最終更新日:2024年6月27日

1年次入学生:- 3年次編入学生:- 短期大学部:2年
短期大学部 保育科

N060

教育方法論

新しい時代に向けた幼児教育の在り方

単位条件

通信 2単位

教員

金 玟志

履修条件

なし

到達目標

 本学習が目標にしているのは、時代を超えた普遍的な幼児教育の原理を理解し、現職教員の幼児教育の展開における実践力を身に付けるとと
もに新しい時代に向けた幼児教育の創造的な営みを問い直すことである。具体的な内容は以下のようである。
①人権としての幼児教育への視点について学ぶ。
②平等社会の実現という視点を幼児教育へつなげる方法を考察する。
③最善の利益を追求するための幼児教育と学びの共同体の視点について理解を深める。

学習成果

「人権」「平等社会」「最善の利益」という視点から幼児教育を捉えることにより、新しい時代に向けた幼児教育の創造的な営みについて、以
下の視点を身に付けることができる。
①幼児教育を人権意識の展開という視点から捉えることにより、幼児教育の実践と教師としての生き方の意義につなげ教師論を基盤にした幼児
教育は何かについて視野を広げることができる。
②平等社会の実現に向けて人権という意識を幼児教育とどのように結びつけるのかを学ぶことにより、現代社会と幼児教育を巡る諸問題につい
て理解し、まとめることができる。
③社会変化に伴い子どもの幸せを保障する幼児教育はどうあるべきかという問題意識に立ち、学びの共同体としての幼児教育について考察し、
まとめることができる。

テキスト教材

小田豊・榎沢良彦編『新しい時代の幼児教育』(有斐閣)

参考図書

テキストの章ごとの参考文献を参照

評価の要点

 成績評価は、レポート合格後の科目終了試験にて評価する。具体的な内容としては、テキストの学習を通じて、受講生が上記の到達目標を達成できたか否か、「人権」「平等社会」「最善の利益」という視点から幼児教育を捉えているか否かである。レポートは、誤字・脱字がないようにし、最新の幼児教育に関する諸問題を絡めて述べることが大切である。なお、引用・参考文献などは出典を記すことが必要である。

評価方法と採点基準

 レポート合格後の科目終了試験で評価する。成績評価は、科目終了試験の評点をもとに行う。受験資格は、第1課題、第2課題に合格した者
へ与えられる。第1課題はテキスト前半の内容に関する問題であり、テキスト内容の理解を深めるための復習を兼ねている。第2課題は二つの
設問のうち一つを選び2,400字程度にまとめるレポートである。また、科目終了試験は、客観形式の問題と論文形式の問題である。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

 テキストの内容から分からない部分があれば、各章の参考文献を読んだり資料を探したりして分からないままにしないことが大切である。さらに、レポートは、テキストの内容をただ書き写したり整理しただけにせず、自分の考えたこと・疑問点など加えてまとめるようにすると良い。

レポート課題

提出数 2

第1課題

解答用紙あり

第1設題

下の(  )に当てはまる用語を指定用紙に記入しなさい。
なお、用語についてはテキストに準拠して記すこと。また、必ず該当するテキストのページも記すこと。

1)1924年、第一次世界大戦で多くの子どもが命を失ったことを反省し、「ジュネーブ宣言」に基づき人類は子どもに( ア )という子どもの適切な保護が重視された。その後、1989年11月、国際連合総会で多様化し深刻化する世界の現実に対し子どもの権利を保障するために( イ )が採択された。特に、( イ )の第12条の( ウ )は、自己に影響を及ぼすすべての事項について子ども自ら自由に意見を表明する権利を認めたものであること、また( エ )権利が子どもにあるという教育権の捉え方の変化により、子どもをたんに権利の享受者としてだけではなく権利行使の主体として捉えるようになった。

2)社会の構想を描いたルソーの『社会契約論』に対し、『エミール』では人間をどう教育するのかを中心に、先ず、人間として( オ )について述べた。つまり、自然の秩序のもとで人間はみな平等であり、それが教育の目的であるとした。これらに対しフレーベルは、子どもが本来もっているものを実現させる( カ )をすることが教育の目的であるとし、子どもの( キ )に着眼した。ルソーが、「( オ )、それがわたしの生徒に教えたいと思っている職業だ」と述べたのに対し、フレーベルは、( キ )が世界と子どもとをつなぐ媒体となるために、( ク )と( キ )を指導する大人の存在について述べた。そして、それらの遊戯を指導施設として( ケ )が構想された。

3)『幼稚園保育法真諦』を執筆した( コ )は、フレーベルの教授の機械化である恩物主義を批判し、いつのまにか、するすると教育に入らせるような「( サ )」を重視した。それを「生活形態」と称し、保育者がそのなかでで子どもの意図を汲み取り援助する( シ )、また、あるがままの子どもの生活をどう誘導するかという観点である( ス )の大切さが重要であるとした。特に、( ス )においては、無理のない自然な「生活形態」のなかで子どもが知らず知らず( セ )(滋養価値)を身に付けるように配慮することができる教育計画としての保育案が重要な意味をもつとした。

4)1989年、日本の合計特殊出生率が1.57になり( ソ )が社会問題となった。その結果、近年、子どもたちは自分と近い年齢の( タ )が減り、子ども同士だけで過ごす( チ )が減少する傾向がある。これらを中村和彦は「3間の減少」と指摘し、「( チ )」「空間」「仲間」の喪失が子どもの生活や体力に影響を及ぼしているとした。子どもの対人関係の希薄性が( ソ )に因ると考えられている一方、親自身の子ども同士で遊んだ経験の乏しさが親の( ツ )・( テ )の低下を招き、子育てに対する自信喪失・育児不安に陥る傾向も子育ての大きな問題である。さらに、コンピュータ等情報通信機器による( ト )の世界に身を置く子どもの姿は、五感を用いて身の回りの事象に直接関わり、感性を育てる部分にも悪影響を及ぼしている。そのなか、都市に人口が集中していく( ナ )の傾向は、環境ホルモンへの問題にも広がり、将来子どもたちが住み続けられるまちづくりや子どもらしい生活の持続のための工夫が求められている。

5)近年、人の平均寿命が延びたことにより、誕生から死までの人の一生の過程である( ニ )を考えることが重要視されてきた。それとともに、人間は生涯発達する存在として捉えるようになり、時期や年齢によって特有な段階があるためそれぞれの段階において習得しなければならない( ヌ )があると定義された。ハヴィガーストの( ヌ )は、最初に提唱されたものであり、人間が健全で幸せな発展を遂げるためには各時期にそれらを達成することで次段階の課題が容易に達成されるとした。特に、幼児期の( ヌ )は、「( ネ )と( ノ )」の身体的側面、人との関係の( ハ )側面、( ヒ )の判断である社会的側面、言語・事象概念形成にあたる( フ )の側面があると提示された。しかし、ハヴィガーストの( ヌ )は、課題達成のみが強調され、幼児一人ひとりが抱えている気質・成育歴・文化背景を考慮していない部分が問題であるといえる。

6)文部科学省による学習指導要領は、子どもの発達段階ごとの特徴と課題を「乳幼児期」「学童期」「青年前期(中学校)」「青年後期(高等学校)」の4段階に分けて挙げているが、これらはエリクソンの発達理論に基づいて作成されている。エリクソンは、上記(5)の( ニ )という概念を最初に唱し精神分析家である。彼の( ヘ )は、それぞれの段階に直面する( ホ )を軸に乳児期から老年期まで8つの発達段階を想定し、各段階にはポジティブな特質とネガティブな特質があり、これらを経験しながら相対的にポジティブな要素が勝ることで、それを基礎として人間の基本的な強さが決定すると考えた。例えば、乳児期は基本的な( マ )の育ちが大切であるとし、人に受け入れられた実感が乏しいと自分の可能性を信じることも難しいと指摘した。特にエリクソンは、発達を語る際、人の生涯の発達がまわりの人との( ミ )により形成され、子どもをその段階に当てはめてしまうのではなく、子どもの育ちを関わる者が、どのように子どもが育っているのかを知り、その発達の過程を把握し関わるかを大切にしているといえる。これら
に対し、小田豊は、人間の発達を考える際、「段階」という言葉のみに着目すると、人の生涯を階段や直線的に捉え、「これができる」といったつのものさしで子どもを評価する危険性を指摘し、ピアジェやヴィゴツキーの「子どもは、生来( ム )を携えている」という視点に基づき、子どもの発達は子ども自らが『ふうせん』を膨らませていくようなものであると( メ )を提唱した。子どもがまわりの人の支えを受けつつ順序を追って大きくなり、膨らみ方は子どもの気質や背景によって異なるとしたこの発達観は、保育者が子ども一人ひとりの『ふうせん』の形状を理解し、その膨らみといえる発達状態を捉え、その過程を( モ )、時には空気を入れることが大切であることを示唆した。

7)1926年アメリカで創設された( ヤ )は、アメリカ社会の教育の失敗や経済不況による学力格差や教育保育プログラムの悪化を改善するために開発された( ユ )としての子どもの発達にふさわしい実践プログラムとして開発された。0~8歳の子どもを対象に教育保育実践の基本見解と方針を示したものではあるが、日本の幼稚園教育要領や保育所保育指針が文部科学省や厚生労働省で出している者に対し、( ヤ )はアメリカの乳幼児教育保育に関与する専門家団体の討議によって作成されている。特に、乳幼児の発達にふさわしい統合的なカリキュラムを通して( ヨ )を付けていくことが知的教育であるとし、幼児の自由遊び・教師の適切な働きかけ・評価・学習と発達の関係、そしてケアと教育の統合的実践などを包括し、子どもの学力と実践の質向上に向けた指針である。

8)子どもの主体性・自主性を尊重し、子どもが意思表示できる権利を保障する、個人を尊重する教育が( ラ )を促進する教育である。
そして、この( ラ )の考えを前面に打ち出しているのが、1966年からニュージーランドの幼保統一カリキュラムとして行われている( リ )である。( リ )とは、先住民のマオリの言葉で「編み込んだマット(敷物)」という意味からなり、多様なバックグランドをもつ子ども達「誰もが乗ることのできる敷物」を象徴している。複合民族国家、多文化理解を押し進める国づくりの基礎として、2言語2文化を編み込むように、( ラ )を含む4つの基本原則(The Principles)と5つの要素(The Strands)のもと、117の達成目標が掲げられている。特に、子どもの学びと発達の分野を表す5つの要素のなかには、「子どもの健康と幸福が守られること(Well-being)」「子どもとその家族が所属感を感じ取ること(Belonging)」「子ども一人ひとりの存在が価値ある者として尊重されること( ル )」「あらゆる言語やシンボルが守られること(Communication)」「遊びなど様々なことを試したい探求心を通して学ぶこと(Exploration)」が提示され、子ども一人ひとりが携えている力や背景を重んじつつ人や社会に( ル )することが特徴である。これは、子ども一人ひとりが尊重されていると同時に、対等に気持ちを伝え合い、遊びのなかで( ル )し合うことを大切にするカリキュラムといえる。 *( リ )( ル )は英語で記す

第2課題

設題1~2より1題選択(第2課題には設題が2題ある。そのうち1題を選んで、2,400字程度でまとめたものを提出すること。調べた資料に関しては、出典を必ず記述すること。)

横書きパソコン印字可
[2400字程度]

第1設題

基礎学力の「量的側面」や「質的側面」から見た「非認知能力」の育ちについてまとめ、いま求められている幼児教育について論じなさい。

第2設題

今日の「多文化教育」がもつ課題についてのべ、教育する側が複眼的思考をもつことの意味について論じなさい。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
子どもの権利と幼児教育 教育学における「子ども」の発見と子どもの捉えについて学ぶ。 読解力
幼児教育の理解
1p~19P (45分)
幼児教育の課題(1)生涯発達の視点から見た幼児教育について学ぶ。 読解力
幼児教育の理解
27p~39P (45分)
幼児教育の課題(2)学力としての知的教育と道徳性の育成について考える。 読解力
幼児教育の理解
39p~58P (45分)
幼児の学び・発達と環境(1)学びを引き出す環境と発達について学ぶ。 読解力
幼児教育の理解
60p~78P (45分)
幼児の学び・発達と環境(2)遊びを通し学ぶ幼児期の特性について考える。 読解力
幼児教育の理解
79p~86P (45分)
幼児教育の方法(1)マニュアルとしての「方法」と探りあてる「方法」について理解する。 読解力
幼児教育の理解
89p~101P (45分)
幼児教育の方法(2)主体性を生かす幼児教育の方法の在り方について考える。 読解力
幼児教育の理解
102p~113P (45分)
教育実践を支える理解(1)教育実践における子どもと教師との関係性について学ぶ。 読解力
教育実践の理解
115p~130P (45分)
教育実践を支える理解(2)実践研究としての教育実践について考える。 読解力
教育実践の理解
131p~140P (45分)
幼児教育の共同体(1)幼児教育における共同体について理解する。 読解力
幼児教育の理解
141p~156P (45分)
幼児教育の共同体(2)共同体の生成発展について考える。 読解力
幼児教育の理解
157p~166P (45分)
保育者の専門的成長 保育者の実践知と省察を通した保育者の成長について理解する。 読解力
保育者の専門性
169p~190P (45分)
保育内容の構造と展開 保育内容論の歴史的系譜から見た教育課程について学ぶ。 読解力
教育課程の理解
191p~219P (45分)
幼児教育の現在と未来 転換期の幼児教育について学び 読解力
保育者の専門性
221p~242P (45分)
非認知能力における幼児教育「非認知能力」について調べ幼児教育についてまとめる。 読解力
資料探索
探して読む (60分)
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