最終更新日:2024年3月12日
U082
日本古典文学講読Ⅰ
百人一首を通して和歌を学ぶ単位条件
通信 2単位教員
履修条件
なし
到達目標
古典文学の中核である和歌を、百人一首を対象にして学習する。百人一首が成立するまでの経緯をも理解することで、単に和歌を解釈、鑑賞する以上の、日本古典文学が今日まで伝存することの意義や、その存在感の大きさをも把握することになる。
学習成果
日本文学の伝統を荷う和歌文学の真髄が理解できること、和歌特有の表現効果の巧みさが理解できること、文学と政治とのかかわりが理解できること、藤原定家という人物の偉大さが理解できること、和歌文学がいかに日本文学を牽引して来たか、日本文学史上の位置づけが理解できること。これらの理解を通して、百人一首という作品が、単に文学のみならず、日本文化に及ぼした多大な影響力を知識として身につけることが可能になる。
テキスト教材
吉海直人『百人一首の正体』(角川ソフィア文庫)
参考図書
島津忠夫『百人一首』(角川文庫)
松村雄二『百人一首 定家とカルタの文学史』(平凡社)
吉海直人『百人一首への招待』(ちくま新書182、筑摩書房)
評価の要点
レポートは、教材の内容の理解度、参考文献の活用の有効性、表現したい内容を論理的に過不足なく叙述しているか。試験は、基礎的理解度と、教材の内容を正しく把握しているか、という点を重視して評価する。
評価方法と採点基準
レポート合格後の科目終了試験で評価する。
上記の内容と重複する側面が多いが、レポートの生命は文章表現力の如何に左右されるので、述べたい内容が正確に叙述できているか。試験は、知識度が中心となるので、基礎的な理解が十分であるか、という基準に基づき採点する。
履修上の注意事項や学習上のアドバイス
学習する教育内容(1〜15)はほぼ教科書に触れられているが、参考書を参照すれば、より深い理解が可能となるので、教科書、参考書に引用された他の文献などにも目を通して、百人一首の抱える問題点、学術上の課題についても概観しておきたい。
レポート課題
提出数 2第1課題
第1設題
百人一首が成立するまでの経緯のうち、教育内容(1〜15)から興味のある問題点を1つ選び、具体的な根拠を添えて自己の見解を述べよ。
第2課題
第1設題
百人一首のうちの任意の1首について、解釈に必要な語法・語釈を添えて現代語訳し、かつ、当該歌が詠出された背景にも触れて、鑑賞文を記せ。
※注釈書や研究書などの丸写しをしないように。
備考・補足
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授業回数別教育内容 | 身につく資質・能力 | 学習範囲 (予習・復習を含む) |
|
承久の乱と後鳥羽・順徳両院の処遇 | 承久の乱の歴史的意義が理解できる。 | テキスト p.61〜63 p.124〜125 | |
新勅撰和歌集の切出し歌 | 文学と政治のかかわりが分かる。 | テキスト p.61〜63 p.115〜120 | |
明月記文暦2年5月27日の記事 | 漢文記録が読解できる。 | テキスト p.20〜26 | |
蓮生の依頼と色紙染筆 | 百人一首成立の始発が分かる。 | テキスト p.20〜26 | |
小倉山荘と嵯峨中院 | 定家と蓮生の山荘が異なることが分かる。 | テキスト p.20〜26 | |
百人秀歌の発見 | 百人一首成立の新たな視点が得られる。 | テキスト p.27〜33 | |
百人秀歌との共通点と相違点 | 両書が酷似していることが理解できる。 | テキスト p.27〜33 | |
百人一首と百人秀歌の先後 | 百人一首成立階梯に百人秀歌が大きく関与することが分かる。 | テキスト p.27〜33 | |
小倉色紙の謎 | 定家真筆・偽筆の意味が理解できる。 | テキスト p.34〜51 | |
百人一首選入歌人の是非 | 文学史の通念との違いが分かる。 | テキスト p.100〜108 | |
百人一首選入歌の是非 | 〃 | テキスト p.108〜120 | |
人麿・貫之の選入歌と世評 | 両者の代表歌についての知見が得られる。 | テキスト p.108〜120 | |
定家の嗜好 1恋歌の重視 | 百人一首の特質の一端が理解できる。 | テキスト・参考書の 全般に亘る。 | |
定家の嗜好 2幽玄と有心 | 〃 | 〃 | |
文学史上の位置と意義 | 百人一首のレゾンデートル・アイデンティティーが分かる。 | 〃 | |
試験 試験には、テキスト・参考書類の持込みは認められないので、基礎的知見の理解を問う設問が中心になる。それに加えて、重要事項に 関する見解を纏める文章題も課される。 |