最終更新日:2024年6月11日

1年次入学生:2年 3年次編入学生:3年 短期大学部:-
心理・福祉学部 心理学科

P064

精神疾患とその治療Ⅰ

精神障害について学び、理解を深める。

単位条件

通信 1単位 面接 1単位

教員

丸田 敏雅

履修条件

レポート1課題提出後スクーリングを受講する。

到達目標

誰でもなりうるメンタルトラブルからなかなかとらえがたい精神疾患まで、さまざまなこころの不調のあらわれかたを理解できるようになる。
ひとは身体的、心理的、社会的、霊的存在であり、こころの不調には、それぞれの要因が複雑に関わることを理解できるようになる。
精神障害者の苦痛を理解しながら、セルフケアや身近な不調者へのサポートが考えられるようになることを目指す。

学習成果

(1)精神障害と身体的な疾患・障害との違いを知り、こころの健康や不調のあらわれかたを理解できる。
(2)精神医学的なこころはたらき(精神機能)のとらえ方を知り、精神症状や診断法について理解できる。
(3)精神障害の治療について、その目的と方法を知り、各種治療法の特徴を理解できる。また、セルフケアや身近な不調者へのサポートを考えることができる。
(4)さまざまな精神障害の特徴、主な症状、経過、治療について知り、精神障害者の苦痛や困難について理解しようという姿勢・態度が身につく。

テキスト教材

渡辺雅幸『専門医がやさしく語るはじめての精神医学』(中山書店)

参考図書

山下格『精神医学ハンドブックー医学・保健・福祉の基礎知識』(日本評論社)
上島国利他編『知っておきたい精神医学の基礎知識』(誠信書房)

評価の要点

(1)精神科医療の歴史、心理現象の生物学的基礎、精神障害の定義と分類、精神科的面接・検査、精神症状と状態像、精神科の治療法、法と精神医学といった精神医学的基礎知識の要点を説明できる。
(2)精神医学の鍵となる概念や症状等をあらわす用語を正しく理解できる。
(3)主な精神障害の特徴、症状、経過、治療などについて説明できる。

評価方法と採点基準

レポート・スクーリング両方が合格後、総合的に評価する。
通信レポートは、評価の要点にある各項目を確認するための選択問題の解答によって評価する。
※レポート課題は選択問題であるため、再提出し、合格となる場合の評価はすべて「C」とする。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

レポート課題の解答の前に必ずテキストを通読し、専門用語を調べたり他のテキスト的な本を読み比べたりして学ぶようにしてください。なお、2013年米国精神医学会の精神障害新基準策定に伴い、2014年日本精神神経学会が病名の新指針を公表しましたが、テキストはまだ新病名に対応していないため、レポート課題には新旧併記していますので注意してください。

レポート課題

提出数 1

第1課題

⚠通信1単位/面接1単位。通信1単位分のレポート課題を提出した後、スクーリングを受講してください。

解答用紙あり

第1設題

(総論)
1.次の精神医学史に関する記述の中から、誤っているものを一つ選びなさい。
a.フランス革命の頃にピネルが精神病患者の扱いを改革し、人道的、科学的な精神医学に一歩踏み出した。
b.1900年に精神病者監護法が制定され、患者の自由意志による入院が制度化した。
c.フロイトは無意識の働きを重視し、力動精神医学の基礎を築いた。
d.セリエは動物実験から痛みや不快などの刺激による生理的反応を発見し、ストレスの概念を提唱した。
e.1995年制定の精神保健福祉法によれば、精神障害者を理解し社会復帰に協力するのは国民の義務である。

2.次の脳および神経の生理・解剖に関する記述の中から、誤っているものを一つ選びなさい。
a.中枢神経系は脳と脊髄からなり、末梢神経系には感覚神経と運動神経の他に自律神経系がある。
b.脳の神経細胞間(シナプス)での情報伝達は神経伝達物質が介している。
c.ノルアドレナリンやインシュリン、ドーパミンなどの神経伝達物質は病気の症状発現に関係している。
d.右手利きの人の言語機能は左大脳半球と関係が深い。
e.前頭葉がひろく障害されると、自発性や意欲が低下したり感情やパーソナリティが変化したりする。

3.次の精神療法に関する記述の中から、誤っているものを一つ選びなさい。
a.森田療法による入院治療は通常、絶対的臥褥期、軽作業期、重作業期、社会生活の準備期からなる。
b.内観療法は厳しい自己省察を通して道を究めようとする浄土真宗の身調べを基本としている。
c.認知療法は認知の歪みを検証し修正することで否定的な感情や問題行動の自己コントロールを目指す。
d.行動療法は学習理論を基礎とする行動変容技法の総称で、脱感作法、トークンエコノミー法、シェイピング法などがある。
e.社会生活技能訓練では、自立生活技能および職業的技能を訓練する。

4.次の精神症状に関する記述の中から、正しいものを一つ選びなさい。
a.神経症性障害における強い不安はほとんどの場合、了解可能である。
b.対象のないばくぜんとした怖れを恐怖という。
c.心因により、自分の意志とは無関係に体の感覚や運動が麻痺する状態を解離状態という。
d.不合理と思っても打ち消せない強い不安や苦痛を、解消するために行う動作を強迫観念という。
e.医学的検査で異常がないものの重篤な病気に罹っていると思い、強く不安を感じることを離人症という。

5.次の精神症状に関する記述の中から、正しいものを一つ選びなさい。
a.自分がいる場所や時間がわからなくなることを健忘という。
b.脳の慢性障害の主な症状は意識障害である。
c.せん妄は高齢者によくみられる意識障害で、ときに錯視や幻視、妄想を伴う。
d.ブローカの中枢の損傷により、言葉は聞こえるが内容を理解できない感覚失語になる。
e.わずかな刺激で涙があふれるような感情の過敏さを情性欠如という。

6.次の精神症状に関する記述の中から、正しいものを一つ選びなさい。
a.複雑酩酊では急に意識障害に至り、その間の記憶がないことが多い。
b.自閉症(自閉スペクトラム症)児が仕草や表情で自分の要求を伝えられず、相手の腕を欲しいものまで持っていくことをクレーン現象という。
c.うつ病においてなかなか考えが浮かばない状態を思考途絶という。
d.てんかんの単純部分発作では、意識が障害されたり記憶を失ったりする。
e.統合失調症の陽性症状としてみられるものに感情鈍麻がある。

7.次の障害と治療法に関する組み合わせの中から誤っているものを一つ選びなさい。
a.パニック障害(パニック症)―SSRI
b.うつ病―通電療法
c.睡眠障害―光照射療法
d.統合失調症―催眠療法
e.抜毛症―行動療法

8.次の検査法に関する組み合わせの中から誤っているものを一つ選びなさい。
a.文章完成法―性格検査
b.WISC−R―知能検査
c.失語症検査―全生活史健忘
d.脳波検査―てんかん
e.梅毒検査―進行麻痺

9.次の薬物療法に関するAからDまでの記述のうち、正しいものの組み合わせをa〜eの中から一つ選びなさい。
A.抗精神病薬―統合失調症、躁うつ病
B.抗不安薬―睡眠障害
C.気分安定薬―パニック障害
D.抗てんかん薬―ナルコレプシー
a.A−B b.A−C c.A−D d.B−C e.C−D

10.診断基準に関するAからDまでの記述のうち、正しいものの組み合わせをa〜eの中から一つ選びなさい。
A.DSMはアメリカ精神医学会による精神疾患の診断統計マニュアルである。
B.患者の自己診断として簡易的に用いられる。
C.各項目についてもれなく多角的に質問するので、誰でも正確に診断を行うことができる。
D.ICDは精神障害だけでなく身体の疾患も分類する。
a.A−B b.A−C c.A−D d.B−C e.C−D

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
精神科医療の歴史
内容:精神科医療の歴史を知る(日本の歴史、西洋の歴史など)ことで、自分や社会と精神障害とのあり方を考える。
精神科医療と社会のこれからを身近なこととして理解できる。
第1章 I.精神科 医療の歴史
心理現象の生物学的基礎
内容:心理現象の生物学的基礎を知る(脳および神経の生理・解剖など)ことで、脳とこころとの関係を理解する。
脳とこころとの関係が理解できる。 第1章 II.心理現 象の生物学的基礎
精神障害の定義と分類
内容:精神障害の定義と分類を知る(精神障害の成因と分類など)ことで現代における精神障害の原因と診断名に関する考え方を理解する。
精神障害の原因と診断名に関する考え方を理解できる。

第1章 III.精神障 害の定義と分類
精神科的面接・検査
内容:精神科的面接・検査を知る(面接法と診断基準、身体検査と心理検査など)ことで、精神科診断法の特徴を理解する。
精神科診断法の特徴を理解できる。
第1章 IV.精神科 的面接・検査
精神症状と状態像
内容:意識の障害、知覚の障害(幻覚)、思考の障害、記憶の障害、知能の障害(認知症、精神遅滞など)、感情の障害、意欲の障害、自我意識の障害などが記載されている部分を拾い読みし、精神症状をあらわす用語を確認する。
能力:精神症状のあらわれかたの概要を理解できる。 第2章 精神科の病 気とその症状
薬物療法と身体的治療法
内容:薬物療法と身体的治療法の目的、効果、副作用などの特徴について知り、現在の精神科治療における用いられかたを理解する。
現在の薬物療法と身体的治療法の特徴について理解できる。 第3章 I.薬物療 法と身体的治療法
精神(心理)療法
内容:精神(心理)療法の目的や各種療法の特徴について知り、現在の精神科治療における用いられかたを理解する。
各種精神(心理)療法の特徴について理解できる。 第3章 II. 精 神 (心理)療法
精神科リハビリテーション、社会療法と生活療法
内容:精神科リハビリテーション、社会療法と生活療法の目的や特徴について知り、現在
の精神科治療における用いられかたを理解する。
各種精神科リハビリテーションの特徴について理解できる。 第3章 III.精神科 リハビリテーショ ン、社会療法と生活 療法
法と精神医学
内容:刑法と精神医学、成年後見制度、精神保健福祉法について知り、精神障害者の人権や責任能力についての現在の考え方を理解する。
精神障害者の人権や責任能力についての現状を理解できる。 第3章 IV.法と精 神医学
病跡学
内容:病跡学を知り、精神障害の創造性への影響について理解する。
精神障害の創造性への影響について理解できる。 第3章 V.病跡学
神経症とストレス関連障害
内容:神経症とストレス関連障害の症状や治療を理解し、心因性精神障害について理解を深める。
さまざまな心因性精神障害の特徴について理解できる。 第2章 I.神経症 とストレス関連障害
心身症
内容:心身症の概念、症状や治療を理解し、ストレスについて理解を深める。
心身症の概念、ストレスについて理解できる。 第2章 II.心身症
統合失調症
内容:統合失調症の症状を理解し、内因性精神障害について理解を深める。
統合失調症の症状や経過を理解できる。

第2章 III.統合失 調症
統合失調症
内容:統合失調症の経過や治療を理解し、精神障害者の社会復帰について知る。
統合失調症患者の治療、生活支援を理解できる。 第2章 III.統合失 調症
気分障害
内容:気分障害の症状について理解し、社会状況(ストレス、自殺など)と健康についても理解を深める。
気分障害の症状や経過を理解できる。 第2章 IV.気分障 害
気分障害
内容:気分障害の経過や治療を理解し、精神障害者の社会復帰についても理解を深める。
気分障害患者の治療、生活支援を理解できる。 第2章 IV.気分障 害
器質性精神障害
内容:器質性精神障害の症状や治療を理解し、外因性精神障害について理解を深める。
さまざまな器質性精神障害の特徴について理解できる。 第2章 V.外因性 精神障害、VI.器質 性精神障害
症状性精神障害
内容:症状性精神障害の症状や治療を理解し、コンサルテーションリエゾン精神科について知る。
さまざまな症状性精神障害の特徴について理解できる。 第2章 VII.症状性 精神障害
物質関連障害、物質依存症
内容:物質関連障害、物質依存症の症状や治療を理解し、アルコールや薬物の影響について知る。
さまざまな物質関連障害の特徴について理解できる。 第2章 VIII.物質関 連障害、物質依存症
てんかん
内容:てんかんについて、その特徴を知る。
てんかんの特徴について理解できる。 第2章 IX.てんか ん
老年期精神障害
内容:老年期精神障害について、その特徴を知る。
老年期精神障害の特徴について理解できる。 第2章 X.老年期 精神障害
児童・青年期の精神障害、精神遅滞
内容:児童・青年期の精神障害、精神遅滞について、その特徴を知る。
児童・青年期の精神障害、精神遅滞の特徴について理解できる。 第2章 XI.児童・ 青年期の精神障害、 XII.精神遅滞
パーソナリティ(人格)障害
内容:パーソナリティ(人格)障害について概念を理解し、その特徴を知る。
パーソナリティ(人格)障害の特徴について理解できる。 第2章 XIII.パー ソナリティ(人格) 障害
その他の精神障害
内容:その他の精神障害(睡眠障害など)について、その特徴を知る。
その他の精神障害(睡眠障害など)の特徴について理解できる。 第2章 XIV.その他 の精神障害
精神医学概論I
内容:精神医学の鍵となる概念や用語について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。
精神医学の鍵となる概念や用語等について深く理解できる。 スクーリングにて資 料を配布、第1章、 第2章
精神医学概論II
内容:精神医学の鍵となる概念や用語について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。
精神医学の鍵となる概念や用語等について深く理解できる。 スクーリングにて資 料を配布、第1章、 第2章
精神医学概論III
内容:精神医学の鍵となる概念や用語について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。
精神医学の鍵となる概念や用語等について深く理解できる。 スクーリングにて資 料を配布、第1章、 第2章
精神医学各論I
内容:いわゆる外因性の精神障害について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。
外因性の精神障害について深く理解できる。 第2章
精神医学各論II
内容:いわゆる内因性の精神障害について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。
内因性の精神障害について深く理解できる。 第2章
精神医学各論III
内容:いわゆる心因性の精神障害について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。
心因性の精神障害について深く理解でき る。 第2章
試験
通信レポート(選択問題)、面接授業(スクーリング)で行う終了試験(記述問題)によって総合的な理解を確認する。