最終更新日:2024年3月12日

1年次入学生:4年 3年次編入学生:4年 短期大学部:-
文学部 文学科

U100

日本近現代文学講読Ⅳ

夏目漱石の『門』を読む

単位条件

通信 2単位

教員

李 哲権

履修条件

なし

到達目標

以下の教養的な認識に到達することを仮想理念として掲げる。
1.文学は文学だけの事象ではなく、特に絵画、神話、宗教、哲学等と境界を接している学問であること
2.テクストをいかに読むか、その余白の見つけ方、解釈の仕方
3.文学史が流布させた、自己中心主義的な狭い視点から抜け出すこと

学習成果

漱石のテクストはそのほとんどが「恋愛」をテーマにしたものである。そして『こころ』の「先生」が「恋愛は罪悪だ」と言い放ったために、議論や批評の大半は倫理道徳的な言説や西洋発の「恋愛」の言説を用いて論じたものが多い。『門」をそのような視点からずらして、エリアーデの「植物のシンボリズムと生のメタファー」やロマン主義(ルンゲー、フリ-ドリヒ、ノヴァーリス)や表現主義の絵画(ゴッホ、ゴーガン、マルク、シャガール、カンディンスキー)との関わり合いの中で読むと、いかなる発見があり、いかなる解釈の可能性が開けてくるのかを、実際に体験し、文学テクストを読む喜びと興奮を味わうことができるようになる。また、文学テクストをいかに読むか、その手法を身につけることもできる。

テキスト教材

夏目漱石『門(文庫版)』(岩波書店)

参考図書

『隠喩から流れ出るエクリチュール──老子の水の隠喩と漱石の書く行為』(角川書店)
『日本研究 41号』(国際日本文化研究センター紀要)2010〔ネット閲覧可能〕

評価の要点

1.課題テクストを読む誠実さ(テクストの隅々まで読んでおくこと)
2.テクスト解釈の方法・理論・力量
3.テクスト解釈に忠実であること(作品の時代背景・作家の伝記的事実の水増し的堆積は極力避けること)
4.資料・引用・注・参考書(必須)
5.文体(書く行為における職人的な性質・慣れ・滑らかさ・軽快さ)

評価方法と採点基準

レポート合格後の科目終了試験で評価します。
◆S〜Dまでの五段階評価

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

◆レポートを書く前に、森に入って切れ枝を集めるように、あるいは田んぼで落穂を拾うようにたくさん収集して自分の知識と教養の蔵を一杯にしてから、おもむろにゆったりと快楽を覚えながら筆を取り上げること。

レポート課題

提出数 2

第1課題

横書きパソコン印字可
[1600]

第1設題

植物と人間、植物の生と人間の生というアナロジーが織りなすシンボリズムやメタファーを駆使して『門』を自由に、しかも知性豊かに論じなさい。
〔『門』以外の他のテクスト(諸外国のテクスト大歓迎!且つ高く評価する!)や他の作家(諸外国の作家大歓迎!且つ高く評価する。)に言及してもかまわない。〕

第2課題

横書きパソコン印字可
[1600]

第1設題

フィクション空間はそこに登場する人物たちが出来事(event)を生きる虚構の空間である。ゆえに、空間はテクストの物語内容(story)と深く関わった構造を構成する重要な要素である。『門』をそのような空間論の視点を取り入れて、自由に、しかも奥行と深さをもって論じなさい。
〔『門』以外の他のテクスト(諸外国のテクスト大歓迎!且つ高く評価する。)や他の作家(諸外国の作家大歓迎!且つ高く評価する。)に言及してもかまわない。〕

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
◆前期講義内容についての言及
◇『門』論の現在・テクスト空間・語り・視点
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆崖下というテクスト空間1
◇人間動物と巣穴と太古の記憶 ◇バシュラールの隅っ子の詩学
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆崖下というテクスト空間2
◇日の当たらない空間 ◇子供のない空間
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
4回 ◆崖下というテクスト空間3
◇崖のメタフアー・保護 ◇崖の堅牢性と崩壊の危険性
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆崖の中の根っ子
◇根っ子の抱擁と崖の堅牢性 ◇崖=子宮と竹の根っ子=胎児
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆縁側というテクスト空間
◇縁側の昼寝と根っ子の模倣 ◇縁側・海老的屈身と胎児
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆崖上というテクスト空間
◇子宝・団欒を許された空間 ◇日の当たる空間
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆崖下と崖上の交通を可能にするもの1
◇泥棒事件と文庫本の散乱 ◇文庫本の返却
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆崖下と崖上の交通を可能にするもの2
◇文庫本の隠喩の次元 ◇崖の部分的滑落
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆固有名の詩学
◇「お米」という食べられる固有名詞 ◇縁日と花鉢を買う行為
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆ちゃぶ台のある空間
◇居間とキッチン ◇暖かい味噌汁食事の生の隠喩
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆歯医者の治療行為
◇虫歯・根っ子・竹の根っ子 ◇治療行為と保護のメタファー
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆植木屋の越冬行為
◇コモで幹を包む行為 ◇治療行為と包む行為のアナロジー
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆菜園と横穴の空間
◇冒頭の崖下の空間との親縁性 ◇縁側の空間との類似性
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
◆「根っ子」となった宗助
◇横穴に横たわる胎児 ◇円環と円環的時間を刻むテクスト
文学テクストの読み方 テクストの頭・尻尾
試験