最終更新日:2024年2月14日
U086
古典語の研究
構文を意識した古典文の読解法を探る単位条件
通信 2単位教員
履修条件
なし
到達目標
教養のためばかりでなく、教育現場に立とうとする方も含めて、古典文を原文で読み解くために、表現形式や慣用連語などに注目しながら、それらを活用する視点と捉え方を修得するとともに、実践力を養う。
学習成果
平安時代の和文を中心とした作品の注釈書に施された頭注・脚注などを参考にしつつ、テキストによって培った実力により、語学的に妥当な読解を導くことができる。
テキスト教材
中村幸弘・碁石雅利『日本古典 文・和歌・文章の構造』(新典社)2012
参考図書
中村幸弘・碁石雅利『古典語の構文』(おうふう)2000
佐伯梅友『古典読解のための文法 上下』(三省堂)1988
評価の要点
古典文読解の実力が養成されていなければ意味がないため、テキストの内容を単に記憶していることを問う課題ではない。学習内容を原文に適用して実践する力がどれほど蓄積されているかという点を評価の観点とする。
評価方法と採点基準
レポート合格後の科目終了試験で評価する。
課題は、テキストの内容を略述するようなものではない。必ず原文を提示し、テキストに沿って構文形式及び慣用連語を発見しながら、その解法を示すことに重点を置く。従って、形式の識別が的確であるか、その形式の解法へ至る道筋が正当な手続きを踏んでいるかどうか、文型と意味との連合に誤りはないか、などの観点から採点を行う。
履修上の注意事項や学習上のアドバイス
テキストには、個々の事象に関する解説はあるが、練習問題は付されていない。自身で原文に当たり、実践することがぜひとも必要である。古典文の読解には、感覚的な思い込みは禁物。あくまで客観的な文型という形式から入り、ある形式に特定の意味が連合するというセットをどれだけ身に付けているかが、実力となって反映すると考えてほしい。注釈書類の現代語訳を鵜呑みにせず、この表現がなぜそのような訳出になるか、語学上の観点から再検討することが重要である。
レポート課題
提出数 2第1課題
第1設題
『枕草子』「清涼殿のうしとらのすみの」の本文中、以下に示す個所から準体法及び同格の構文すべてを抜き出し、その解法を示しなさい。
・小学館『新日本古典文学全集』P49、P51③行目〜⑩行目、P53④行目〜⑭行目
第2課題
第1設題
『源氏物語』薄雲巻「いかに罪や得らむとおぼす」について、『新日本古典文学大系 源氏物語 二』(岩波書店)P222と『新日本古典文学全集 源氏物語 2』(小学館)P434、それぞれの解釈を比較し、どちらが適切な処置をしているか判定しなさい。その理由を表現形式の面から明確に説明すること。
備考・補足
← 表が横スクロールします →
授業回数別教育内容 | 身につく資質・能力 | 学習範囲 (予習・復習を含む) |
|
文の成分に分けて文の構造を捉える… 述部を中心として、そこに直接関係する成分に区切り、図示する方法を習得する。 |
文構造の直覚的把握 | テキスト P29〜P40 | |
係り結びと文の成分との関係について整理する… 係り結びを構成する係助詞の用いられる位置を文の成分という単位から把握する。 |
係り結び現象の構文的説明 | P112〜P117 | |
格助詞非表出の構文…古典語の基本構文である非表出の格関係を読み取る方法を習得する。 | 補充成分と述語との文法的関係の把握 | P118〜P120 | |
準体法の構文…準体法を理解し、述語との意味的・文法的関係を構成する方法を習得する。 | 意味的・文法的関係の補填 | P120〜P122 | |
同格の構文…同格を構成する形式を整理し、それぞれに共通する解法を習得する。 | 準体法の応用 | P123〜P124 | |
知覚内容を表す構文…形容詞・形容動詞の連用形が知覚内容を表す形式的特徴を学び、その解法を習得する。 | 活用形の用法に関わる視点 | P125〜P126 | |
評価を表す構文…形容詞・形容動詞の連用形が表す評価とは何かを理解し、その文型の特徴を整理する。 | 活用形の用法に関わる視点 | P126〜P127 | |
挿入の構文…一文中に挿入される文あるいは句の形式的特徴を整理し、その識別法を習得する。 | 文や句の形式把握 | P128〜P131 | |
対偶中止の構文…対偶する句の特徴及び共通因数部分に位置する表現を整理し、その解法を習得する。 | 形式的処理の徹底 | P131〜P135 | |
連体止めの構文…連体形による文終止の形式的特徴とその解法を習得する。 | 形式的処理の徹底 | P140〜P141 | |
かかり受け交錯の構文…要素間のかかり受けが交錯する構文について、その形式的特徴を把握する。 | かかり受け関係の把握 | P141〜P142 | |
疑いと問いの表現…係助詞「や」「か」による疑いと問いの表現形式について、その特徴と意味との連合を理解する。 | 文型と意味とを連合する視点 | P167〜P171 | |
慣用連語「…こそあれ」「…だにあり」「…だにあるに(を)」…補助動詞「あり」を補完する意味を構文形式から推定する方法を習得する。 | 意味的推論 | P186〜P188 | |
慣用連語「さるべき」… 「さる」の指示語における特殊な性質を把握し、内容を文中から探る方法を習得する。 |
意味的推論 | P195〜P197 | |
慣用連語「…もぞ」「…もこそ」…「もぞ」「もこそ」の構成する文が表す意味的傾向を把握し、訳出に反映する。 | 文型と意味とを連合する視点 | P204〜P206 | |
試験 原文を読み取り、上記各項目の学習内容を応用しながら、その解法を示す形式とする。具体例に即して、その解法を文型と意味との連合という視点から解説することを求める。 |