最終更新日:2025年3月30日

1年次入学生:2年 3年次編入学生:3年 短期大学部:-
心理・福祉学部 心理学科

P006

社会心理学

社会心理学の視点から社会を理解する

単位条件

通信 2単位 面接 2単位

教員

田中 堅一郎

履修条件

レポート2課題提出後にスクーリングを受講すること。

到達目標

この講義では、以下のことを目標とします:
①社会心理学の基本的な知識を身につける。
②身の回りに起こっている社会的な事象を社会心理学の知識を用いて理解する。
③社会心理学の知識を用いて、現代社会の抱える問題や原因や解決策について考える。
④社会心理学の研究課題や研究方法について理解する。

学習成果

この講義では上記の「到達目標」にしたがって学習した場合、以下の学習成果が期待されます:
1)身につけた社会心理学の知識をもとに、あなたの身の回りで起こっている出来事を理解することができます。
2)社会心理学の知識を土台として、現代社会の抱える様々な問題を分析し、それらの原因や解決方法について、学術的知見を用いた提案ができるようになります。
3)社会心理学の研究を行うにあたって、基本的な研究方法や研究倫理について理解し、どのような研究手法を用いるべきかについて考えられるようになります。

テキスト教材

岡隆・坂本真士編『ポテンシャル社会心理学』(サイエンス社)2018

参考図書

脇本竜太郎ほか『基礎からまなぶ社会心理学(ライブラリ基礎からまなぶ心理学4)』(サイエンス社)2014
下山晴彦(編集代表)『誠信 心理学辞典 新版』(誠信書房)2014
古畑和孝・岡 隆(編)『社会心理学小辞典[増補版]』(有斐閣)2002
日本社会心理学会編『社会心理学事典』(丸善)2009
※その他、テキストの巻末に紹介されている参考図書

評価の要点

社会心理学の概念やモデルが理解できているかについて評価します。

評価方法と採点基準

レポートとスクーリング双方が合格した後、総合的に評価します。
まず、レポート課題では、社会心理学の諸テーマにおける基礎的知識ができているかどうかを中心に評価します。
スクーリングでは、在宅学習で身につけた基礎知識をもとに、応用的な事例を中心とした講義を理解し、課題に取り組みます。講義内容についてどのように考察できるかを中心に評価します。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

まず、テキストや参考書を読んで社会心理学の基礎知識を身につけてください。在宅学習ではレポート課題の内容だけをテキストで復習するだけではいけません。スクーリングではレポート課題以外の内容について課題が課せられます。講義では講師(私)が講義内容について皆さんに問いかけることがあります。その際には、黙ったり無視したりしないで、あなたの意見を述べましょう。

レポート課題

提出数 2

第1課題

⚠通信2単位/面接2単位。レポート2課題提出後、スクーリングを受講して下さい。

解答用紙あり

第1設題

【1】 セルフ・モニタリングを説明したア~オの文章として、適切なものに〇、適切でないものに×印をつけなさい。

1.セルフ・モニタリングの高い人は、自分がどのように振る舞えばよいかを気にする傾向が強い。

2.セルフ・モニタリングとは、人の内面的現実と外見的な装いの落差が生み出す個人差といってよい。

3.自分が将来課題に成功するかどうか自信がもてないときに、自分に不利になることを事前に行うことをセルフ・モニタリングという。

4.セルフ・モニタリングの低い人は、状況に応じた身の処し方が苦手であり、そうした関心が低い。

5.自分のことを印象づけたり、他人を楽しませるよう努力する人は、セルフ・モニタリングが高いと予想される。

 

【2】 説得的コミュニケーションにおける心理的リアクタンスとは何か。以下のA~Eの中から適切なものを一つ選びなさい。

A.被説得者の態度が、説得の方向とは逆の方向に変わること。

B.説得者の態度が、説得の方向とは逆の方向に変わること。

C.被説得者の態度が、説得を受けてから時間を経て変わること。

D.説得は、被説得者の主張を受容することが効果的であること。

E.説得は、何度も繰り返すことが効果的であること。

 

【3】 形容詞を用いたアッシュ(Asch, S.E.)による人物の印象形成の実験的研究について記述したものとして、最も適切なものはどれか。1~5の中から一つ選びなさい

1.全体的な人物像は、形容詞によって示される各特性の単純加算として形成される。

2.形容詞リストの中に相矛盾する語がある場合、どちらかの後が無視される。

3.印象形成にとって中心的役割を果たす形容詞と補助的な役割しか果たさない形容詞とがある。

4.形容詞の示す性格特性がばらばらな場合、全体的な人物特性は困難になる。

5.形容詞の提示順序を逆にしても、ほぼ同一の人物像が形成される。

 

【4】 以下の1~5に示されるエピソードのうち、フェスティンガーの認知的不協和理論から予測される行動として正しいものは〇、正しくないものには×印を示しなさい。

1.健康にとって有害であることを知りながら喫煙の習慣を続けている人が、「長寿日本一の○○さんがタバコを好んでいた」という情報を得意げに話して聞かせる。

2.ある新興宗教の熱心な信者が、自分の所属する宗教団体の教祖が女性関係のスキャンダルで告発されたときに、「教祖様の女性関係とわたしの信仰とは関係ない」と主張する。

3.スピードの出しすぎは事故を起こしやすいことを知りながら「スピード狂」であったドライバーが、友人の交通事故死をきっかけに安全運転に徹するようになる。

4.「あなたは血液型がA型だから、○○という性格なのです」と言われると、最初はそう思っていなくてもだんだんと○○の性格になっていく。

5.地方の小都市から東京都内へ転居して周りのペースに合わせているうちに、自分の歩く速さが早くなる。

 

【5】 「没個性化」について説明した文章として、適切でないものを以下のa~eの中から一つ選びなさい。

a.群衆の中で生じやすく、自己の社会的役割に対する意識が薄れてしまうことである。

b.これは、政治的な扇動の結果生じるものである。

c.この現象の一例として、匿名性があげられる。

d.自己意識の低下と密接に結びついている。

e.これによって、暴力などの無責任な社会的行動が起こりやすい。

 

【6】 精緻化見込みモデル(ELM)について説明した文章として、最も適切なものを以下のa~eの中から一つ選びなさい。

a.このモデルでは、態度変化が容易に生じないようにするには無抵抗に受け入れられている信念に対する反論を与えることが大切だとされる。

b.精緻化見込みモデルは、態度変容の重要な要因として信憑性をあげている。

c.説得における「恐怖喚起」の効果は、このモデルによって説明される。

d.このモデルでは、態度変化は情報に対して吟味する動機づけの程度と、情報を処理する能力の程度によって性質が異なるとされる。

e.「中心ルート」で形成された態度変化は、「周辺ルート」で形成された態度変化よりも一時的で変わりやすい。

 

【7】 F.オルポートによる社会的促進の例として、最も妥当なものはどれか。一つ選びなさい。

1.内気であったAは、活発なクラス委員の友人と毎日行動をともにするうちに、以前よりも活発になり友人も増えた。

2.B案に反対意見を持っていた甲も、仲間の大多数が賛成意見であることを知って賛成に回った。

3.X社とY社の同じ価格の製品の間で迷ったCは、よくコマーシャルを見るX社の製品を買った。

4.下宿で一人のときには小食なDも、仲間のみんなと一緒に食堂で食事をしたときには、たくさん食べた。

5.推薦によって仕方なく自治会委員を引き受けたEは、次第に積極的に自治会の仕事をこなすようになった。

第2課題

⚠通信2単位/面接2単位。レポート題提出後、スクーリングを受講して下さい。

解答用紙あり

第1設題

【8】  以下の文章を読んで、続く問題に答えなさい。

社会的ジレンマとは、( a )と( b )とを両立させることができなくなる状態である。ハーディンは( a )の追求が最終的に社会的環境を悪化させると論じ、このことを( c )と呼んだ。また、( b )を維持するためには個人個人がコストを負担しなければならないが、このコスト負担を意図的に回避しようとすることを( d )という。オルソンによれば、( d )が生じると次第に個々の負担が大きくなり集団や組織の維持ができなくなるという。社会的ジレンマが起こる原因は、個人がコスト負担をしないで得られる利益は( e )で協力してコスト負担して得られる利益よりも大きくなるが、( e )がコスト負担に協力しないと( e )に不利な結果がもたらされるという構造にある。ゲーム理論では、一対一の駆け引きで同じようなジレンマ現象が起こり、これを「囚人のジレンマ」という。

問1 ( a )~( e )にもっともふさわしい用語を解答欄に示しなさい。

問2 下線部の場合、共犯者A、Bが自白を求められているときの利得行列を以下のようであったとする。表中のXにあてはまるもの(ここでは懲役年数)として適切なものを、1~5の中から選びなさい。

 

B
黙秘 自白
A 黙秘

/3

10

/1

自白 Y1

/Y2

X1

/X2

1  X1=6   X2=6

2  X1=1   X2=10

3  X1=12 X2=12

4  X1=0   X2=0

5  X1=10 X2=10

 

【9】 注意の焦点を自分自身の姿に向けた状態のことを自己意識というが、これは私的自己意識と公的自己意識とに区分できる。次のイ~ヘの中から、公的自己意識の高い人について述べたものを3つ選びなさい。

イ.自己の内面的側面に注意を向けやすい。

ロ.自分の着ているものや化粧の仕方、スタイルに気を使う。

ハ.他人の行動にあまり左右されず、自分の意見に忠実に行動する。

ニ.他人の目を意識して自分の行動に気を配る。

ホ.他者の視点から自分の行動を眺める傾向が強い。

ヘ.自分の私的意見を表明しがちである。

 

【10】 態度の構成成分の組み合わせとして、正しいものはどれか。適切なものをa~eの中から一つ選びなさい。

a.感情-意思-認知

b.感情-認知-行動

c.感情-意思-行動

d.意思-認知-記憶

e.記憶-感情-行動

 

【11】 次の文章を読んで、(1)~(7)に当てはまる用語を、下の語彙群:イからヌの中から選んで解答しなさい。

メンタルヘルスの分野にストレスという概念を持ち込んだのは( 1 )である。彼はストレスを生体側に変化を生じさせる( 2 )と、その結果生ずる生体反応をストレン(ストレス反応)として区分した。そして( 1 )は、( 2 )が与えられてからの反応を3つの時期に分けた。すなわち、( 2 )によってショックを受けている状態を( 3 )、( 2 )に対して安定した反応を示す( 4 )、さらに生体が長期的な( 2 )によってそれ以上適応状態を維持できず、ついには破綻してしまう( 5 )である。( 5 )においては、心身症あるいは行動異常が見られることがある。心身症とみなされる病名としては、( 6 )( 7 )等がある。

語彙群

イ.疲弊期  ロ.ストレッサー  ハ.過呼吸症候群  ニ.セリエ  ホ.警告反応期

ヘ.消化性潰瘍  ト.抵抗期  チ.キャノン  リ.強迫神経症  ヌ.心気症

 

【12】 リーダーシップ研究に関する記述として、最も妥当なものは以下のうちどれか。A~Eの中から一つ選びなさい。

A.リピットとホワイトは、「専制的・民主的・放任的」の3類型のリーダーシップに関する研究を行い、リーダーシップ行動の類型よりもリーダーの人格特性に由来する社会的風土の形成が重要であるとした。

B.三隅二不二は、集団の生産性や部下の満足度にとって理想的なリーダーは、集団の目標達成に直接貢献する機能と集団をより良い状態に保つ機能とを有するリーダーである。

C.集団をより良い状態に保つ機能は、PM理論ではあまり重視されていない。

D.フィードラーは、集団および集団成員の統制が容易なときには関係動機型リーダーが、困難なときには仕事動機型リーダーが相対的によい集団効果をあげられるとした。

E.PM理論の予測は、日本でも欧米でも立証されている。

 

【13】 社会的アイデンティティー(社会的同一性)理論について説明した以下の文章の中で、不適切なものを選んで解答しなさい。

1.この理論は、ターナーとタジフェルが提唱した。

2.この理論によれば、ある集団に所属することによって自己概念が獲得され、その集団の成員として感情や価値観が生じる。

3.集団間の偏見や差別を説明するのに有効な理論である。

4.社会的アイデンティティーは内集団で育まれ、外集団の人々と心理的に区分される

5.この理論によれば、人は時や時間を超えて一個の人格として存在し自己としての統一感をもっているとされる。

 

【14】 集団分極化の現象の説明として最も適切なものを、以下の中から一つ選びなさい。

1.集団内の階層によって関係性が生じること。

2.集団討議によって、個人事態による意思決定が、より安全性の高い慎重な決定に変化すること。

3.集団極化の現象は、それまでの集団成員の意見が危険な方向に変化していくことをいう。

4.形成から長い時間が経つことによって集団成員の柔軟な発想や対応が減少していくこと。

5.集団討議することによって、集団成員の平均的な意見が極端に変化していくこと。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
社会心理学の領域と研究法 知識を身につける テキスト pp.2-15
社会的認知:印象形成、対人認知、帰属の特徴について理解する。 知識を身につける テキスト pp.34-56
態度:認知的均衡理論、認知的不協和理論について理解する。 知識を身につける テキスト pp.170-174
説得:説得的コミュニケーションの特徴について理解する。 知識を身につける テキスト pp.68-75
自己概念:自己概念の特徴について理解する。 知識を身につける テキスト pp.18-32
文化と自己:自己観と文化差 知識を身につける テキスト pp.221-225
反社会的行動 知識を身につける テキスト pp.126-147
援助行動:他人を助けるメカニズムについて理解する。 知識を身につける テキスト pp.104-124
これまでの振り返り(1):これまでの内容の定義を図る。 社会心理学の知識をもとに特定の事象について説明ができる テキスト pp.2-225 「コラム」欄
対人関係:対人魅力について理解する。 知識を身につける テキスト pp.78-101
リーダーシップ:リーダーシップの4つのアプローチ 知識を身につける テキスト pp.182-189
職務ストレスとメンタルヘルス 知識を身につける テキスト pp.189-197
集団意思決定:集団のメカニズムについて理解する。 知識を身につける テキスト pp.160-166
インターネットと集合行動 知識を身につける テキスト pp.215-219
これまでの振り返り(2):これまでの内容の定義を図る 社会心理学の知識をもとに特定の事象について説明ができる テキスト pp.78-197 「コラム」欄
社会心理学の歴史と研究方法 社会心理学の研究をする上で基本的な考え方を理解できる。 社会心理学全般につ いて
対人関係を紐解く(1):好きと嫌いはなぜ生じるか 知識をもとに身近な事象について考察できる。 自己・他者について
対人関係を紐解く(2):認知的不協和理論 知識をもとに身近な事象について考察できる。 自己・他者について
対人関係を紐解く(3):説得の心理学 知識をもとに身近な事象について考察できる。 自己・他者について
感情を理解する:「吊り橋効果」はなぜ起こる? 自己について理解を深めることができる。 自己・他者について
自分とはなにか:自己概念とアイデンティティ 自己について理解を深めることができる。 自己・他者について
自己の働き:自尊感情、自己評価維持、自己意識、自己開示 自己について理解を深めることができる。 自己・他者について
援助と排斥:他人を助けることと排除すること 知識をもとに身近な事象について考察できる。 集団・社会について
意思決定の落とし穴:集団思考 知識をもとに身近な事象について考察できる。 集団・社会について
同調と服従(1):同調のメカニズム 知識をもとに身近な事象について考察できる。 集団・社会について
同調と服従(2):人はどこまで権威に服従できるか 知識をもとに身近な事象について考察できる。 集団・社会について
対立か協調か:個人の利益と公共の福利のジレンマ 知識をもとに身近な事象について考察できる。 集団・社会について
社会的公正:公正概念と公正観を多面的に考える。 知識をもとに身近な事象について考察できる。 集団・社会について
「わたし」の社会心理学:リーダーとは発達するものである 社会心理学の研究を理解する。 集団・社会について
【討論】あなたにとって社会心理学は何だったのか 自らの考えを学術的視点から表現できる。 社会心理学全般について
試験
在宅学習では、第1回から第15回の内容に基づいてレポートを作成します。
スクーリングでは、第16回から第30回の内容に基づいて講義時間内にショート・レポートを作成します。なお、スクーリングでのショート・レポートのテーマは、スクーリングの途中で示されます。