最終更新日:2024年4月5日

1年次入学生:3年 3年次編入学生:4年 短期大学部:-
心理・福祉学部 心理学科

P027

老年心理学

高齢者を心理学的に理解する。

単位条件

通信 2単位 面接 2単位

教員

池内 朋子

履修条件

レポート2課題提出後スクーリングを受講すること。

到達目標

この授業では、まず高齢期の心理面に限定せず、老化の生物的-心理的-社会的(bio-psycho-social)という多面的な視点から高齢者の特徴について学び、さらに認知症を中心とする要介護期の諸問題や心理的支援について学ぶことを目標とする。それによって、高齢者支援の現場においてより良質な支援ができるようになることが期待される。また、将来、高齢者に向かっていく受講生自身が自らの生き方を選択する際の一助にもなると考えている。

学習成果

 bio-psycho-socialという多面的な視点から高齢者の特徴については、①超高齢社会の出現、②エイジングと発達、③老化と老化現象、④サクセスフル・エイジング、⑤生涯発達からみた高齢期の区分、⑥高齢期の知的能力、⑦高齢期のパーソナリティ、⑧高齢期の心理発達課題という流れで進む。要介護期の諸問題や心理的支援については、⑨要介護期の心理的問題と心理査定(認知症、うつ病、せん妄、自殺、閉じこもり、介護ストレス、関連する心理検査の紹介)、⑩認知症を中心とした心理的支援(認知症ケアの理念、コミュニケーション、各種の心理療法的アプローチ、介護者支援)をとりあげる。学習の成果は、これら①から⑩のテーマに関する知識を獲得し、それに沿って具体的な事象を考えていくことができるようになることである。
 この科目は、心理学科のディプロマポリシーのうち、以下の項目に対応する。
1.心理学の基礎領域を幅広く学び、人の心のしくみを科学的に捉えることができる。

テキスト教材

下仲順子(編)『現代心理学シリーズ14 老年心理学(改訂版)』(培風館)2012

参考図書

権藤恭之(編)『朝倉心理学講座 第15巻高齢者心理学』(朝倉書店)
佐藤眞一・権藤恭之編『よくわかる高齢者心理学』(ミネルヴァ書房)

評価の要点

テキスト内容の理解についての的確さ、レポート課題、スクーリングにおける学習成果から判断する。

評価方法と採点基準

レポート・スクーリング両方が合格後、総合的に評価する。
レポートは正答個数から評価を行う。スクーリングは出席およびグループワークの成果の内容から評価を行う。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

テキストをしっかりと読んでください。また心理学用語は詳しく調べるなら、心理学辞典を活用するのがベストですが、手元にない場合も多
いでしょう。その際は「心理学」の概論書をあたってください。特に基礎的な心理特性の内容では、人一般に共通する心理特性(例:記憶のは
たらき)について理解した前提での高齢者の話となります。心理学の基礎知識について復習しながら、学習をすすめてください。
スクーリングではパソコンを使用します。また、別途資料を配付します。

レポート課題

提出数 2

第1課題

通信2単位/面接2単位。通信2単位分のレポートを提出した後、スクーリングを受講してください。

解答用紙あり

第1設題

 設問 下記の文章を読み、(  )に適切な言葉を入れなさい〔テキストを参照すること〕。*同じ数字の(  )には同じ言葉が入ります。

A. 日本では、高齢期(老年期)のはじまりは( 1 )歳からとされている。

B. 高齢期(老年期)に起きる変化のことを老化あるいは加齢という。英語では( 2 )である。

C. 日本では、( 3 )年に65歳以上の人口が7%を超えた状態をさす高齢化社会に達した。

D. 人間の限界寿命は約( 4 )歳とされている。

E. 容姿(外見)に現れる老化現象としては、( 5 )、( 6 )などがあげられる。

F. 老化とは加齢に伴う身体機能の衰えをさす。こうした生物としての衰えが生じるメカニズムについてはさまざまな学説がある。その

一つである( 7 )は、生体の形、機能、構成物質が磨り減るように消耗していくという考え方である。( 8 )は、老化は遺伝

子の組み合わせにより、あらかじめプログラムされているという考え方である。

G. 各臓器の( 9 )に加え、外的要因の影響などにより、人は老化とともに身体的な疾病に加速度的にかかりやすくなる。老化は「命

あるものすべてに起こる現象である(普遍性)」であるという点が重要な特徴の一つであるが、疾病は( 10 )という点で、老化

と区別される。高齢者の疾病の特徴として、( 11 )、( 12 )、( 13 )などが指摘されている。

H. 高齢者の閉じこもりとは、安村の定義によれば、( 14 )とされ、老化の一側面と考えられている。閉じこもりの発生は、疾病な

どの身体的要因のみならず、心理的要因や( 15 )も関与しており、これらの3つが相互に関連していると考えられている。

I. エピソード記憶とは( 16 )のことである。この記憶には加齢の影響が( 17 )といわれている。一方、誰もが知っている知

識に関する記憶である( 18 )は加齢の影響は( 19 )といわれている。

J. 作動記憶とは( 20 )のことである。実験結果から、作動記憶は加齢とともに( 21 )することが示されている。

K. 過去の私的経験に関する記憶のことを自伝的記憶という。これはルービンらの実験結果から、高齢者は遠い過去の出来事よりも最近

の出来事に関する記憶のほうが記憶頻度の( 22 )ことが示されている。

L. 外界には同時に多くの刺激情報が存在している。しかし、私たちは、それらについて目や耳などの感覚器で受容し知覚系で処理を行っ

ているものの、情報の全てに気がついている(意識している)わけではない。このような、多くの対象からその行動の目標に必要な

情報だけに注意を向け、不必要な情報を無視する注意の機能を( 23 )という。いくつかの課題を用いた実験結果から、高齢者の

( 23 )は( 24 )していることが示されたが、刺激の呈示方法や条件によっては高齢者でも( 24 )しにくい場合もある。

M. 分配的注意とは( 25 )である。近年、条件によっては高齢者の課題成績が低下することが分かってきた。

第2課題

通信2単位/面接2単位。通信2単位分のレポートを提出した後、スクーリングを受講してください。

解答用紙あり

第1設題

 設問 下記の文章を読み、(  )に適切な言葉を入れなさい〔テキストを参照すること〕。*同じ数字の( )には同じ言葉が入ります。

A. 認知症(痴呆症)とは( 1 )というものである。その種類として( 2 )、( 3 )型認知症などがある。認知症の症状には

( 4 )、( 5 )などがある。また認知症を鑑別する心理検査として( 6 )などがよく使われている。

B. うつ病とは、( 7 )気分や( 8 )などがあらわれる。高齢者のうつ病は抑うつ感が全景に立たないため、認知症とうつ病との

鑑別診断が( 9 )ことが指摘されている。

C. いわゆる「頭の良さ」である知能の定義および構造にはさまざまなものがある。老年心理学ではキャッテルの提案に基づく2因子モ

デルから知能研究がなされることが多い。キャッテルによれば流動性知能とは( 10 )であり、加齢や脳の器質的障害の影響を

( 11 )。一方、結晶性知能とは( 12 )であり、加齢や脳の器質的障害の影響を( 13 )。

D. 系列法という研究法を用いて知能の加齢変化について研究を行ったシャイエによれば、流動性知能は60歳後半になってから( 14 )

する一方で、結晶性知能のピークは80歳ごろであるという。このようにウェックスラーなどの従来の研究に比べると、知能は成人以

降も緩やかに上昇し、かつ低下の開始も遅いと指摘されている。また、シャイエとウィリスは一度低下した知能であっても訓練(練習)

を受けることによって知能得点が回復したことを報告している。このように成人期の知能には( 15 )がある。

E. 系列法などによる縦断データが蓄積される以前から、知能と関連する諸要因として( 16 )、( 17 )、( 18 )、( 19 )

が指摘され、関連性について研究されてきている。

F. 生涯発達の理論として、ユングやエリクソンの理論がある。いずれもライフサイクル(人生周期)を通して人格が段階的に発達する

という考え方である。そのうち、他者との関わりを通して自我発達がなされるというエリクソンの理論によれば、高齢期は8段階の

うちの8段階目にあたる。その発達課題は( 20 )対( 21 )であり、課題を達成する上で必要な力として「英知(知恵)」が

あげられている。

G. サクセスフル・エイジングとは( 22 )のことをいう。このサクセスフル・エイジングに関連したパーソナリティのタイプについ

ていくつか研究されている。そのなかで、ライチャードによれば見出された5つのタイプのうち、適応の良いタイプは( 23 )、

( 24 )、自己防衛型、不適応状態であるタイプは外罰型、内罰型であるという。このうち自己防衛型とは( 25 )というタイ

プである。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
超高齢社会の出現 統計調査からの現状 教科書2章(事前に通読)
エイジングと発達 エイジングと発達の定義、考え方 教科書1章(事前に通読)
老化と老化現象① 正常な老化について 教科書3章・4章・5章 (事前に通読)
老化と老化現象② 病的な老化について 教科書3章・4章・5章 (事前に通読)
サクセスフル・エイジング① 活動理論を中心に 教科書9章・10章・11章 (事前に通読)
サクセスフル・エイジング② 離脱理論を中心に 教科書9章・10章・11章 (事前に通読)
サクセスフル・エイジング③ オプティマル・エイジングを中心に 教科書9章・10章・11章 (事前に通読)
サクセスフル・エイジング③ 高齢期について理解を深める
高齢期の知的能力① 記憶の定義
記憶の加齢変化
教科書6章(事前に通読)
高齢期の知的能力② 知能の定義
知能検査
教科書7章(事前に通読)
高齢期の知的能力③ 知能の加齢変化
発達心理学的研究法
教科書7章(事前に通読)
高齢期のパーソナリティ① 性格の定義
性格検査
教科書8章・9章(事前に通読)
高齢期のパーソナリティ② 性格の加齢変化
健康・長寿との関連
教科書8章・9章(事前に通読)
高齢期のパーソナリティ③ 主観的幸福感との関連
終末低下
教科書8章・9章(事前に通読)
高齢期の心理発達課題① 発達課題
エリクソン理論
教科書8章・9章(事前に通読)
高齢期の心理発達課題② 成人期の発達課題
高齢期の発達課題
教科書8章・9章(事前に通読)
高齢期の心理発達課題③ 老年的超越について 教科書8章・9章(事前に通読)
ここまでのまとめ 高齢期の心理発達について理解を深める
要介護期の心理的問題① 認知症について 教科書12章・13章・14章 (事前に通読)
要介護期の心理的問題② うつ病やせん妄について 教科書12章・13章・14章 (事前に通読)
要介護期の心理的問題③ 閉じこもりや介護予防について 教科書12章・13章・14章 (事前に通読)
要介護期の心理的問題④ 家族の介護ストレスについて 教科書12章・13章・14章 (事前に通読)
要介護期の心理的問題⑤ 高齢期虐待、看取り、
死別について
教科書12章・13章・14章 (事前に通読)
認知症を中心とした心理的支援① ケアの理念について 教科書15章(事前に通読)
認知症を中心とした心理的支援② コミュニケーション
技法について
教科書15章(事前に通読)
認知症を中心とした心理的支援③ 心理検査について 教科書15章(事前に通読)
認知症を中心とした心理的支援④ 心理療法的ケアとは回想法 教科書15章(事前に通読)
認知症を中心とした心理的支援⑤ 芸術療法
化粧療法
教科書15章(事前に通読)
認知症を中心とした心理的支援⑥ 他の専門職とどう連携していくか 教科書15章(事前に通読)
ここまでのまとめ 高齢期の心理的問題と支援について理解を深める
試験
高齢期全般についての理解、高齢期の心理発達、高齢期の心理的問題と支援の4点をとりあげる。