最終更新日:2025年4月16日

1年次入学生:3年 3年次編入学生:4年 短期大学部:-
心理・福祉学部 心理学科

P027

老年心理学

高齢者を心理学的に理解する。

単位条件

通信 2単位 面接 2単位

教員

北村 世都

履修条件

レポート2課題提出後スクーリングを受講すること。

到達目標

①加齢にともなう心身の変化を理解する。
②日本における、加齢に対する社会の見方の特徴を知る。
③自分が持つエイジズムに気づいて補正し、高齢者とのコミュニケーションにおいて相手を尊重した態度と行動をとることができる。

学習成果

①高齢者の加齢の理論をもとに、高齢者の生活上の変化を説明できる。
②高齢者をとりまく社会的状況と課題を説明でき、心理学的な対応策を提案できる。
③認知症の医学的・心理学的理解に基づいて、軽度認知症の人と安定した
 コミュニケーションをとることができる。
 この科目は、心理学科のディプロマポリシーのうち、以下の項目に対応する。
1.心理学の基礎領域を幅広く学び、人の心のしくみを科学的に捉えることができる。

テキスト教材

佐藤眞一・権藤恭之編『よくわかる高齢者心理学』(ミネルヴァ書房)

参考図書

権藤恭之(編)『朝倉心理学講座 第15巻高齢者心理学』(朝倉書店)

評価の要点

テキスト内容の理解についての的確さ、レポート課題、スクーリングにおける学習成果から判断する。

評価方法と採点基準

レポート・スクーリング両方が合格後、総合的に評価する。
レポートは正答個数から評価を行う。スクーリングは出席およびグループワークの成果の内容から評価を行う。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

テキストをしっかりと読んでください。また心理学用語は詳しく調べるなら、心理学辞典を活用するのがベストですが、手元にない場合も多
いでしょう。その際は「心理学」の概論書をあたってください。特に基礎的な心理特性の内容では、人一般に共通する心理特性(例:記憶のは
たらき)について理解した前提での高齢者の話となります。心理学の基礎知識について復習しながら、学習をすすめてください。
スクーリングではパソコンを使用します。また、別途資料を配付します。

レポート課題

提出数 2

第1課題

通信2単位/面接2単位。通信2単位分のレポートを提出した後、スクーリングを受講してください。

解答用紙あり

第1設題

 設問 下記の文章を読み、(  )に適切な言葉を入れなさい〔テキストを参照すること〕。*同じ数字の(  )には同じ言葉が入ります。

A. 日本では、高齢期(老年期)のはじまりは( 1 )歳からとされている。

B. 高齢期(老年期)に起きる変化のことを老化あるいは加齢という。英語では( 2 )である。

C. 日本では、( 3 )年に65歳以上の人口が7%を超えた状態をさす高齢化社会に達した。

D. 人間の限界寿命は約( 4 )歳とされている。

E. 容姿(外見)に現れる老化現象としては、( 5 )、( 6 )などがあげられる。

F. 老化とは加齢に伴う身体機能の衰えをさす。こうした生物としての衰えが生じるメカニズムについてはさまざまな学説がある。その

一つである( 7 )は、生体の形、機能、構成物質が磨り減るように消耗していくという考え方である。( 8 )は、老化は遺伝

子の組み合わせにより、あらかじめプログラムされているという考え方である。

G. 各臓器の( 9 )に加え、外的要因の影響などにより、人は老化とともに身体的な疾病に加速度的にかかりやすくなる。老化は「命

あるものすべてに起こる現象である(普遍性)」であるという点が重要な特徴の一つであるが、疾病は( 10 )という点で、老化

と区別される。高齢者の疾病の特徴として、( 11 )、( 12 )、( 13 )などが指摘されている。

H. 高齢者の閉じこもりとは、安村の定義によれば、( 14 )とされ、老化の一側面と考えられている。閉じこもりの発生は、疾病な

どの身体的要因のみならず、心理的要因や( 15 )も関与しており、これらの3つが相互に関連していると考えられている。

I. エピソード記憶とは( 16 )のことである。この記憶には加齢の影響が( 17 )といわれている。一方、誰もが知っている知

識に関する記憶である( 18 )は加齢の影響は( 19 )といわれている。

J. 作動記憶とは( 20 )のことである。実験結果から、作動記憶は加齢とともに( 21 )することが示されている。

K. 過去の私的経験に関する記憶のことを自伝的記憶という。これはルービンらの実験結果から、高齢者は遠い過去の出来事よりも最近

の出来事に関する記憶のほうが記憶頻度の( 22 )ことが示されている。

L. 外界には同時に多くの刺激情報が存在している。しかし、私たちは、それらについて目や耳などの感覚器で受容し知覚系で処理を行っ

ているものの、情報の全てに気がついている(意識している)わけではない。このような、多くの対象からその行動の目標に必要な

情報だけに注意を向け、不必要な情報を無視する注意の機能を( 23 )という。いくつかの課題を用いた実験結果から、高齢者の

( 23 )は( 24 )していることが示されたが、刺激の呈示方法や条件によっては高齢者でも( 24 )しにくい場合もある。

M. 分配的注意とは( 25 )である。近年、条件によっては高齢者の課題成績が低下することが分かってきた。

第2課題

通信2単位/面接2単位。通信2単位分のレポートを提出した後、スクーリングを受講してください。

横書き

第1設題

 設問 下記の文章を読み、(  )に適切な言葉を入れなさい〔テキストを参照すること〕。*同じ数字の( )には同じ言葉が入ります。

A. 認知症(痴呆症)とは( 1 )というものである。その種類として( 2 )、( 3 )型認知症などがある。認知症の症状には

( 4 )、( 5 )などがある。また認知症を鑑別する心理検査として( 6 )などがよく使われている。

B. うつ病とは、( 7 )気分や( 8 )などがあらわれる。高齢者のうつ病は抑うつ感が全景に立たないため、認知症とうつ病との

鑑別診断が( 9 )ことが指摘されている。

C. いわゆる「頭の良さ」である知能の定義および構造にはさまざまなものがある。老年心理学ではキャッテルの提案に基づく2因子モ

デルから知能研究がなされることが多い。キャッテルによれば流動性知能とは( 10 )であり、加齢や脳の器質的障害の影響を

( 11 )。一方、結晶性知能とは( 12 )であり、加齢や脳の器質的障害の影響を( 13 )。

D. 系列法という研究法を用いて知能の加齢変化について研究を行ったシャイエによれば、流動性知能は60歳後半になってから( 14 )

する一方で、結晶性知能のピークは80歳ごろであるという。このようにウェックスラーなどの従来の研究に比べると、知能は成人以

降も緩やかに上昇し、かつ低下の開始も遅いと指摘されている。また、シャイエとウィリスは一度低下した知能であっても訓練(練習)

を受けることによって知能得点が回復したことを報告している。このように成人期の知能には( 15 )がある。

E. 系列法などによる縦断データが蓄積される以前から、知能と関連する諸要因として( 16 )、( 17 )、( 18 )、( 19 )

が指摘され、関連性について研究されてきている。

F. 生涯発達の理論として、ユングやエリクソンの理論がある。いずれもライフサイクル(人生周期)を通して人格が段階的に発達する

という考え方である。そのうち、他者との関わりを通して自我発達がなされるというエリクソンの理論によれば、高齢期は8段階の

うちの8段階目にあたる。その発達課題は( 20 )対( 21 )であり、課題を達成する上で必要な力として「英知(知恵)」が

あげられている。

G. サクセスフル・エイジングとは( 22 )のことをいう。このサクセスフル・エイジングに関連したパーソナリティのタイプについ

ていくつか研究されている。そのなかで、ライチャードによれば見出された5つのタイプのうち、適応の良いタイプは( 23 )、

( 24 )、自己防衛型、不適応状態であるタイプは外罰型、内罰型であるという。このうち自己防衛型とは( 25 )というタイ

プである。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
生物学的な心身の老化
加齢とは何だろう?人はなぜ老いるのだろう?という問いに答えるために、
さまざまな研究が行われ、明らかとなった生物学的な心身の変化の理論と
各論を学ぶ。
加齢と老い 教科書1章(事前に通読)
社会の中での高齢者
社会が高齢者をどのようにとらえ、どのように扱い、どのようなことを
求めてきたのか。私たちが高齢者に対する偏見や偏ったイメージを気づかないうちに持ってしまう背景にどのような要因があるのかを学ぶ。
少子高齢化
エイジズム
敬老思想
教科書2章(事前に通読)
加齢理論①社会学的加齢理論
高齢であることはかわいそうなことだろうか?
高齢になったら後進に道を譲るべきか、生涯現役でいるべきか?
社会適応という観点から、社会学的加齢理論を学ぶ。
生涯発達論
活動理論と離脱理論
プロダクティブエイ
ジング
教科書3章(事前に通読)
加齢理論②心理学的加齢理論
高齢期には避けられない「老い」に対する心理的な苦痛を、そのままにしておくと生活の質が下がってしまう。人はその苦痛を緩和させるために、適応するためのメカニズムを持つと考えられる。代表的な心理学的加齢理論を学ぶ。
SOC理論/老年的
超越理論/社会情動
的選択性理論
教科書4章(事前に通読)
認知情報処理の加齢理論
加齢によって若い時とは異なる認知情報処理の特徴を持つようになるが、
そうした変化はなぜ起こるのか?代表的な認知情報処理の加齢理論を学ぶ。
処理速度/抑制機能
親密度/個人差
補償理論
教科書5章 (事前に通読)
認知情報処理の加齢各論①
信号や標識の見落とし、一度にたくさんのことを言われると混乱する、など
注意機能の低下は日常生活に大きな影響をもたらす。高齢者の注意機能や記憶にどのような特徴があるのかを学び、生活場面での影響について考える。
注意機能の老化 教科書6章 (事前に通読)
認知情報処理の加齢各論②
信号や標識の見落とし、一度にたくさんのことを言われると混乱する、など
注意機能の低下は日常生活に大きな影響をもたらす。高齢者の注意機能や記憶にどのような特徴があるのかを学び、生活場面での影響について考える。
記憶と学習の老化 教科書7章 (事前に通読)
認知情報処理の加齢各論③
信号や標識の見落とし、一度にたくさんのことを言われると混乱する、など
注意機能の低下は日常生活に大きな影響をもたらす。高齢者の注意機能や記憶にどのような特徴があるのかを学び、生活場面での影響について考える。
高次の情報処理の老化 教科書8章(事前に通読)
認知情報処理の加齢各論④
信号や標識の見落とし、一度にたくさんのことを言われると混乱する、など
注意機能の低下は日常生活に大きな影響をもたらす。高齢者の注意機能や記憶にどのような特徴があるのかを学び、生活場面での影響について考える。
高齢期特有の認知 教科書9章(事前に通読)
パーソナリティの加齢はあるのか?
年をとると頑固になる、という言説は本当だろうか?偏見に結び付きやすい
パーソナリティの理解において、科学的にパーソナリティの年齢変化をとらえる研究、古典的なエリクソン理論を紹介して、高齢者のパーソナリティを理解する。
ビッグファイブ
エリクソン
教科書10章(事前に通読)
主観的幸福感と回想
ものごとをポジティブにとらえる傾向が高齢者になると強くなるという研究がある。
また、高齢者が昔話をすること自体に意味があるのではないか、と考えた研究者もいる。
高齢者の安心や心理的安定にかかわるこれらの先行研究の理解を通して、
高齢者の感情を考える。
ポジティビティ
バイアス
主観的幸福感
回想と回想法
教科書11・12章(事前に通読)
高齢者支援の功罪
高齢者に席を譲ることがかえって高齢者を傷つけることがある。高齢者支援が、高齢者の支援につながらない場合があることを知り、そのメカニズムから支援の
よりよいあり方を考える
コンボイモデル
受領サポート
提供サポート
緩衝効果
教科書14・15章(事前に通読)
死・老い・死別
孤独死を良くないものとみる必要は本当にあるのだろうか?
孤独死の現状、社会の受け止め方、死別と悲嘆などから、高齢期と死について学ぶ。
孤独死/死別
終末期/緩和ケア
教科書16章(事前に通読)
まとめ①
高齢期の心理機能全般 教科書1~12章および14~16章(事前に通読)
高齢者支援の社会的背景①
今日の高齢者が置かれた現状や、日本がめざす高齢社会の在り方について学び、高齢者の心理支援の目標を理解する。
地域包括ケアシステム
介護保険法
高齢者支援の社会的背景②
認知症基本法の背景を学び、認知症の人の心理支援の理念と方向性を理解する。
認知症基本法
高齢期の精神疾患①
認知症を医学的に理解する。
認知症
高齢期の精神疾患②
高齢期に生じやすい代表的な精神疾患を理解する。
うつ病・妄想症・せん妄
高齢期の心理的課題①
高齢期に生じやすい代表的な心理的課題を理解する。
閉じこもり
介護予防
フレイル
要介護期の心理的問題②
今後増加が予想される独居高齢者に対して、孤独や孤立がどのような状況にあるか、どのように捉えればよいのかを理解する。
孤独と孤立
孤独死
まとめ② 高齢期の心理や精神における問題
認知症ケアと心理①
認知症ケアの歴史は、認知症の人に対する差別の歴史でもあり、その反省から現在の認知症ケアの理念にいたる経緯を理解する。
認知症ケアの歴史
認知症ケアと心理②
現在の認知症ケアの理念を理解する。
認知症ケアの理念
認知症ケアと心理③
現在の認知症のケアの理念の背景には、臨床心理学者Rogersをはじめとした人間性心理学の功績がある。認知症ケアと人間性心理学の関係を学ぶ。
パーソン・センタード・アプローチとパーソン・センタード・ケア
認知症ケアと心理④
認知症のアセスメントで用いられる心理検査とその役割を学ぶ。
心理検査の役割
認知症ケアと心理⑤
認知症ケアの各種技法の特徴を学ぶ。
各種のケア技法
認知症ケアと心理⑥
回想法の方法はもとより、心理学的に回想がどのような意味があるのかを学ぶ。
回想法
認知症ケアと心理⑦
認知症の家族はどのような心理過程をたどるのか、それに基づいてどのように支援を考えたらよいのかを学ぶ。
家族支援
認知症ケアと心理⑧
認知症ケアも施設の中でのケアと地域の中での在宅ケアとでは大きく異なる。今日、重視されている在宅での認知症ケアに必要な心理支援について学ぶ。
地域の中での心理支援
まとめ③ 認知症の人とその家族への支援
試験
高齢期全般についての理解、高齢期の心理発達、高齢期の心理的問題と支援