最終更新日:2024年3月12日
D057
公衆衛生学
単位条件
通信 2単位教員
履修条件
なし
到達目標
公衆衛生学は健康を維持するための技術や制度を対象とする学問ですが、社会福祉学の学習・実践にあたってはそれらの技術や制度を理解・習得する必要があります。そして、それを踏まえて「社会福祉学と公衆衛生学の関係」や「公衆衛生学を取り巻く医学およびその他の関連領域との関係」を理解することを目標とします。
学習成果
衛生学は個人衛生であり、公衆衛生学は集団としての衛生であると捉えることもできますが、実際には両者を区別することは容易ではありませんし、実際的でもありません。ここでは「衛生学・公衆衛生学」という教科書を使い、どちらかといえば公衆衛生学らしい章を学びます。これらの課題について、社会福祉学との関連性を考えながら勉強していただきます。
(1)衛生学および公衆衛生学の意義(衛生学・公衆衛生学とは、衛生学・公衆衛生学の歴史、衛生学・公衆衛生学の活動と意義)
(2)健康(健康の概要、健康管理)
(3)母子保健(母子保健の意義、母体の健康、乳幼児の健康、母体保護と家族計画、少子化問題と子育て支援)
(4)成人・高齢者保健(成人・高齢者保健の意義、加齢と老化、生活習慣病の特徴と予防、老人保健福祉対策、介護保険、難病対策の現状)
(5)疫学(疫学の概念と意義:病気の流行、疾病の頻度の測定、疫学調査研究の段階と実例)
(6)保健統計(保健統計の意義、主な保健統計とその意義、主要な保健統計指標)
テキスト教材
財団法人東洋療法学校協会編『衛生学・公衆衛生学』(医歯薬出版)
参考図書
厚生統計協会編『国民衛生の動向(最新版)』(財団法人厚生統計協会)(毎年9月に最新版が刊行される)
評価の要点
・レポート評価の要点
衛生学の中でもとりわけ社会福祉学と強く関連する分野について、記述式で出題します。問題によっても異なりますが、キーワードが含まれているか、読みやすく、わかりやすく書かれているかなどを評価の視点とします。
・試験評価の要点
選択問題と記述式の組み合わせで出題します。衛生学の基本的事項を理解しているかどうかを問う問題を中心にします。
評価方法と採点基準
レポート合格後の科目終了試験で評価します。
レポート課題に合格した後、科目終了試験を受験し、その評価が60点以上であれば単位の認定となります。
履修上の注意事項や学習上のアドバイス
(1)教科書をよく読むこと、そしていきなり覚えようとするのではなく、よく理解することに努めて下さい。
(2)世の中のことに関心を持って下さい。種々のメディアから情報を取り入れ、世の中にはどのような健康問題があるのか、それに対して社会はどのように対処しているのかを読み取って下さい。
(3)場合によっては、現実にとられている対策とは異なった意見を持つことも大切です。
レポート課題
提出数 2第1課題
⚠課題の転記は不要です。
第1設題
①〜③全てに答えなさい。
① 予防は公衆衛生において重要な概念である。WHOによる健康の定義を述べた上で、3段階の予防の考え方について例を挙げて【400字以内】で説明せよ。
② 次の文章の(1)から(10)に適切な語句を入れよ。
例:(1)●●●●●●、(2)▲▲▲▲▲▲ など
高血圧、糖尿病などの発症が生活習慣と深くかかわりのある疾患を総称して生活習慣病という。2018年におけるわが国の粗死亡率による死因の第1位と第2位はそれぞれ(1)、(2)であり、他の死因も合計すると、生活習慣病による死亡は全体の5割以上と考えられている。このような状況に対し、2000年に21世紀に向けた新たな健康づくりのために(3)が策定された。(3)では栄養・食生活、身体活動・運動、休養・こころの健康づくり、(4)、アルコール、歯の健康、糖尿病、循環器病、(5)の9つの分野について指標となる具体的な目標を定めている。また、2003年に施行された(6)は(3)を支える法的な基盤となっている。(3)の終了後、最終評価では自殺、飲酒、メタボリックシンドロームなどの課題が提起された。そこで、新たな課題への目標も定めた(7)が2013年から始まっている。(7)ではがん、循環器疾患、糖尿病および慢性閉塞性肺疾患を総称して(8)とし、社会全体で健康リスクを低減していくこととしている。ただし、わが国における粗死亡率では(1)、(2)のような死因は(9)傾向にあるものの、年齢調整死亡率では男女ともに(10)傾向にあることから、人口構成が急速に変化してきていることが推測される。
③ 次の文章の(1)から(10)に適切な語句を入れよ。
例:(1)●●●●●●、(2)▲▲▲▲▲▲ など
(1)とは生まれた子ども1,000人のうち1年未満に死亡する子どもの数のことであるが、大正時代には160を超えていた(1)は現代では概ね2.0と世界有数の低さであり、わが国における母子保健の水準が大幅に向上したことを示している。現在では母子保健サービスとして、思春期から妊娠、出産および育児にいたるまで包括的な事業が提供されている。これは主に1965年に制定された(2)による。妊娠前の事業としては2004年から開始された(3)がある。これは体外受精と顕微授精の費用の一部を事業で負担するものであり、助成対象者は年々増加している。出産後のサービスとしては、先天性代謝異常の有無を確認するために(4)が実施されている。
また、先天異常などの早期発見に有効な(5)、言語・精神発達障害などの早期発見に有力な1歳6か月児健康診査などの健康診査などのサービスも提供されている。母子保健には子育て支援、児童虐待防止などの課題も残されている。母子保健の取り組みの方向性を示すために(6)が2000年に策定され、4つの主要課題として1思春期の保健対策の強化と健康教育の推進、2妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と赴任への支援、3小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備、4子どもの心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減、が挙げられている。この結果に基づき、2014年から(7)が策定され、3つの基盤となる課題と2つの重点的な課題について、52の目標が設定されている。児童虐待とは保護者によって18歳未満の児童に加えられる行為であり、身体的虐待・性的虐待・(8)・(9)の4つに分類されるが、複合して起こることも多い。子どもに対する虐待は死亡などの重大な結果を引き起こしやすく、心身への影響も大きいことから、2000年に(10)が施行され、虐待を受けた子どもを発見した者に対して速やかに通告する義務を課す等の施策が推進されている。
第2課題
⚠課題の転記は不要です。
第1設題
①〜③全てに答えなさい。
① 次の文章の(1)から(10)に適切な語句を入れよ。
例:(1)●●●●●●、(2)▲▲▲▲▲▲ など
わが国では高齢化が進展しており、2042年には高齢化のピークを迎えることが推計されている。低経済成長や財政悪化など経済状況は悪化しているにもかかわらず、社会保障給付が増加していることから、社会保障と税の一体改革として種々の施策が実施されている。例えば、医療保険制度としては原則として75歳未満を対象とした職域保険および国民健康保険があるが、一般的に75歳以上の後期高齢者に対しては2008年から施行された(1)法に基づく(2)制度が適用される。また、2000年に施行された介護保険法では種々の課題にあわせて改正が行われており、2014年の改正では全国一律であった要支援者への訪問介護・通所介護を市町村が実施する(3)事業とし、地域の実情に合わせたサービスの提供を可能としている。また、介護保険法の施行に伴って4つの目標を掲げる(4)が開始された。なお、介護保険の被保険者は40歳以上を対象としており、65歳以上の要介護または要支援状態となった(5)および40歳から64歳まの加齢が原因とされる特定の疾病により要介護または要支援状態となった(6)にサービスを給付している。なお、要支援や要介護の判定は市町村に設置された(7)で診査を受けることとなる。2018年の国民生活基礎調査による有訴者率では男女ともに10代の有訴者率が最も低く、75歳以上では半数程度に何らかの自覚症状があることとなる。中でも(8)は男女ともに上位3位に入る自覚症状である。2014年の(9)に基づく外来受療率および入院受療率によると、外来受療率が最も高いのは男性、女性の順に80-84歳代、75-59歳代であり、成人の入院受療率は男女とも年齢の上昇と共に増加している。2014年の受療行動調査によると、療養病床を有する病院に限れば、退院許可が出た場合に自宅で療養できるとする者よりも療養できないとする者の方が多い。自宅療養を可能とする要素として後者が挙げるもののうち、最も高頻度な要素は(10)である。このように、わが国の高齢者に対する施策については課題も多く、特に若年期からの予防については今後の取組みが期待される分野の一つである。
② 次の文章の(1)から(10)に適切な語句を入れよ。
例:(1)●●●●●●、(2)▲▲▲▲▲▲ など
疫学は一般的に「疾患の分布を考慮して病気の原因を探る」学問だと考えられている。疫学は大きく3つに分けることができ、疾患の分布などを調査観察する(1)、疾患の原因を探る(2)、原因を取り除いた場合の疾患の発生率などを調べる(3)がある。特に(2)についてはいくつかの研究デザインがあり、すでに発症した者と対照者について、ある要因に曝露された者の割合を比較する(4)と観察期間を設定して疾患の発生率などを比較する(5)が代表的である。
最も一般的な記述疫学調査の一つが保健統計である。保健統計には人口統計、疾病統計、医療統計などがあり、わが国の特性や経時的傾向を把握する上で不可欠なものである。人口統計によると、わが国における性・年齢別人口構成は(6)型であり、既に各年齢階級のうち最も人口の多い階級は60代となっているため、労働力人口の減少が容易に推測できる。また、人口増加に関する指標には粗出生率、年齢別出生率、合計特殊出生率などがある。一般的な出生率として、一人の女性の生涯における平均的な出生数である(7)を示すことが多い。社会の健康水準を示す指標の一つに死亡率があるが、健康水準が同等であっても高齢者が多ければ死亡率は高くなるため、人口構成の影響を受けにくい簡便な指標として(8)がよく利用されている。疫学的な考え方は集団検診などにも応用されている。例えば、最適な検査の基準値を設定するにあたっては、疾患を有する者が検査陽性となる割合である(9)や疾患を有しない者が検査陰性となる割合である(10)などが考慮されている。
③ 公衆衛生学では教科書の第1章(衛生学・公衆衛生学の意義)、第2章(健康)、第7章(母子保健)、第8章(成人・高齢者保健)、第11章(疫学)および第12章(保健統計)について学んできた。これらの知識を今後、自身の業務等にどのように活用していくか【400字以内】で意見を述べよ。ただし、どれか一つの章についてのみ記述すること。
備考・補足
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授業回数別教育内容 | 身につく資質・能力 | 学習範囲 (予習・復習を含む) |
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衛生学および公衆衛生学の意義 (衛生学・公衆衛生学とは、その歴史) |
衛生学について説明できる | 教科書1章 45分 | |
衛生学および公衆衛生学の意義 (衛生学・公衆衛生学の活動と意義) |
衛生学について説明できる | 教科書1章 45分 | |
健康(健康の概要) | 健康について説明できる | 教科書2章 45分 | |
健康(健康管理) | 健康について説明できる | 教科書2章 45分 | |
母子保健(母子保健の意義、母体の健康) | 母子保健について説明できる | 教科書7章 45分 | |
母子保健(乳幼児の健康、母体保護と家族計画) | 母子保健について説明できる | 教科書7章 45分 | |
母子保健(少子化問題と子育て支援) | 母子保健について説明できる | 教科書7章 45分 | |
成人・高齢者保健(成人・高齢者保健の意義、加齢と老化) | 成人・高齢者保健について説明できる | 教科書8章 45分 | |
成人・高齢者保健 (生活習慣病の特徴と予防、老人保健福祉対策) |
成人・高齢者保健について説明できる | 教科書8章 45分 | |
成人・高齢者保健(介護保険、難病対策の現状) | 成人・高齢者保健について説明できる | 教科書8章 45分 | |
疫学(疫学の概念と意義:病気の流行) | 疫学について説明できる | 教科書11章 45分 | |
疫学(疾病の頻度の測定、疫学調査研究の段階と実例) | 疫学について説明できる | 教科書11章 45分 | |
保健統計(保健統計の意義、主な保健統計とその意義) | 保健統計について説明できる | 教科書12章 45分 | |
保健統計(主要な保健統計指標) | 保健統計について説明できる | 教科書12章 45分 | |
まとめ | 公衆衛生学の全体像を説明できる | ||
試験 |