最終更新日:2024年4月6日

1年次入学生:2年 3年次編入学生:4年 短期大学部:-
心理・福祉学部 心理学科

P089

心理学的支援法Ⅱ

学生相談概論

単位条件

通信 2単位

教員

設樂 友崇

履修条件

「発達心理学II(青年〜老年)」および「心理学的支援法I」の既習が望ましい。

到達目標

学生相談は、高等教育機関において学生ひとりひとりが十全な学生生活を送ることができるように、心理学の専門性をもとに学生本人やコミュニティ全体に対して教育の一環として提供される様々な活動である。本コースでは、学生相談において中心的な活動であるカウンセリングの事例を通じて、大学生の時期の心理的特徴と課題、学生相談の基本的な考え方・視点を学ぶ(心理学科教育目標1:広い視野の育成)。また、自分自身の学生生活を学生相談の考え方・視点で見直すことで、受講生が当事者として課題を発見し、問いを立てることを目指す(心理学科教育目標6:日常生活の中からの課題発見)。

学習成果

・学生相談の基本的な考え方について説明できる。
・学生期における心理社会的な特徴と課題について説明できる。
・学生期の視点を用いて受講生自身の学生生活を振り返り、そこから見いだされた課題と可能性について考察することができる。

テキスト教材

鶴田和美他編著『事例から学ぶ学生相談』(北大路書房)2010
※その他資料配付

参考図書

鶴田和美編『学生のための心理相談:大学カウンセラーからのメッセージ』(培風館)2001

文部科学省『大学における学生生活の充実方策について(報告)─学生の立場に立った大学づくりを目指して─』2000年(通称:廣中レポート)(平成12年6月)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/012/toushin/000601.htm
日本学生支援機構『大学における学生相談体制の充実方策について─「総合的な学生支援」と「専門的な学生相談」の「連携・協働」─』2007年(通称:苫米地レポート)(平成19年3月30日発表)
https://www.jasso.go.jp/gakusei/archive/jyujitsuhosaku.html
日本学生相談学会編『学生相談ハンドブック 新訂版』(学苑社)2020
福田真也『新版大学生のこころのケア・ガイドブック─精神科と学生相談からの17章─』(金剛出版)2017
日本学生相談会『学生相談機関ガイドライン』2013
https://www.gakuseisodan.com/wp-content/uploads/public/Guideline-20130325.pdf
高石恭子『学生相談と多様性』甲南大学学生相談室、27、60-71、2019
https://konan-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_
id=3626&item_no=1&page_id=40&block_id=38

評価の要点

・学生相談の基本的な考え方および各学生期の心理的特徴と課題を理解できているか。
・それらの理解をもとに受講生自身の学生生活を振り返り、理論との共通性や自身の体験の個別性・独自性を述べることができるか。

評価方法と採点基準

レポート合格後の科目終了試験で評価する。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

テキストを熟読することと、自分自身の学生生活を関心をもって振り返ることが大切です。

レポート課題

提出数 2

第1課題

⚠1と2は指定解答用紙をコピーし、解答を記入してしてください。
3は手書きまたはパソコンで作成してください。

解答用紙あり

第1設題

指定解答用紙  学生相談の説明として、次の文章の( )に適切な言葉を入れなさい。
学生相談(英訳①)とは、大学などの(② )内において、廣中レポートで示されたように(③ )として提供される、学生の十全な学生生活を支援する(④ )相談活動のことである。その中心的活動は学生相談室などキャンパス内の専門部署である(⑤ )において提供される(⑥ )などの個別相談で、これは “狭義” の学生相談と呼ばれる。なお、(⑤ )の具体的な名称は学生相談室、カウンセリングセンター、保健管理センターなど学校ごとに異なっており、聖徳大学通信教育部では(⑦ )が該当する。
一方で、学生へ個別の直接的援助を行うだけでなく、学生や教職員、時に保護者への教育的働きかけや、(⑧ )全体へ向けた予防活動、広報啓発活動、それらを支える研究活動なども、学生相談機関の重要な活動である。それに加え、苫米地レポートで示された三層モデル(日
常的な学生支援・制度化された学生支援・専門的学生支援)全体を含めて、(③ )として提供される学生支援活動全般を “広義” の学生相談と呼ぶ。
学生にとってキャンパスは(⑨ )の場、将来の(⑩ )を定める場、(⑪ )の場、そして生活の場である。多様な学生がキャンパスに集う今日、ライフサイクル上は必ずしも全ての学生がLevinson (1979)の言う「(⑫ )」にいたり、Erikson (1959)の言う「(⑬ )」の課題に直面しているわけではではない。しかし、(② )における新しい知や人との出会いによって学生自身は
変化せざるを得ず、どのような発達段階にある学生も様々な課題や悩みに取り組むことを通じて、自分を見つめ、時に再発見し、理解し、その人らしく成長していく。
学生相談では、大学などの環境に規定されて多くの学生が持つ共通性と、個々の学生によって異なる個別性の両面から学生を理解していく。
例えば、高等教育機関の学生としては最若年層である青年期の年代は一般に様々な精神的問題の好発時期であり、学生生活上の問題の背景として病理的側面に注意を払うことは非常に重要である。また、病理的側面だけでなく非病理的側面、つまり心の健康度に関わらず多くの学生にとって共通した心理的課題があることも視野にいれておかねばならない。
その理論のひとつが鶴田(2001)による(⑭ )で、これは大学生の学年ごとの心理的課題を明らかにし、学年が上がるにつれてそれらが変化することに注目して大学生を理解しようと視点である。学生生活は(⑮ )、(⑯ )、(⑰ )、(⑱ )の4期に分けられ、各期の終わりが次の期の始まりと緩やかに重なるサイクルを描いている。(⑭ )によって個々の学生の経過を振り返っ
たり予想したりするだけでなく、学生たち全体を理解することができる。
一方、個々の学生を理解していく上では、鶴田(2010)が指摘している(⑲ )という視点も重要である。それは学生相談の中で学生が体験する(⑳ )と、学生の現実生活の中で訪れる(㉑ )とに大別されるが、互いに関連し影響し合いながら学生の成長を促す好機/危機となる。なお、本学のような通信課程には様々なライフステージの学生が所属しており、それぞれの年代の発達課題や学生生活以外での出来事に呼応して、より個別性の高い、多様な学生生活が展開される。それに伴って従来より複雑な課題も生起するが、それらへの理解を深めていくことは、相談の主体である学生にとっても学生相談にとっても成長発展の機会となろう。

2  指定解答用紙  学生生活サイクルに関する以下のaからfの文章は、入学期と中間期のいずれについて説明したものであるかを分類し答えなさい。
入学期(㉒ 、㉓ 、㉔ ) 中間期(㉕ 、㉖ 、㉗ )
a.専攻の選択など学生生活内の進路、卒業後の進路、そして人生をどう生きるかなど大きな意味での進路と、幅広い時間軸での進路がテーマとなる。自分自身の関心を絞り目標を設定していく時期である一方、中だるみが生じやすく、スランプや無気力、無関心にも陥りやすい。
b.学生が入学前の慣れ親しんだ生活から離れ、大学での新しい学生生活へと移行する時期である。学生は、入学に伴って生じる問題と、入学以前から抱えてきた問題とに直面する。
c.親しい友人や恋人など横の関係の中で自己を探っていく。また、所属団体でリーダーの役割を担うことになるなど、人の世話をするという課題にも直面する時期である。
d.自由の中で自己決定することと同時に、学生の側から能動的に新しい生活・修学環境に慣れていくこと(オリエンテーション)が課題となる。生活上の居場所を見つけること、人間関係を築くこと、修学意欲を高めることにまつわる問題や悩みによって、高揚と落ち込みを体験しやすい。
e.大学生になっていく過程では入学前の生活を心理的に終わりにするという課題が含まれる。受験生や職業人としての自分、入学前の生活や人間関係に別れを告げることは、孤独や孤立、寂しさや抑うつを感じる契機にもなる。
f.生活上の変化が比較的ゆるやかな時期で、時間をかけて学生生活を展開し自分らしさを探求することが課題となる。一見マイナスの経験が自分らしい生活のペースを見いだす契機となることもあり、「あいまいさの中での深まり」と呼ばれる。

3 【800字】 ヨコ書 パソコン印字可

各種統計や事例(自分自身や周囲の学生の体験なども可とする)を示しながら学生生活の多様化の現状と特有の課題について指摘し、求められる学生相談・学生支援のあり方について論じなさい。【800字】

第2課題

⚠1は指定解答用紙をコピーし、解答を記入してしてください。
2は手書きまたはパソコンで作成してください。

解答用紙あり

第1設題

指定解答用紙  学生生活サイクルに関する以下のaからfの文章は、卒業期と大学院学生期のいずれについて説明したものであるかを分類し答えなさい。
卒業期(① 、② 、③ ) 大学院学生期(④ 、⑤ 、⑥ )
a.学問の受動的な消費者から能動的な生産者への転換要請、より濃密な縦横の人間関係への適応が求められる中で、学生生活への違和感、自分の能力への疑問、対人関係上の問題が起こる。
b.学生は、論文執筆や具体的な進路選択など現実生活上の課題を通して、これまでの学生生活を振り返り内面の整理を行うという「もう一つの卒業論文」に取り組むことがある。
c.進路決定は取り組んでいる最中にも、決定した後でも、不安や迷いを感じることがある。決定の過程を通じて親の価値観と自分の価値観のズレに直面することも多い。将来への準備という点で、選んだ進路だけでなく選ばなかった進路も大切な意味を持つ。
d.社会へ出る最後の時期であり、社会に着地することが課題となる。これまで先送りしてきた人生上の課題がこの時期に改めて模索されることもある。
e.学生が最終的に学生生活を終える時期であり、職業人としての自己を形成する時期である。
f.学生生活を終えて大学生としての自分と別れる時期であり、将来への準備をする時期である。

2 【1200字】  ヨコ書  パソコン印字可

学生生活サイクルの視点で自分自身の学生生活を振り返り、印象に残っているターニングポイントをひとつ以上取り上げて、その前後で自分自身がどのように変化したか、そのことが現在の自分にどのような影響を与えているかを論じなさい。【1200字】

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
学生生活サイクルとは 学生生活サイクルの概要を理解できる pp.i-11
入学期の相談と対応①:入学期とは 入学期の特徴を理解できる pp.13-14
入学期の相談と対応②:学業、進路 入学期における学業と進路の問題を理解できる pp.15-41
入学期の相談と対応③:対人関係、入学期のまとめ 入学期における対人関係の問題を理解し、入学期の要点を説明できる pp.41-56
中間期の相談と対応①:中間期とは 中間期の特徴を理解できる pp.57-59
中間期の相談と対応②:学業、進路 中間期における学業と進路の問題を理解できる pp.59-86
中間期の相談と対応③:対人関係、中間期のまとめ 中間期における対人関係の問題を理解し、中間期の要点を説明できる pp.86-101
学生生活の多様化①:編入生と社会人学生、周辺在籍者 編入生、社会人学生、非正課学生に特有の問題を理解できる 鶴田編(2001) pp.120-130 pp.168-179 (配布資料)
学生生活の多様化②:女子学生の問題、大学におけるカウンセリング、大学カウンセラー
の仕事
女子学生に特有の問題を理解できる。大学におけるカウンセリングおよびカウンセラーの機能を理解できる 鶴田編(2001) pp.98-108 pp.233-245 (配布資料)
卒業期の相談と対応①:卒業期とは 卒業期の特徴を理解できる pp.103-105
卒業期の相談と対応②:学業、進路 卒業期における学業と進路の問題を理解できる pp.105-131
卒業期の相談と対応③:対人関係、卒業期のまとめ 卒業期における対人関係の問題を理解し、卒業期の要点を説明できる pp.131-146
大学院学生期の相談と対応①:大学院学生期とは 大学院学生期の特徴を理解できる pp.147-148
大学院学生期の相談と対応②:学業、進路 大学院学生期における学業と進路の問題を理解できる pp.149-167
大学院学生期の相談と対応③:対人関係、大学院生期のまとめ 大学院学生期における対人関係の問題を理解し、大学院学生学期の要点を説明できる pp.167-179
試験
ふたつのレポート課題をふまえ、学生相談の視点や各学生期の特徴について基本的な理解を確認します(穴埋め/選択問題)。また、本講義で取り上げた視点・考え方を用いて受講生自身の学生生活を考察し、そこから見いだした自分自身と/あるいは大学コミュニティの課題や可能性について論じていただきます(論述問題)。