | テキスト | |
オーエンと性格形成学院について 『新社会観』に見られる主要な特徴について理解する。人間は環境の産物であるとしたオーエン の教育思想について学ぶ。 |
形成の教育理念に関する理解力 | テキスト | |
オーエンと性格形成学院について 『新社会観』に見られる主要な特徴について理解する。人間は環境の産物であるとしたオーエン の教育思想について学ぶ。 |
経験に関する理解力 | テキスト | |
日本国憲法における教育を受ける権利、教育基本法・学校教育法における教育の目的・目標つい て学ぶ。公教育の制度を構成している教育関係法規を理解している。 |
教育の目的、目標についての理解力 | 配付する日本国憲法(プリント) | |
わが国の幼児教育─教育制度の歴史と内容の変遷について わが国の幼稚園、保育所のはじまりとその展開ついて学び、教育制度をめぐる諸課題について理解する。 |
歴史を見る目、保育理論に関する理解力 | テキスト | |
わが国の幼児教育制度について教育行政の理念と仕組みを理解し、制度を知る意味について考え、日本の幼児教育制度について学ぶ。 | 教育・保育制度への理解力 | テキスト | |
教育課程と指導計画─幼稚園教育要領と保育所保育指針について 子どもの心身の健やかな成長・発達をかなえるため、保育の計画の必要性と保育の計画の立て方 について理解する。 |
教育課程に関する理解力 | テキスト | |
子どもの活動と保育の評価について 子どもの成長・発達につなげるため、保育をどのように振り返り、指導を改善していくことが必 要かについて理解する。 |
子どもを見る目、評価に関する理解力 | テキスト | |
保育者の役割と専門性について 幼児期の発達の特徴を理解し、協同作業者、環境の構成者、モデル、遊びの援助者としての保育 者の役割について理解する。 |
保育者の役割に関する理解力 | テキスト | |
試験は、学習内容に対応した課題について論述するものである。評価はそれに基づいて行う。 |