最終更新日:2024年3月25日
N003
日本国憲法
幼稚園・保育所などの教育福祉制度を支える国の仕組単位条件
通信 2単位教員
履修条件
なし
到達目標
幼稚園・保育所は、それぞれ学校教育法・児童福祉法に定められた教育福祉制度であるが、これらの法律は憲法25条・26条を最高法規として制定・改正され、それぞれ文部科学省・厚生労働省での制度改革や予算作成が行われます。この科目では、教育福祉制度を支える国の仕組と私達の関わりを考えることにします。
なお、レポート課題は公立幼稚園・保育所などの公務員試験において、過去に出題された問題を基に設定しています。
学習成果
① 学校教育法に定めれた教育機関としての幼稚園、児童福祉法に定められた児童福祉施設としての保育所などの社会制度が、憲法の各条項(26条・25条)を最高法規として成立し、毎年のそれらの制度の見直しや各政策への予算配分[行政権]、更に、各法律の改正つまり制度の改正[立法権]も憲法の理念をもとに行れることを理解する。
② 私たち国民は、行政による各制度改革や予算配分、更には法律の改正による各制度の抜本的変革に対し、選挙権の行使により選んだ各議員
(国会議員・地方議会議員)を通した意見表明の機会が与えられていることを理解する。
③ 教育者・福祉関係者にとって必要とされる人権感覚を、各裁判例(判例)を調べることにより身につける。
テキスト教材
甲斐聡『憲法』(聖徳大学短期大学部通信教育部)2023
参考図書
渋谷秀樹・赤坂正治『憲法1人権(第7版)』・同『憲法2統治(第7版)』(有斐閣)2019
長谷部(他2名)編『憲法判例百選Ⅰ(7版)』(有斐閣)2019
長谷部(他2名)編『憲法判例百選Ⅱ(7版)』(有斐閣)2019
棟居快行(他5名)『基本的人権の事件簿(第6版)』(有斐閣)2019
評価の要点
① レポートは文献のコピーでなく、その内容を関連ページ・判例集・六法・法律辞典・最新の文献などで具体的に理解し、段落構成を考えまとめる。但し専門用語の定義などは、通説的見解をコピーしても構わない。
②参考文献は必ず明示し、今日的問題を考えるためにも、なるべく新しい文献を参照する。
③ 専門用語の定義は、専門書や法律辞典で調べる。例えば、国民主権は「国民に主権がある」でなく、「国政のあり方を決めるのは国民自身である」となる。
評価方法と採点基準
レポート合格後の科目終了試験で評価します。
① レポートは段落のある文章でまとめ、表や図による解説は不要で、必ず参考文献を明示して下さい(著作権法上の要請です)。
なお、レポート作成前に、各段落に何を書くかにつていてのレジュメ(文章の目次)を作成することをお勧めします。
② 終了試験については、第一課題から二問、第二課題から二問出題され、
一問につき平均五つのチェックポイントがあり25点満点で評価するので、作成レポートから重要と考える点を五つぐらいピックアップしてください。
例えば、上記の国民主権の定義で5点、その具体的方法としての代表民主制と国会中心主義を簡潔に説明すると、更に8点を加算します。
履修上の注意事項や学習上のアドバイス
① 各種の法令を調べるには総務省行政管理局の「e-Gov 法令検索」のHPが、また、判例を調べるには、本学図書館のHPの「データーベースのご案内」にある「判例体系」が有用です。なお、第1課題設題1に関し、大日本帝国憲法の条文はGoogleで「大日本帝国憲法」と検索すると、国立国会図書館HPの「憲法条文・重要文書」で参照可能です。
② 法学のテキストは、各法律の導入部分をまとめたものであるため、レポート作成のためには、其々の新しい専門書(改正されることがあるため)を図書館で調べることが重要です。
レポート課題
提出数 2第1課題
設題1〜4から1題選択
※ 公立幼稚園や公立保育所などの公務員試験の過去問題からテーマを設定しています。
第1設題
明治憲法の基本的性格と日本国憲法の基本原理(憲法の理念から考える社会の在り方)
第2設題
国民主権と象徴天皇制(教育・福祉制度の改革を私達が訴えるための手段を考える;選挙権の行使による国民主権の実現)
第3設題
基本的人権の保障と法の下の平等(幼児教育者の求められる人権感覚を考える)
第4設題
社会権と生存権の法的性格(教育・福祉制度の根幹である憲法理念を考える)
第2課題
設題1〜4から1題選択
※ 公立幼稚園や公立保育所などの公務員試験の過去問題からテーマを設定しています。
1.レポートの書き方について
法学の文献は、長年の研鑽を積んだ学者が自分の考えに基づいて記述したものです。従って、それをコピーしても自分で考えて作成したレポートとは言えません。初学者は、英語の教科書を中学1年生が英語の辞書を引きながら理解するように、六法・法学辞典・更に文献の事項索引で関連ページを調べ、定義の部分以外は、自分なりの理解をした上で段落構成を考えレポートを記述する必要があります。特に六法は最新の物を利用しないと、現存しない制度をレポートにコピーしているだけとなります[例:国会議員の定数は、公職選挙法4条1・2項の改正が頻繁に行なわれ、テキストの作成時と異なることがある。]
例えば、国民主権というテーマについて、「国民に主権がある」では、聖徳大学と問われて「聖と徳の大学である」と答えるようなものです。
つまり、国民主権の本質である「国家の意思を最終的に決定する力が国民にある」の内容について、国民主権のページだけでなく、代表民主制についての文献の「国会」のページ、直接民主制について、「裁判所」「地方自治」「憲法改正」のページを通読し論述する必要があります。もちろん、終了試験の答案には、それを簡潔にまとめ記述すればよいのです[例:直接民主制とは〜で、最高裁判所裁判官の国民審査…などがある]。
2.科目終了試験について
試験問題は第一課題・第二課題の中から、それぞれ2題が出題され、計4問となります(25点×4)。例えば、第二課題について「二院制」が出題さ れた場合、もう一問は「衆議院の解散」以外のテーマとなります。
つまり、予想問題は各課題について8問ということになります。
設問は「説明しなさい」という形式です。一問について、平均5項目の評価ポイントがあり、外国法や外国の学説のコピーは不要です。
例えば、社会 権の場合、
1.社会権とは何か(自由権との違い)、
2.生存権とは何か、それによりどの様な社会制度が成立しているか、
3.教育を受ける権利とは何か、 同前、
4.勤労の権利とは何か、同前、
5.労働基本権とは何か、同前、を簡潔にまとめると 5×5 で25点となります。ちなみに「生存権」とい う設問の場合、憲法25条の説明と法的性格(論争の理由・プログラム規定説と三つの根拠・法的権利説と四つの根拠)、具体的権利説と抽象的権利説を まとめる必要があります。また、「法の下の平等」という設問は、憲法14条1項が「法の適用において人を差別してはならず、人を差別する法を定めて はならないことを意味する」と記すと5点、「人種・信条・性別・社会的身分・門地」の例示を記すと5点、更に、それぞれの差別の具体例(例:性別 の差別は民法733条の女性の再婚禁止期間〜)を記すと、各1点をプラスし、14条2項・3項、16条、24条、26条1項、44条の内容を簡単に記す と各2〜3点となります。更に、合理的理由による差別的取扱について、「労働基準法に規定がある」では、1点で、具体的に条文を調べ、「労働基準法 65条の産前産後休暇」と記せば5点となります(条文の数字は終了試験では不問)。8つのテーマについてレポートを作成し、それを終了試験用に簡潔 にまとめたカードを作成することを奨めます。
3.なぜ憲法を学ぶのか
最後に、なぜ幼稚園免許や保育士資格のために憲法を学ぶのかについて考えてください。
例えば、保育所は児童福祉法24 条・39条などによって設置 される福祉施設です。
この法律は、憲法25条を基本法(社会権)として、私達の代表である議員が国会で制定したもので、改正[または改悪]もここ で行なわれます(国民主権)。また、各保育所の保育士の定員は、各市議会や区議会によって決められる福祉予算が影響しています(財政)。
つまり、この国のあらゆる制度は、私達が選んだ議員(町議会〜国会)によって定められた法律を基盤としているため、“福祉が充実しない” のは私達 自身の選挙行動に問題があるからです。…憲法を学ぶとは、“より良き社会を築くための手段を手に入れること” と考えてください。
第1設題
権力分立と国会の地位(第一課題②と関連し、教育・福祉行政の改革のために国民の声を反映させる国会の地位を考える)
第2設題
二院制と衆議院の解散(社会制度改革のために、国民から選ばれた国会議員と国会の仕組みを考える)
第3設題
内閣総理大臣と内閣の総辞職(行政府[例:文科省・厚労省]と立法府(国会)との関係を考える)
第4設題
財政処理の一般原則と予算(教育や福祉予算の成立過程と、私たちの代表である国会の事後コントロール機能を学ぶ)
備考・補足
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授業回数別教育内容 | 身につく資質・能力 | 学習範囲 (予習・復習を含む) |
|
日本国憲法の基本原理 三つの基本原理の中で国民主権と基本的人権の保障を中心にまとめ、平和主義は9条の三つのポイントと今日的問題を簡潔に述べる。 | 身近な問題と憲法の関係の理解 | ||
国民主権 実現手段としての代表民主制と国会中心主義、更に例外としての三つの直接民主制を調べる。 | 選挙権の理解 | ||
象徴天皇制 明治憲法と異なり、天皇は国事行為のみが権能とされるが、その制度と問題点を考える。 | 象徴天皇制の理解 | ||
基本的人権の保障 人権の性格、五つの人権の定義と一例(条文)、更に公共の福祉による制約を調べる。 | 人権感覚の醸成 | ||
法の下の平等 立法者拘束説、五つの列挙事項についての差別のケース、14条2・3項、個別平等規定、合理的理由による異なった取扱いをまとめる。 | 同 上 | ||
社会権 自由権との比較、四つの社会権の具体的内容をまとめる。 | 同 上 | ||
生存権の法的性格 論争の理由、プログラム規定説、法的権利説(抽象的権利説・具体的権利説)をまとめる。 | 同 上 | ||
権力分立 立法権・行政権・司法権の相互関係を文章にまとめ、特に、立法と行政の関係では、議院内閣制の長所と短所を理解する。 | 教育福祉制度の改正 | ||
国会の地位 国権の最高機関とされ、法治主義によって行政・司法の組織・行為を規定するが、憲法上の立法権の例外も理解する。 | 同 上 | ||
二院制 国民主権の実現手段である国会の組織を具体的に理解し、衆議院の優越について考察する。 | 国政の動向を理解 | ||
衆議院の解散 衆議院の内閣不信任決議への対抗として政府が持つ権限で、国民主権の下に総選挙により審判するが、どの様な事態が考えられうるか。 | 同 上 | ||
内閣総理大臣 内閣の組織、総理の権能を内閣統一保持の権能、行政に関する権能、国会に対する権能、その他の法律による権能に分類する。 | 教育福祉行政の理解 | ||
内閣の総辞職 議院内閣制の趣旨、憲法69条・70条前段と後段の定める内閣総辞職の ケース、その後の職務執行内閣をまとめる。 |
同 上 | ||
財政処理の一般原則 憲法83条の財政国会中心主義、それを具体化する84条と30条、 85条、88条と8条、89条をまとめる。 |
教育福祉予算の成立過程 | ||
予算 予算の意義、成立手続、予算の種類、国の財政処理の事後コントロールとしての決算の審査制度をまとめる。 | 同 上 | ||
試験 |