最終更新日:2024年9月7日
P085
精神疾患とその治療Ⅱ
精神障害について学び、理解を深める。単位条件
通信 2単位教員
到達目標
誰でもなりうるメンタルトラブルからなかなかとらえがたい精神疾患まで、さまざまなこころの不調のあらわれかたを理解できるようになる。
ひとは身体的、心理的、社会的、霊的存在であり、こころの不調には、それぞれの要因が複雑に関わることを理解できるようになる。
精神障害者の苦痛を理解しながら、セルフケアや身近な不調者へのサポートが考えられるようになることを目指す。
学習成果
(1)精神障害と身体的な疾患・障害との違いを知り、こころの健康や不調のあらわれかたを理解できる。
(2)精神医学的なこころのはたらき(精神機能)のとらえ方を知り、精神症状や診断法について理解できる。
(3) 精神障害の治療について、その目的と方法を知り、各種治療法の特徴を理解できる。また、セルフケアや身近な不調者へのサポートを考えることができる。
(4)さまざまな精神障害の特徴、主な症状、経過、治療について知り、精神障害者の苦痛や困難について理解しようという姿勢・態度が身につく。
テキスト教材
渡辺雅幸『専門医がやさしく語るはじめての精神医学』(中山書店)
参考図書
山下格『精神医学ハンドブックー医学・保健・福祉の基礎知識』(日本評論社)
上島国利他編『知っておきたい精神医学の基礎知識』(誠信書房)
評価の要点
(1) 精神科医療の歴史、心理現象の生物学的基礎、精神障害の定義と分類、精神科的面接・検査、精神症状と状態像、精神科の治療法、法と精神医学といった精神医学的基礎知識の要点を説明できる。
(2)精神医学の鍵となる概念や症状等をあらわす用語を正しく理解できる。
(3)主な精神障害の特徴、症状、経過、治療などについて説明できる。
評価方法と採点基準
レポートが合格後、科目終了試験を行い評価とする。
レポートは、評価の要点にある各項目を確認するための選択問題の解答によって評価する。
履修上の注意事項や学習上のアドバイス
レポート課題の解答の前に必ずテキストを通読し、専門用語を調べたり他のテキスト的な本を読み比べたりして学ぶようにしてください。なお、2013年米国精神医学会の精神障害新基準策定に伴い、2014年日本精神神経学会が病名の新指針を公表しましたが、テキストはまだ新病名に対応していないため、レポート課題には新旧併記していますので注意してください。
レポート課題
提出数 2第1課題
第1設題
(各論1:精神症状と特徴)
1.次の精神障害と特徴に関する記述の中から、誤っているものを一つ選びなさい。
a.強いストレスにより無言無動になることを解離性昏迷といい、意識障害ではないため状況を記憶していることがある。
b.心身症では、器質的ないし機能的な身体症状が認められる。
c.適応障害は心的外傷後ストレス障害と異なり、いかなる程度のストレスでも起こりうる。
d.神経症性障害は性格要因の他、環境要因も関与している。
e.神経症の発症をフロイトはヒポコンドリー基調という素質的なものと精神交互作用で説明している。
2.次の認知症と特徴に関する記述の中から、誤っているものを一つ選びなさい。
a.認知症は記憶障害で発症することが多く、進行すると寝たきりとなり死亡する。
b.発達の障害に基づく知的障害も認知症に含まれる。
c.脳血管性認知症において、感情失禁が認められる。
d.認知症の記憶障害は健常高齢者の物忘れとは異なる。
e.ピック病は記憶障害に先立ち人格変化や行動異常が目立つことがある。
3.次の統合失調症と症状に関する記述の中から、誤っているものを一つ選びなさい。
a.思考内容の障害で、連合弛緩といわれる症状を認めることが多い。
b.大半は20歳前後に発症して慢性的に経過するが予後や生活活動への影響はさまざまである。
c.統合失調症の急性期では、急激な幻覚妄想状態や精神運動興奮、昏迷が認められることが多い。
d.特殊な感覚を生じる体感幻覚が出現することがある。
e.原則として共通する特徴的な身体症状は認められない。
4.次の気分障害と特徴に関する記述の中から、正しいものを一つ選びなさい。
a.うつ病や躁うつ病には原則的に身体症状はみられない。
b.うつ状態のみで経過するものとうつ状態と躁状態を繰り返すものがあり、躁状態のみ反復するものは少ない。
c.うつ病では不眠、躁病では過眠が認められる。
d.意欲低下や興味喪失と、怠惰を区別して自覚できる。
e.絶望して自殺に至る場合、その気持ちを口に出すことは極めて少ない。
5.次の精神障害と特徴に関する記述の中から、正しいものを一つ選びなさい。
a.物質関連障害では、長期間断酒や断薬をすることによりフラッシュバックは生じなくなる。
b.振戦せん妄、リープマン現象はアルコール依存症(アルコール使用障害)の離脱状態で認められる。
c.長期間のアルコール大量摂取にて認知症になることはない。
d.使用をやめると不快症状が現れるため薬物使用をやめられない状態を、精神依存という。
e.大麻は合法な国もあり長期使用でも安全な薬物である。
6.次の統合失調症の病型に関する組み合わせの中から誤っているものを一つ選びなさい。
a.妄想型―幻覚、妄想が目立つ
b.破瓜型(解体型)―発症年齢が比較的低い
c.緊張型―昏迷という意識障害を起こすこともある
d.破瓜型(解体型)―幻覚や妄想があっても目立たない
e.緊張型―症状は激しいが比較的急速におさまる
7.次の小児期にみられる精神障害とその特徴に関する組み合わせの中から誤っているものを一つ選びなさい。
a.レット症候群―音声チック
b.多動性障害―衝動性
c.分離不安障害―悪夢
d.自閉スペクトラム症―限局的な関心や活動
e.選択性緘黙―正常知能
8.次のAからDまでの記述のうち、正しいものの組み合わせをa〜eの中から一つ選びなさい。
A.ピック病では記銘力障害に先行して性格変化や言語機能障害が目立つことはない。
B.パニック発作はある特別な状況でのみ反復して生じるため、患者は発作を予見し回避しようとする。
C.境界型パーソナリティ障害は家庭や学校でのストレスが原因で発症する。
D.統合失調症は緩徐に発症するタイプのほうが、一般的に予後がよくない。
a.A−B b.A−C c.A−D d.B−C e.C−D
第2課題
第1設題
(各論2:治療と援助)
1.次の治療に関する記述の中から、誤っているものを一つ選びなさい。
a.気分安定薬は躁うつ病の治療に用いる。
b.広場恐怖を起こすような状況への対処として認知行動療法を行う。
c.うつ病の再発予防に認知療法を行うことがある。
d.強迫性障害の洗浄強迫には行動療法が有効で薬物療法は無効である。
e.心身症の治療には、原則身体的治療が不可欠である。
2.次の治療に関する記述の中から、誤っているものを一つ選びなさい。
a.神経性無食欲症(神経性やせ症)の無月経は体重が回復してもすぐに改善しないことがある。
b.自律訓練法はストレスによる心身の緊張緩和に用いられる。
c.心療内科と神経内科ではほぼ同じ疾患の治療を扱う。
d.ストレス性の高血圧症や頭痛では抗不安薬を用いることがある。
e.コンサルテーション・リエゾン精神科は、精神科が身体疾患を扱う診療科と連携を取り治療の相談を行っていくことである。
3.次の統合失調症の治療に関する記述の中から、誤っているものを一つ選びなさい。
a.患者は病識がないため医療保護入院で治療を行う。
b.症状が改善しても長期間継続して服薬することが多い。
c.幻覚妄想に影響され自殺することがある。
d.近年はアドヒアランスを重視して治療薬が選択されている。
e.リハビリテーションとしてデイケア、ナイトケアを利用することがある。
4.次の気分障害の治療に関する記述の中から、正しいものを一つ選びなさい。
a.発症には必ず誘因となるストレスやライフイベントがあるので、それによって治療方針を決定する。
b.躁状態ではけんかや浪費などのトラブルがきっかけで家族が受診させることが少なくない。
c.気分障害は統合失調症と異なり、病識がある。
d.高齢者のうつ病は認知症と明確に区別できる。
e.趣味や旅行などの気分転換は治療初期には有効である。
5.次の治療に関する記述の中から、正しいものを一つ選びなさい。
a.断酒会は必ず匿名でミーティングを行うことになっている。
b. アルコール依存(アルコール使用障害)の入院治療では離脱を防ぐため、徐々に飲酒を減らしたり点滴でアルコール血中濃度を保
持したりする。
c.覚醒剤依存(アンフェタミン使用障害)のフラッシュバックには電気けいれん療法などのショック治療が有効である。
d.断酒後に、抗酒薬を用いた行動療法を行うことがある。
e.アルコール精神病性障害の幻覚には原則的に薬物療法を行う。
6. 次の精神障害と発症や再発・進行の予防に関する組み合わせの中から誤っているものを一つ選びなさい。
a.注意欠陥多動性障害―中枢刺激薬
b.統合失調症―集団精神療法
c.フェニルケトン尿症の知的障害―低フェニルケトン食
d.脳血管性認知症―生活習慣病治療
e.恐怖症―暴露療法
7.次の薬物と副作用に関する組み合わせの中から誤っているものを一つ選びなさい。
a.三環系抗うつ薬―便秘症
b.抗精神病薬―遅発性ジスキネジア
c.抗不安薬―筋弛緩作用
d.睡眠薬―悪性症候群
e.抗てんかん薬―催奇形性
8.次の治療や援助に関するAからDまでの記述のうち、正しいものの組み合わせをa〜eの中から一つ選びなさい。
A.精神保健指定医は患者の人権を保護しつつ精神障害治療のための強制的な入院や行動制限の判断を行う。
B.精神保健福祉士は精神障害者の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導等を行う。
C.包括的地域生活支援プログラム(ACT)は精神障害者の社会復帰のための専門施設で行われる。
D.心理教育は患者が心理学を学ぶことで、家庭環境でのストレス対処能力の向上を図り再発予防を目指す。
a.A−B b.A−C c.A−D d.B−C e.C−D
備考・補足
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授業回数別教育内容 | 身につく資質・能力 | 学習範囲 (予習・復習を含む) |
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精神科医療の歴史 内容:精神科医療の歴史を知る(日本の歴史、西洋の歴史など)ことで、自分や社会と精神障害とのあり方を考える。 |
精神科医療と社会のこれからを身近なこととして理解できる。 |
第1章 Ⅰ.精神科 医療の歴史 |
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心理現象の生物学的基礎 内容:心理現象の生物学的基礎を知る(脳および神経の生理・解剖など)ことで、脳とこころとの関係を理解する。 |
脳とこころとの関係が理解できる。 | 第1章 Ⅱ.心理現 象の生物学的基礎 |
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精神障害の定義と分類 内容:精神障害の定義と分類を知る(精神障害の成因と分類など)ことで現代における精神障害の原因と診断名に関する考え方を理解する。 |
精神障害の原因と診断名に関する考え方を理解できる。 |
第1章 Ⅲ.精神障 害の定義と分類 |
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精神科的面接・検査 内容:精神科的面接・検査を知る(面接法と診断基準、身体検査と心理検査など)ことで、精神科診断法の特徴を理解する。 |
精神科診断法の特徴を理解できる。 |
第1章 Ⅳ.精神科 的面接・検査 |
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精神症状と状態像 内容:意識の障害、知覚の障害(幻覚)、思考の障害、記憶の障害、知能の障害(認知症、精神遅滞など)、感情の障害、意欲の障害、自我意識の障害などが記載されている部分を拾い読みし、精神症状をあらわす用語を確認する。 |
能力:精神症状のあらわれかたの概要を理解できる。 | 第2章 精神科の病 気とその症状 |
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薬物療法と身体的治療法 内容:薬物療法と身体的治療法の目的、効果、副作用などの特徴について知り、現在の精神科治療における用いられかたを理解する。 |
現在の薬物療法と身体的治療法の特徴について理解できる。 | 第3章 Ⅰ.薬物療 法と身体的治療法 |
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精神(心理)療法 内容:精神(心理)療法の目的や各種療法の特徴について知り、現在の精神科治療における用いられかたを理解する。 |
各種精神(心理)療法の特徴について理解できる。 | 第3章 Ⅱ. 精神 (心理)療法 |
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精神科リハビリテーション、社会療法と生活療法 内容:精神科リハビリテーション、社会療法と生活療法の目的や特徴について知り、現在の精神科治療における用いられかたを理解する。 |
各種精神科リハビリテーションの特徴について理解できる。 | 第3章 Ⅲ.精神科リハビリテーション、社会療法と生活 療法 |
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法と精神医学 内容:刑法と精神医学、成年後見制度、精神保健福祉法について知り、精神障害者の人権や責任能力についての現在の考え方を理解する。 |
精神障害者の人権や責任能力についての現状を理解できる。 | 第3章 Ⅳ.法と精 神医学 |
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病跡学 内容:病跡学を知り、精神障害の創造性への影響について理解する。 |
精神障害の創造性への影響について理解できる。 | 第3章 Ⅴ.病跡学 |
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神経症とストレス関連障害 内容:神経症とストレス関連障害の症状や治療を理解し、心因性精神障害について理解を深める。 |
さまざまな心因性精神障害の特徴について理解できる。 | 第2章 Ⅰ.神経症とストレス関連障害 |
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心身症 内容:心身症の概念、症状や治療を理解し、ストレスについて理解を深める。 |
心身症の概念、ストレスについて理解できる。 | 第2章 Ⅱ.心身症 |
|
統合失調症 内容:統合失調症の症状を理解し、内因性精神障害について理解を深める。 |
統合失調症の症状や経過を理解できる。 |
第2章 Ⅲ.統合失 調症 |
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統合失調症 内容:統合失調症の経過や治療を理解し、精神障害者の社会復帰について知る。 |
統合失調症患者の治療、生活支援を理解できる。 | 第2章 Ⅲ.統合失 調症 |
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気分障害 内容:気分障害の症状について理解し、社会状況(ストレス、自殺など)と健康についても理解を深める。 |
気分障害の症状や経過を理解できる。 | 第2章 Ⅳ.気分障 害 |
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気分障害 内容:気分障害の経過や治療を理解し、精神障害者の社会復帰についても理解を深める。 |
気分障害患者の治療、生活支援を理解できる。 | 第2章 Ⅳ.気分障 害 |
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器質性精神障害 内容:器質性精神障害の症状や治療を理解し、外因性精神障害について理解を深める。 |
さまざまな器質性精神障害の特徴について理解できる。 | 第2章 Ⅴ.外因性精神障害、VI.器質 性精神障害 |
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症状性精神障害 内容:症状性精神障害の症状や治療を理解し、コンサルテーションリエゾン精神科につい て知る。 |
さまざまな症状性精神障害の特徴について理解できる。 | 第2章 Ⅶ.症状性 精神障害 |
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物質関連障害、物質依存症 内容:物質関連障害、物質依存症の症状や治療を理解し、アルコールや薬物の影響につい て知る。 |
さまざまな物質関連障害の特徴について理解できる。 | 第2章 Ⅷ.物質関 連障害、物質依存症 |
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てんかん 内容:てんかんについて、その特徴を知る。 |
てんかんの特徴について理解できる。 | 第2章 Ⅸ.てんか ん |
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老年期精神障害 内容:老年期精神障害について、その特徴を知る。 |
老年期精神障害の特徴について理解できる。 | 第2章 Ⅹ.老年期 精神障害 |
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児童・青年期の精神障害、精神遅滞 内容:児童・青年期の精神障害、精神遅滞について、その特徴を知る。 |
児童・青年期の精神障害、精神遅滞の特徴について理解できる。 | 第2章 Ⅺ.児童・ 青年期の精神障害、 Ⅻ.精神遅滞 |
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パーソナリティ(人格)障害 内容:パーソナリティ(人格)障害について概念を理解し、その特徴を知る。 |
パーソナリティ(人格)障害の特徴について理解できる。 | 第2章 ⅩⅢ.パー ソナリティ(人格) 障害 |
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その他の精神障害 内容:その他の精神障害(睡眠障害など)について、その特徴を知る。 |
その他の精神障害(睡眠障害など)の特徴について理解できる。 | 第2章 ⅩⅣ.その他 の精神障害 |
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精神医学概論Ⅰ 内容:精神医学の鍵となる概念や用語について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。 |
精神医学の鍵となる概念や用語等について深く理解できる。 | スクーリングにて資 料を配布、第1章、 第2章 | |
精神医学概論Ⅱ 内容:精神医学の鍵となる概念や用語について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。 |
精神医学の鍵となる概念や用語等について深く理解できる。 | スクーリングにて資 料を配布、第1章、 第2章 | |
精神医学概論Ⅲ 内容:精神医学の鍵となる概念や用語について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。 |
精神医学の鍵となる概念や用語等について深く理解できる。 | スクーリングにて資 料を配布、第1章、 第2章 | |
精神医学各論Ⅰ 内容:いわゆる外因性の精神障害について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。 |
外因性の精神障害について深く理解できる。 | 第2章 | |
精神医学各論Ⅱ 内容:いわゆる内因性の精神障害について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。 |
内因性の精神障害について深く理解できる。 | 第2章 | |
精神医学各論Ⅲ 内容:いわゆる心因性の精神障害について、テキストですでに自己学習していることを前提にまとめとして概説する。 |
心因性の精神障害について深く理解でき る。 | 第2章 | |
試験 通信レポート(選択問題)、面接授業(スクーリング)で行う試験(記述問題)によって総合的な理解を確認する。 |