最終更新日:2025年4月19日

1年次入学生:1年 3年次編入学生:- 短期大学部:-
全学共通

A001

言語と文化Ⅰ

単位条件

通信 2単位

教員

永盛 貴一

履修条件

なし

到達目標

言語学はいわゆる「文系」の学問だと思われがちだが、米国の言語学者であるノーム・チョムスキーの言語理論は人間の本質を解明する「自然科学」の考え方である。本科目では、言語学の世界に革命をもたらしたノーム・チョムスキーの言語理論の基本的な考え方を学び、ヒトという種に固有の生物学的資質である言語の本質を理解することを目標とする。

学習成果

人間の言語はどのような特徴をもっているのか、そして米国の言語学者であるノーム・チョムスキーの言語理論は何を解明しようとしているのかを理解し、究極的には人間とはどのような生き物なのかという問いに対する答えを探ることが目標である。本科目によって、(i)チョムスキーの言語理論の革新性、(ii)『統辞構造論』の概要、(iii)脳科学で実証する生成文法の企てを理解することができる。

テキスト教材

酒井邦嘉『チョムスキーと言語脳科学』(集英社インターナショナル)2019

参考図書

福井直樹『新・自然科学としての言語学: 生成文法とは何か』(ちくま学芸文庫)

評価の要点

自然科学としての言語学の考え方がどの程度理解できたか、ノーム・チョムスキーの言語理論の基本的な考え方がどの程度理解できたか、に基づいて評価する。

評価方法と採点基準

レポート合格後の科目終了試験で評価する。
60点以上獲得で合格となる。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

言語学に対する一般的なイメージを捨て、丁寧に教科書を読み、自然科学としての言語学の考え方を理解するようにしてください。

レポート課題

提出数 2

第1課題

解答用紙あり

第1設題

次の[1] から[5]の問いに答えなさい。答は解答欄に書きなさい。

[1]  I~IVの下線部分の統辞範疇(syntactic category)がもつ素性(feature)の組み合わせとして正しいものを1つ選びなさい。

Ⅰ.The police arrested the bank robber.

Ⅱ.The teacher ate the doughnut.

Ⅲ. The music sounds great!

Ⅳ.She lives in New York.

 

① I. [+N, +V]   IV. [-N,-V]  III. [+N,-V]  IV. [-N, +V]

② I. [+N,-V]  II. [-N, +V]   III. [-N,-V]  IV. [+N, +V]

③ I. [-N, +V]  II. [+N,-V]   III. [+N, +V]   IV. [-N,-V]

④ I. [+N,-V]  II. [-N, +V]   III. [+N, +V]   IV. [-N,-V]

 

[2] チョムスキーの言語理論の考え方として正しいものを1つ選びなさい。

①多様な言語を比較して共通点や相違点を見つけ、言語の通時的変化を解明する。

②言語現象を精密に分析し、「これはこうなっている」と客観的に記述する。

③ある一つの言語の徹底的な分析によって見出された原理は、すべての言語に適用できる。

④人間が言語を自在に生み出すことができるのは、個別言語が生得的に備わっているからである。

 

[3] 木構造と句構造文法について誤っているものを一つ選びなさい。

①木構造で枝分かれの生じる節点では下に必ず主辞が含まれる。

②木構造が二股の分岐に限られることによって、階層性と同義性が生じる。

③構造主義言語学の「構成素分析」の大部分を組み込んだものが「句構造文法」である。

④「句構造文法」は有限状態文法より本質的に強力である。

 

[4] 『統辞構造論』の内容について述べた(a)~(d)のうち正しいものが2つある。それはどれか答えなさい。

(a)統辞論は言語構造に関する純粋に形式的な研究である。

(b)人間の言語は有限状態文法で扱うことが可能である。

(c)ある言語の文法は、その言語の文法的文のみを生成するシステムである。

(d)人間の文法判断は統計・確率や頻度に基づいて行われる。

 

①(a)と(c)

②(b)と(c)

③(a)と(d)

④(b)と(d)

 

[5] 書き換え規則とチョムスキー階層について誤っているものを一つ選びなさい。

(a)語形の最小単位である「形態素」を音声の最小単位である「音素」に書き換えるための理論を「形態音素論」という。

(b)有限状態文法に閉ループを加えることで連鎖を無限に生成することができる。

(c)文脈依存文法より文脈自由文法のほうがより強力な計算力をもつ。

(d)文脈依存文法を含むような句構造文法であれば人間の言語を扱うことができる。

第2課題

解答用紙あり

第1設題

[1] 形式言語について誤っているものを一つ選びなさい。

aaaabbbbという連鎖から成る形式言語は文脈自由文法によって生成される。

ababababという連鎖から成る形式言語は有限状態文法によって生成される。

aabaabという連鎖から成る形式言語は文脈依存文法によって生成される。

abbbbaという連鎖から成る形式言語は有限状態文法によって生成される。

 

[2] (a)~(c)の文に含まれる変換(d)~(f)として正しい組み合わせを一つ選びなさい。

(a) Adam has an apple

(b) does Adam have an apple?

(c) has Adam an apple?

 

(d) AdamとCを入れ替える。

(e) AdamとC + haveを入れ替える。

(f) CをSに書き換え、S + have → have + Sに変換する。

 

① (a)-(f), (b)-(e), (c)-(d)  ② (a)-(f), (b)-(d), (c)-(e)  ③ (a)-(d), (b)-(e), (c)-(f)

 

[3] 句構造文法と文法的変換について誤っているものを一つ選びなさい。

①句構造文法は強生成力において限界がある。

②文法的変換は句構造文法より抽象的な操作である。

③句構造文法を拡張すれば不連続要素を扱うことができる。

④文法的変換を導入することで文法が単純化される。

 

[4] ①~④の中で義務的変換のみを受けたものを1つ選びなさい。

① Adam ate an apple

② did Adam eat an apple?

③ what did Adam eat?

④ who ate an apple?

 

[5] 「併合」と「探索」について誤っているものを一つ選びなさい。

① 併合は二つの統辞体を一つにまとめる操作である。

② 二股の分岐から成る木構造は併合によって生み出される。

③ 「本を読む」という句では「本を」が主辞となる。

④ 主語と動詞の一致現象は「探索」によって引き起こされる。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
ノーム・チョムスキーの言語理論の基本を学ぶ。 自然科学としての言語学の考え方を説明できる。 テキスト序章
言語学は自然科学であるということを理解し、言語の生得性仮説を学ぶ。 自然科学としての言語学の考え方を説明できる。 テキスト序章
伝統的な言語学の特徴を学び、ノーム・チョムスキーの言語理論との違いを学ぶ。 伝統的な言語学とノーム・チョムスキーの言語理論の違いを説明できる。 テキスト第1章
「プラトンの問題」とは何か?言語の「学習説」と「生得説」を学ぶ。 言語獲得についての仮説を説明できる。 テキスト第1章
人間言語の階層構造と再帰性について学ぶ。 人間言語の重要な特徴を説明できる。 テキスト第1章
三つの論文を凝縮した『統辞構造論』の概要を知る。 ノーム・チョムスキーの代表的著作の概要を説明できる。
テキスト第2章
句構造と構成素、句構造などを生み出す書き換え規則について学ぶ。 初期の生成文法理論の仕組みを説明できる。 テキスト第2章
文脈依存文法と文脈自由文法、形式言語の具体化について学ぶ。 文法の形式を説明できる。 テキスト第2章
変換分析というアイデアについて学ぶ。 文法における変換の特徴を説明できる。 テキスト第2章
文法装置としての脳、脳の言語地図について学ぶ。 言語の脳科学について説明できる。 テキスト第3章
第二言語習得、多言語習得、脳の活動を見るfMRIについて学ぶ。 第二言語習得の難しさとfMRIの基本原理を説明できる。 テキスト第3章
文法判断と短期記憶、チョムスキー理論の新提案「併合」について学ぶ。 文法判断、短期記憶、そして「併合」の仕組みを説明できる。 テキスト第3章
失文法について学ぶ。 失文法について説明できる。 テキスト第3章
一元論と二元論、ミラー・ニューロンと「プラトンの問題」について学ぶ。 一元論と二元論、ミラー・ニューロンと「プラトンの問題」について説明できる。 テキスト最終章
サイエンスにおける仮説、因果関係を説明することの難しさについて学ぶ。 サイエンスにおける仮説の役割について説明できる。 テキスト最終章
試験 テキストの内容を正しく理解できているかを確認する問題を出題する。