最終更新日:2024年5月17日

1年次入学生:1年 3年次編入学生:3年 短期大学部:-
心理・福祉学部 心理学科

P003

発達心理学Ⅱ(青年~老年)

青年期から老年期の発達過程を多角的な観点から学ぶ

単位条件

通信 2単位

教員

猿渡 知子

履修条件

なし

到達目標

人を生涯を通して発達変化する存在として理解し、その発達変化について科学的に捉えられるようになる。
本科目は心理学科のディプロマ・ポリシーに該当している。

学習成果

・発達心理学の基本的な理論や概念を理解することができる。
・青年期以降の発達の特徴について、生物・心理・社会的視点から多角的に捉えることができる。
・各発達段階における課題とその意味について理論的に考えることができる。

テキスト教材

無藤隆・子安増生編『発達心理学Ⅱ』(東京大学出版会)2013

参考図書

髙橋惠子・湯川良三・安藤寿康・秋山弘子編『発達科学入門[3]青年期~後期高齢期』(東京大学出版会)2012
水野里恵『公認心理師ベーシック講座 発達心理学』(講談社)2021

評価の要点

発達心理学の基本的な知識を身につけ、各発達段階の特徴を理解しているかについて評価する。

評価方法と採点基準

レポート課題及び科目終了試験。いずれも穴埋め式または選択式とし、60点以上を合格とする。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

・学習範囲を熟読し、参考書等も参照して、学ぶべき内容を正しく理解してください。
・他の科目の学習内容と関連する部分も多くあります。様々な知識を結びつけながら理論的にとらえていってください。

レポート課題

提出数 2

第1課題

解答用紙あり

第1設題

 青年期の身体的発達について、空欄に当てはまる言葉を答えなさい。同じ番号には同じ言葉が入ります。

思春期は、( ① )の分泌が活性化され、( ② )が出現して身体的な性差がはっきりしてくる。青年期は、この思春期を始まりとして20代半ばごろまでの、子どもから成人への移行期にあたる。

出生前に分化する生物的な性を( ③ )、出生後に分化する心理的・社会的な性を( ④ )という。( ③ )と( ④ )が合致することを、エリクソンの心理・社会的概念を表す用語を用いて( ⑤ )という。( ⑤ )は( ⑥ )的要因、社会文化的要因、主体の要因の複合物であり、( ② )の出現によって大きく進展する。

( ① )は脳の組織に影響を与え、それまでの回路の構造が変化する。とくに10代の若者では、脳の発達において、自己制御に関わる認知活動を引き起こす( ⑦ )と、感情の生起に重要な役割を果たす( ⑧ )の発達が不均衡な状態となり、危険な行動をとろうとしたり衝動を抑えにくい傾向がある。

 

 青年期の認知発達について、空欄に当てはまる言葉を答えなさい。同じ番号には同じ言葉が入ります。

ピアジェの認知発達理論においては、おおむね思春期が始まるころが( ① )期に入る時期にあたる。具体的操作期における論理的思考の方法は、具体的な個々の事例から仮説を立てる( ② )的思考であったが、( ① )期には仮説から推論して結論を導き出す( ③ )的思考を行うようになる。また、青年期には自分の思考過程を自覚しそれを制御する( ④ )の機能が急速に発達し、高度な情報処理が可能になる。

青年期には、ある時点における心理学的な未来および過去についての見解の総体である( ⑤ )が飛躍的に発達する。このことは自己認知やアイデンティティの発達に重要な関わりをもつ。自己認知に関しては、こうありたいと望む自己の方向性の表象である( ⑥ )が生じ、青年期から成人期にかけて最も高くなるとされる。実際の自己に対する表象である現実自己と( ⑥ )との乖離から、葛藤や不適応を生じやすい時期でもある。

 

 青年期の心理社会的発達について、空欄に当てはまる言葉を答えなさい。同じ番号には同じ言葉が入ります。②⑥は人名を答えること。

青年期において、親からの自立は中心的な発達課題の1つである。ホリングワースは、青年期に親の監督から離脱して独立した人間になろうとする心の動きを( ① )と名づけた。ブロスは、( ② )が乳幼児期の発達について提起した概念を援用して、青年期に親への依存から脱却し自立に向かうことを( ③ )と呼んだ。

エリクソンは、アイデンティティの獲得を青年後期の重要な心理-社会的課題とした。アイデンティティとは、自分が他者とは異なる独自の存在であるという( ④ )性と、過去から現在にわたって一貫しているという( ⑤ )性の感覚のことである。( ⑥ )はエリクソンの概念を用いて、( ⑦ )の有無、( ⑧ )の有無という2つの基準により4つのアイデンティティの状態を定義した。( ⑦ )とは職業やイデオロギーなど人生の重要な選択を決定するまでの迷いや模索の時期のこと、( ⑧ )とは選択した職業や信念に努力を傾注していることをさす。この2つによって区別される4つの状態を( ⑨ )という。

 

 中年期におけるさまざまな変化について、空欄に当てはまる言葉を答えなさい。同じ番号には同じ言葉が入ります。

 

1970年代半ば以降、中年期は従来言われていたように安定したものではなく、発達的にさまざまな問題をはらんだ時期であるという( ① )説が広く受け入れられるようになった。

中年期には性機能が低下しはじめ、性ホルモンの減少やホルモンのバランスの乱れによって( ② )とよばれる諸症状があらわれやすい。女性は卵巣機能が徐々に減退しておおむね45~55歳で( ③ )を迎える。また、体力が低下して糖尿病や高血圧などの( ④ )に罹患する率が上がる。心理的にはさまざまな喪失感により不安定となる場合があり、能力の限界を感じて突然無気力になる( ⑤ )や、子どもが自立した寂しさから抑うつ状態となる( ⑥ )といった問題が報告されている。

( ① )は、( ⑦ )を中核として、さまざまな次元で喪失や下降の変化が体験される構造的葛藤である。その過程で自分の生き方の( ⑧ )が行われ、より安定したアイデンティティが獲得されるプロセスは、中年期のアイデンティティの( ⑨ )とよばれている。

第2課題

解答用紙あり

第1設題

 成人期の発達課題について、空欄に当てはまる言葉を答えなさい。同じ番号には同じ言葉が入ります。

エリクソンの心理社会的発達理論によれば、成人期前期の発達課題は( ① )の獲得であり、そのためには青年期の( ② )の達成が前提となる。成人期前期には、具体的な人間関係のなかに自分を投入し、互いの( ② )を融合させ、共有しながら新たな生活の場を築いていくことが必要になり、成人期後期の発達課題である( ③ )へとつながっていく。( ③ )とは、家庭や職場など自身が属する共同体において次の世代の育成に貢献することである。

 

 中年期以降の発達について、空欄に当てはまる言葉を答えなさい。同じ番号には同じ言葉が入ります。

ユングはパーソナリティの生涯発達で中年期を重要視した。彼は40歳を太陽が頭上を通過するときとみなして( ① )とよび、ここから人生の後半期が始まるとした。人生前半期の発達は外的世界へ自己を適応させていくのに対して、人生後半期の発達は自己の内的欲求や本来の姿を見出し実現していくことによって達成されるとし、ユングはこれを( ② )の過程とよんだ。

生涯発達心理学という分野を開拓したバルテスは、生涯発達を( ③ )と( ④ )がダイナミックに( ⑤ )し進行する過程としてとらえた。( ③ )は適応能力の増大で望ましい変化、また、( ④ )は適応能力の減少で望まれない変化を意味し、成人期の後半は両者の比率が逆転する転換点とみなした。バルテスらは、中年期以降の( ④ )の増大への対処として( ⑥ )モデルを提唱している。このモデルを構成する3つの要素のうち、( ⑦ )は自らのエネルギーや時間を振り分ける目標を絞ること、( ⑧ )は目標達成のために今ある資源を効率よく配分すること、( ⑨ )は失ったものに対して新たな工夫をして補うことを意味する。

 

 老年期の認知機能について、空欄に当てはまる言葉を答えなさい。同じ番号には同じ言葉が入ります。異なる番号に同じ言葉が入ることもあります。

キャッテルは、知能が2つの主要な側面で構成されるという考え方を提唱した。その1つは貯えられた経験を生かす能力である( ① )、もう1つは新しいことがらの学習や新しい環境への適応のために必要な能力である( ② )である。このうち( ③ )は、老化や脳の器質的変化の影響を受けにくいとされている。

成人期以降の認知発達のポジティブな側面として、特定の領域において人並み外れた技能や能力のレベルに達するプロセスである( ④ )が注目されている。このプロセスには、十分に考えられ構造化された長期にわたる集中的な( ⑤ )が必要であり、成人期を通して発達しうる。また高度の能力に達したものは老年期まで維持されることが示されている。

バルテスらは、人生での不確実性を含む問題について良い判断をすることを( ⑥ )とよび、知性と人格の調和から生まれると指摘した。彼らは( ④ )が知恵を支える重要なものの一つであると考えている。エリクソンの心理社会的発達理論によれば、老年期の発達課題は( ⑦ )であり、その達成によって( ⑥ )という力(virtue)が得られるとする。

 

 認知症に関する以下の記述で、空欄に当てはまる言葉を答えなさい。同じ番号には同じ言葉が入ります。①には数字を記入すること。

老年期には認知症の有病率が高くなる。米国精神医学会による精神障害の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)によれば、認知症は、少なくとも( ① )つの認知領域(複雑性注意,遂行機能,学習および記憶,言語,知覚-運動,社会的認知)に障害があること、毎日の活動において認知欠損が( ② )を阻害していること、せん妄やその他の精神疾患が除外されることによって診断される。

認知症では、脳の後天的な障害により、いったん獲得された知能が持続的かつ比較的短期間のうちに低下し、日常生活に支障をきたすようになる。脳の障害から直接生み出される症状を( ③ )症状といい、これに心理的、状況的、身体的要因が加わって二次的に生成される症状を( ④ )症状という。( ④ )症状は( ⑤ )(行動・心理症状)ともいわれ、妄想、幻覚、抑うつ、徘徊、攻撃的言動などがあり、本人と介護者の( ⑥ )の低下を招くためこれらへの対処が重要である。( ⑤ )に対しては心理療法や環境調整などの( ⑦ )療法が優先され、認知症のケアはその人らしさを尊重する( ⑧ )ケアを基本とする。

 

 死に関する以下の記述で、空欄に当てはまる言葉を答えなさい。①④⑤は人名を答えること。

自らの死の受容に関して、( ① )が唱えた5段階説が広く知られている。このモデルはその後のさまざまなプロセスモデルや、近く死を迎えることが予想される人への医療やケアである( ② )に、大きな影響を与えてきた。

身近な人との死別に関して、( ③ )とは愛着や依存の対象を失ったときに生じる現実検討の心理的過程であり、フロイトによって提唱された。この概念がどのような段階を経るかについては、これまでにさまざまな考え方が示されている。このうち、( ④ )は悲嘆の過程に能動的に向き合う必要があるとして4段階の課題モデルを提唱し、( ⑤ )はショック、喪失の認識、引きこもり、癒やし、再生の5段階を提示した。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
青年期の発達① 青年期の発達の諸相を理解する 第1章1
(p.1~13)
青年期の発達② 青年期の他者との関係性や社会的文脈における発達を理解する 第1章2, 3
(p.13~27)
青年期の発達③ 青年期の問題行動と成人期への移行について理解する 第1章4, 5
(p.27~34)
青年期の発達④ 青年期の発達の特徴を諸側面から捉える 第1章5領域
(p.41~77)
成人期の発達① 成人期の発達の諸相を理解する 第2章1
(p.79~89)
成人期の発達② 成人期の他者との関係性や親という立場における発達を理解する 第2章2, 3
(p.89~96)
成人期の発達③ 職業への関与や中年期危機を通した発達について理解する 第2章4, 5
(p.96~104)
成人期の発達④ 成人期の発達の特徴を諸側面から捉える 第2章5領域
(p.106~141)
老年期の発達① 老年期の発達の諸相を理解する 第3章1
(p.143~148)
老年期の発達② 老年期における知能の発達変化について理解する 第3章2
(p.149~157)
老年期の発達③ 老年期における知能の意味について理解する 第3章3, 4
(p.158~166)
老年期の発達④ 老年期の発達の特徴を諸側面から捉える 第3章5領域
(p.170~205)
社会化と発達① 生活の場における発達の過程を理解する 第4章1~6
(p.207~230)
社会化と発達② 教育・保育の場やメディアが発達に与える影響を理解する 第4章7~10
(p.230~247)
社会化と発達③ 社会化の枠組みにおける発達の特徴を諸側面から捉える 第4章5領域
(p.250~285)
試験
発達心理学の基本的な知識を身につけ、各発達段階の特徴を理解しているかについて評価する。