最終更新日:2024年3月12日
U210
社会コミュニケーション概論
社会学からコミュニケーションを理解する単位条件
通信 2単位教員
履修条件
なし
到達目標
コミュニケーションとは何か。一応、次の4つに分けて考える。(1)送り手。自我、子ども・青年・壮年・老人、無徴者(男性・健常者・日本人・多数派)、権力者、マス・メディア。(2)受け手。目の前の相手。一定範囲の相手。マス・メディアからの一方的受け手、ロボット。(3)手段。言語・非言語。感覚(聴覚、視覚、触覚、臭覚)、身体・電話・ケータイ・外国人・障害者・識字障害者(ディスレクシア)への対応。(4)メッセージ(情報の内容など)。情報、感情。自己提示・演技、うそ、うわさ、儀礼、贈与・交換、恋愛・友愛・教育・ケア・信頼・秘密以外の事柄。そのうえで、自我、行為、集団、社会はコミュニケーションである、という視点から、これまでの社会学者の概念、理論を理解する。
学習成果
コミュニケーションとは何か、社会学のいくつかの視点から、説明することができる。代表的な社会学者の視点の例をあげる。G・H・ミードの「自我論」。シュッツの「共同主観性の場としての日常」ゴッフマンの「自己呈示の劇化」。ベイトソン「ダブル・バインド」。リースマンの「敵対的協力」。ベッカーの「ラベリング理論」。ハーバーマスの「コミュニケーション的理性」。学生はこれらの原典、あるいは参考書を読んで勉強してほしい。
テキスト教材
なし(参考書のうち、1.2はテキストに準ずるものとしてどちらかを読んで理解してもらいたい)
参考図書
1.長谷正人『コミュニケーションの社会学』(有斐閣)
2.作田啓一・井上俊編『命題コレクション 社会学』(筑摩書房)
3.『公務員試験ウォーク問過去問題集8社会学』(東京リーガルマインド発行)
4.『社会学文献辞典』(弘文堂)
評価の要点
本科目のキーワードは、「社会」「コミュニケーション」である。評価は、第1・2設題とも、コミュニケーションに結び付けて要約と意見が述べられているか、によって行う。
評価方法と採点基準
レポート合格後の科目終了試験で評価する。
採点基準・配分は、要約が適切か(40%)、意見があるか(40%)、表現・形式が適切か(20%)で評価する。レポート冒頭で、要約する文献と、キーワードを3つ上げること(形式として採点)。要約と意見を明確に分けること、2000字のうち、要約を5割以上、意見を2割以上書くこと。適切な段落をつけること、漢字の間違いなどをしないことに留意してもらいたい。
履修上の注意事項や学習上のアドバイス
「コミュニケーション」の概念を広くとらえ、社会学の「常識をひっくり返す視点」に触れてほしい。学生は、課題で選んだ文献のほか、あげられた文献を参考にすることで、より深く学習できるだろう。
レポート課題
提出数 2第1課題
第1設題
次のいずれかの文献を要約し、意見を述べよ。(☆の文献の要約は、その中の100ページ以上であればよい。なお、出版年は原典ではなく、最近に文庫化などで出版された年を示す。)レポート全体の文字数は、1500字以上、2000字以内とする。レポート冒頭に、使用した文献の著者『タイトル』、およびキーワードを2語以上記せ(ない場合は大幅な減点とする)。
1.☆G・H・ミード『自我の社会性』
2.G・H・ミード『社会的自我』恒星社厚生閣
3.☆シュッツ『多元的現実の構成』
4.☆ゴッフマン『行為と演技 日常世界における自己呈示』
5.大坊郁夫『しぐさのコミュニケーション─人は親しみをどう伝えあうか』、サイエンス社、1998
6.デズモンド・モリス『マン・ウォッチング』
7.デズモンド・モリス『ふれあい─愛のコミュニケーション』、平凡社
8.☆オング『声の文化と文字の文化』藤原書店
9.正高信男『ケータイを持ったサル─「人間らしさ」の崩壊』、中公新書、2003
10.正高信男『コミュ障 動物性を失った人類 正しく理解し能力を引き出す』、ブルーバックス新書、2015
11.正高信男『考えないヒト─ケータイ依存で退化した日本人』、中公新書、2005
12.☆マクルーハン『メディア論─人間の拡張の諸相』、みすず、1987
13.マクルーハン、E・カーペンター他『マクルーハン理論─電子メディアの可能性』、平凡社ライブラリー、2003
14.☆リップマン『世論』(上・下)、岩波書店、1987
15.☆ブーアスティン『幻影(イメージ)の時代』、東京創元社、1964
19.岡田尊司『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』、光文社新書、2011
20.野村直樹『やさしいベイトソン─コミュニケーション理論を学ぼう!』、金剛出版、2008
21.マーシャル マクルーハン『メディアはマッサージである』、河出文庫、2015
22.ハワード S.ベッカー『完訳 アウトサイダーズ』、現代人文者、2011
23.☆ポール・E.ウィリス『ハマータウンの野郎ども』、ちくま学芸文庫、1996
24.☆佐藤郁哉『暴走族のエスノグラフィー─モードの叛乱と文化の呪縛』新曜社、1984
16.☆ベイトソン『精神と自然』、新思索社、2000
17.☆ベイトソン『精神の生態学』、新思索社、2006
18.岡田尊司『境界性パーソナリティ障害』、幻冬舎新書、2009
第2課題
第1設題
次のいずれかの文献を要約し、意見を述べよ。(☆の文献の要約は、その中の100ページ以上であればよい。なお、出版年は原典ではなく、最近に文庫化などで出版された年を示す。)レポート全体の文字数は、1500字以上、2000字以内とする。レポート冒頭に、使用した文献の著者『タイトル』、およびキーワードを2語以上を記せ(ない場合は大幅な減点とする)。
25.☆A.R.ホックシールド『管理される心─感情が商品になるとき』、世界思想社、2000
26.☆ジョナサン・H・ターナー『感情の社会学理論─社会学再考』、明石書店、2013
27.☆岡原正幸『感情資本主義に生まれて─感情と身体の新たな地平を模索する』、慶應義塾大学出版会、2013
28.☆岡原正幸・安川一・山田昌弘『感情の社会学─エモーション・コンシャスな時代』、世界思想社、1997
29.武井麻子『ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか─感情労働の時代』、大和書房、2006
30.武井麻子『感情と看護─人とのかかわりを職業とすることの意味』、医学書院、2001
31. 戸田有一・高橋真由美・上月智晴『保育における感情労働─保育者の専門性を考える視点として』、北大路書房、2011(座談形式)
32.土井隆義『友だち地獄─「空気を読む」世代のサバイバ』、ちくま新書、2008
33.土井隆義『「個性」を煽られる子どもたち─親密圏の変容を考える』、岩波ブックレット、2004
34.土井隆義『つながりを煽られる子どもたち─ネット依存といじめ問題を考える』、岩波ブックレット
35.☆ジンメル『秘密の社会学』、世界思想社、1979(190ページ)
36.☆正村俊之『秘密と恥─日本社会のコミュニケーション構造』勁草書房、1995(390ページ)
37.☆ユルゲン ハーバーマス『公共性の構造転換』、未来社、1994
38.齋藤純一『公共性』、岩波書店、2000(120ページ)
39.☆ハンナ アレント『人間の条件』、ちくま学芸文庫、1994(549ページ)
40.仲正昌樹『今こそアーレントを読み直す』、講談社現代新書、2009
41.山田順『本当は怖いソーシャルメディア』、小学館101新書、2012
42.デイミアン・トンプソン『依存症ビジネス─「廃人」製造社会の真実』、ダイヤモンド社、2014
43.☆中野勉『ソーシャル・ネットワークと組織のダイナミクス─共感のマネジメント』有斐閣、2011(322ページ)
44.高野浩樹『知らないではすまされない! わが子を守る法律知識─SNSと未成年』ベストブック、2015
45.香山リカ『ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか』、朝日新書、2014
46.☆ダナ・ボイド『つながりっぱなしの日常を生きる:ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの』草思社、2015(384ページ)
47.品川裕香『怠けてなんかない! ディスレクシア~読む書く記憶するのが困難なLDの子どもたち』岩崎書店、2003
48.小菅宏『僕は、字が読めない。 読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年』、集英社、2009
49.☆竹中均『自閉症の社会学─もう一つのコミュニケーション論』世界思想社、2008
50.全国特別支援学校知的障害教育校長会『コミュニケーション支援とバリアフリー』ジアース教育新社、2005
51.斉藤くるみ『少数言語としての手話』東京大学出版会、2007
52.金澤貴之『手話の社会学─教育現場への手話導入における当事者性をめぐって』生活書院、 2013
53.☆かどやひでのり/あべやすし編『識字の社会言語学』生活書院、2010
54.貴戸理恵『「コミュニケーション能力がない」と悩むまえに─生きづらさを考える』、岩波ブックレット、2011
55.☆ましこ・ひでのり編『ことば/権力/差別─言語権からみた情報弱者の解放』、三元社、2012(340ページ)
56.石黒浩『ロボットとは何か─人の心を映す鏡』、講談社現代新書、2009
57.西垣通『集合知とは何か─ネット時代の「知」のゆくえ』、中公新書、2013
備考・補足
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授業回数別教育内容 | 身につく資質・能力 | 学習範囲 (予習・復習を含む) |
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(1)送り手1 自我は、他者との関係の中、コミュニケーションの中で成立する現象である。 これをG・H・ミードの「自我論」から理解する。 |
左記の知識 | 参考書2 G・H・ ミード「自我の社会 性」 | |
(3)手段1 他者とのコミュニケーションは記号・言語によって行われる。それでは記号・言語とは何か。シュッツの「多元的現実の構成」から理解する | 左記の知識 | 参考書2 シュッツ 「多元的現実の構成」 | |
(4)メッセージ1 しぐさ・記号・言語を通じての他者とのコミュニケーションは、演技の要素を含む。その時社会は一種の劇場である。ゴッフマンの「日常世界における自己呈示」から理解する。 | 左記の知識 | 参考書2 ゴッフマン「自己呈示のドラマツルギー」 | |
(3)手段2 しぐさなどの「非言語的コミュニケーション」について、ハーローの「子ザルの実験」、モリスの「ふれあい」から理解する。 | 左記の知識 | モリスの「ふれあい」 | |
(3)手段3 コミュニケーションの道具としての感覚器官、その歴史的変遷について、オング「声の文化と文字の文化」から理解する。 | 左記の知識 | 左記の知識 オング「声の文化と文字の文化」 | |
(3)手段4 現代のコミュニケーションの道具としてのケータイについて、その特徴、問題点について、正高正男『ケータイをもったサル』、鈴木みどり『ケータイ不安』から理解する。 | 左記の知識 | 正高正男『ケータイをもったサル』 | |
(3)手段5 マス・コミュニケーションについて、マクルーハン『人間拡張の原理』、リップマン『世論』、ブーアスティン『幻影(イメージ)の時代』から理解する。 | 左記の知識 | マクルーハン『人間拡張の原理』 | |
(2)受け手1 権力関係の中でのコミュニケーションを、受け手に着目して、ベイトソン「ダブル・バインド」から理解する。 | 左記の知識 | 参考書2 ベイトソン「ダブル・バイン ド」 | |
(2)受け手2 有徴者としての障害者がコミュニケーション関係の中でどう捉えられているか、ゴッフマン『スティグマの社会学』、ベッカー「アウトサイダー」から理解する。 | 左記の知識 | 参考書2 ベッカー 「ラベリングと逸脱」 | |
(4)メッセージ2 コミュニケーションでは情報ばかりでなく、感情もやりとりする。 これを『感情の社会学』から理解する。 |
左記 | ||
(4)メッセージ3 コミュケーションでは、人は注意深く、他者と協力したり敵対したり傷つけたりする。これをリースマンの「敵対的協力」、土井隆義「優しい関係」から理解する。 | 参考書2 リースマン「高度産業社会と他人指向型」 | ||
(4)メッセージ4 コミュニケーションで他者を絶対的に知ることはできるのか、望ましいことなのか。むしろ、一定の秘密を両者が了解することでうまくいくのではないか。 ジンメル『社会学』の中から考察する。 |
ジンメル『秘密の社会学』 | ||
(3)手段6+(2)受け手3 コミュニケーション・ツールとしてのSNSは受け手を流動化させた。その特徴、問題点について考察する。 | 左記 | ||
(3)手段7+(2)受け手4+メッセージ5 健常者が送り手として、識字障害者にメッセージを送ろうとするとき、対等性はあるか、確実に伝わるか、また、ロボットを相手にしてのコミュニケーションは可能か。これらをディスコミュニケーションの観点から考察する。 | 左記 | ||
(1)送り手3+α コミュニケーションは社会に何をもたらすのか。18世紀、市民がコミュニケーションを通して構築した公共性について、ハーバーマスから理解する。 | ハーバーマス「公共性の構造転換」 | ||
試験 小論文による。キーワードを示すので、それを必ず使って論述すること。 |