最終更新日:2024年6月6日

1年次入学生:2年 3年次編入学生:3年 短期大学部:-
心理・福祉学部 心理学科

P004

教育心理学

心理学的な観点から教育を理解する

単位条件

通信 2単位

教員

猿渡 知子

履修条件

なし

到達目標

教育という営みや学習者について心理学的な見地からとらえられるようになることを目標とする。
本科目は心理学科のディプロマ・ポリシーに該当している。

学習成果

・発達の過程にある学習者を理解することができる。
・学習という事象および教育という営みについて心理学的にとらえることができる。
・効果的な教育実践や教育現場における諸問題への対応について理論的に考えることができる。

テキスト教材

榎本博明『わかりやすい教育心理学』(サイエンス社)2021

参考図書

鎌原雅彦・竹綱誠一郎『やさしい教育心理学 第5版』(有斐閣アルマ)2019
中澤潤『よくわかる教育心理学 第2版』(ミネルヴァ書房)2022

評価の要点

レポート:テキスト教材や参考書によって着実に学び、基礎的な知識を身につけているか。
科目終了試験:教育心理学の理論や用語を正確に理解しているか。

評価方法と採点基準

レポート合格後の科目終了試験で評価する。
科目終了試験は、教育心理学の基礎的な理論や知見について正確に学び、用語の意味と使い方を理解しているかを基準に評価する。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

・学習範囲を熟読し、参考書等も参照して、学ぶべき内容や用語を正しく理解してください。
・他の科目の学習内容と関連する部分も多くあります。人が発達し学んでいく過程とそれを支える教育について、様々な知識を結びつけながら理論的にとらえていってください。

レポート課題

提出数 2

第1課題

解答用紙あり

第1設題

(1)~(25)にあてはまる語または人名を下の語群から選びなさい。
・発達の初期に経験の効果が著しく強く現れ、その後の経験で修正できない時期を( 1 )という。人間の場合は発達の柔軟性が高く、初期経験による影響をある程度修正できると考えられるため、( 1 )というとらえ方ではなく( 2 )と呼ばれる。
・( 3 )は、子どもが独力で課題を解決できる水準と、大人からのヒントなどの援助を受けることで課題を解決できる水準の間の領域を( 4 )と呼び、これによって教育の役割を説明した。ブルーナーは、( 4 )において大人が行う援助を( 5 )と呼んだ。
・生後9ヶ月ごろになると、子どもと大人の二者関係に物が介在する( 6 )が見られる。子どもが指さしたものに大人の目を向けさせたり、大人の視線の先に子どもが目を向けたりするようになり、これを( 7 )という。
・数秒から十数秒程度保持される一時的な記憶を( 8 )といい、比較的永続性のある記憶を( 9 )という。( 8 )は何度も( 10 )することで( 9 )へと転送される。( 10 )のうち、機械的に反復するものを( 11 )、意味づけや連想を行うものを( 12 )という。
・( 13 )は、作業の速さや効率性が問われる課題の遂行に役立つ知能を( 14 )知能、作業の質が問われる課題の遂行に役立つ知能を( 15 )知能と呼び、それぞれの知能の発達の特徴を見出した。
・マーシャは自我同一性(アイデンティティ)について4つの状態を想定した。このうち、自分が進むべき方向性について迷い模索している状態を( 16 )、親や周囲から与えられた方向性に疑問を抱かず生きている状態を( 17 )と呼んだ。
・( 18 )は「発見学習-受容学習」と「有意味学習-機械的学習」の2つの次元を用いて学習法を分類し、学習内容を効率的かつ理解を深めながら習得できる学習法として( 19 )学習の有用性を主張した。
・学習者の課題や適性によって、ある学習方法の効果が異なることを( 20 )といい、( 21 )が提唱した。
・成功や失敗の原因を何に求めるかを( 22 )という。これについてワイナーらは、内的要因のうち( 23 )的なものとして能力、( 24 )的なものとして努力をあげた。そして、失敗したときに( 25 )不足が原因だと考える人は動機づけを維持できるとした。

【語群】
結晶性  モラトリアム  原因帰属  変動  維持リハーサル  共同注視  足場かけ  臨界期  リハーサル 流動性 安定  早期完了  短期記憶  長期記憶  敏感期  有意味受容  三項関係  プログラム 発達の最近接領域 適性処遇交互作用  精緻化リハーサル  能力  努力  キャッテル  ヴィゴツキー バンデューラ  クロンバック オーズベル

第2課題

解答用紙あり

第1設題

(1)~(9)すべての問いに答えなさい。
(1)エリクソンの心理社会的発達段階論に関する記述として、誤っているものを1つ選びなさい。
1.発達段階のそれぞれに心理社会的危機があり、肯定的な要素と否定的な要素の葛藤を経て望ましい性質を獲得していく。
2.人生の8つの発達段階のうち、青年期に心理的な発達が最大となり、その後の段階では下降していく。
3.学童期には、現実的なものごとを成し遂げることに喜びを見いだし、勤勉性の感覚を身につける。
4.エリクソンの理論は、人は周囲の人との相互作用のなかで発達するととらえるものである。
5.エリクソンの理論は、フロイトの発達理論を土台としつつ心理社会的な観点を重視して提唱されたものである。

(2)ピアジェの認知発達論に関する記述として、誤っているものを1つ選びなさい。
1.物事をとらえる枠組みをシェマといい、すでに持っているシェマが通用しないときに対象に合わせてシェマを修正することを調節という。
2.物事が他者の立場からどう見えるかを想像できない自己中心性は、前操作期の思考の特徴である。
3.具体的操作期には、物の見た目が変わっても数や量が変わらないという対象の永続性の概念が獲得される。
4.抽象的思考や仮説に基づいた思考は、形式的操作期に可能になる。
5.実際の個々の子どもの認知発達は、発達の個人差や教育環境などによって、ピアジェが示した年齢の段階と必ずしも一致しない。

(3)知能に関する記述として、正しいものを1つ選びなさい。
1.言語能力、創造力、コミュニケーション力などの流動性知能は、青年期にピークとなり、その後衰退していく。
2.知能はほとんどが遺伝によって決定され、環境の影響はほぼ受けない。
3.ビネー式知能検査は、領域を設定せず全体的な知能水準を測定する。
4.ウェクスラー式知能検査には、児童用知能検査(WISC)と成人用検査(WAIS)の2種類がある。
5.ある人の知能指数は、年齢が変化しても変わらない。

(4)様々な学習の方法や形態に関する記述として、誤っているものを1つ選びなさい。
1.プログラム学習は、個々の学習者の理解度に合わせて学習課題をスモールステップで進めていくものである。
2.受容学習は、学習者に知識を伝達する効率的な方法であり、学校教育では中心的な学習法になっている。
3.オーズベルは、学習者が学習内容の意味を考えて理解を深める有意味受容学習を重視すべきであるとした。
4.発見学習は、学習内容や学習者の適性によっては効果的でない場合もある。
5.ジグソー学習は、学習者どうしがグループ内で競い合うことによって学習効果を高めるものである。

(5)アンダーマイニング効果に該当するものを1つ選びなさい。
1.ある生徒に対して教師の期待が低いと、その生徒の学業成績や生活態度の水準が下がる。
2.身だしなみが整っていない生徒に対して、不真面目でやる気がない生徒であると教師が判断する。
3.取り組んだらお小遣いをあげる約束をして開始した学習に、初めは喜んで取り組んでいた子どもが、徐々にやる気を失う。
4.自分から好んでお絵かきをする子どもに、かいた絵に対してシールをあげると、自発的なお絵かきが減る。
5.仲のよい友達が先生にあいさつするのを見た子どもが、自分もあいさつするようになる。

(6)学校における諸問題に関する記述として、誤っているものを1つ選びなさい。
1.最近10年間のいじめの認知件数は、小・中・高等学校すべてで増加傾向にあり、とくに中学校で大きく増加している。
2.1995年にスクールカウンセラーの配置事業が開始された主要な背景は、不登校の増加であった。
3.不登校には、児童生徒本人の要因、教師や友人との関係、学業の問題、家庭の問題など様々な要因が考えられる。
4.個々の行為が「いじめ」に当たるかどうかの判断は、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとされている。
5.児童生徒の暴力行為は低年齢化が進み、2018年度以降は小学校での発生件数が中学校を上回っている。

(7)次の例はどのような学習過程にあてはまりますか。もっとも適切なものを下のA~Dから選びなさい。
1.病院で注射をされ痛い思いをした子どもが、白衣の人を見ると怖がるようになった。
2.宿題をしないとゲームを取り上げるようにしたら、子どもが宿題をするようになった。
3.漢字を1ページ練習するごとにチョコレートを1個食べていいと自分でルールを決めて勉強を進める。
4.友達が廊下を走って先生に叱られているのを見て、廊下は走らないという行動のしかたが身についた。

A.道具的条件づけ(オペラント条件づけ)  B.自己強化学習  C.観察学習  D.古典的条件づけ

(8)次の各文について、外発的動機づけに関するものにA、内発的動機づけに関するものにBを記入しなさい。
1.発見学習によって促進されることが期待できる。
2.人をある行動に向かわせる効果において即効性がある。
3.おこづかいやほめ言葉や叱責などによって行動がうながされる。
4.有能感と自己決定感が得られる状況で高められる。

(9)教育評価は、何を基準に評価するかによって相対評価、絶対評価、個人内評価に分類できます。それぞれの特徴について、表の①~③にもっとも当てはまるものを下のA~Cから、④~⑥にもっとも当てはまるものを下のD~Fから選んで番号で答えなさい。

長 所 短 所
相対評価
絶対評価
個人内評価

長所の選択肢
A.児童生徒一人一人の学習過程が重視される。
B.評価者の主観に影響される余地が少ない。
C.評価がその後の学習の具体的な目標に直接つながりやすい。
短所の選択肢
D.適切な評価ができる到達度目標の設定が難しい場合がある。
E.同じ学力であっても所属する集団によって評価が変わる可能性がある。
F.客観的な学力がより高い児童生徒が、より低い評価を受ける可能性がある。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
教育心理学とは 教育心理学の位置づけを理解する 第1章 (p.1~9)
心の発達 発達に影響する要因と発達段階について理解する 第2章 (p.11~32)
言語・思考・記憶の発達① 言語と思考の発達について理解する 第3章3.1~3.2 (p.33~48)
言語・思考・記憶の発達② 記憶の発達について理解する 第3章3.3 (p.48~56)
知的能力の発達 知能のとらえ方について知り、学業成績に影響する要因を理解する 第4章 (p.57~74)
自己意識の発達 自己に関する意識の発達について理解する 第5章 (p.75~94)
社会性の発達 人間関係や社会生活に関する考え方や行動の発達について理解する 第6章 (p.95~108)
学習に関する理論 学習という事象を心理学的にとらえ、その諸理論を理解する 第7章 (p.109~122)
学校教育における学習 学習の形式・方法について知り、学習効果との関連を理解する 第8章 (p.123~140)
学習の動機づけ① 動機づけに関する理論や知見について理解する 第9章9.1~9.2 (p.141~154)
学習の動機づけ② 動機づけに関わる要因について理解する 第9章9.3~9.4 (p.154~160)
パーソナリティの理解① パーソナリティをとらえる諸理論について理解する 第10章10.1~10.3 (p.161~180)
パーソナリティの理解② パーソナリティの測定について理解する 第10章10.4 (p.180~188)
不適応とその対応 教育現場の諸問題について知り、その背景となり得る個人の特性を理解する 第11章 (p.189~204)
教育評価 教育評価の種類と特徴を知り、学習意欲への影響について理解する 第12章 (p.205~218)
試験
教育心理学の基礎的な理論や知見について正確に学び、用語の意味と使い方を理解しているかを基準に評価する。