最終更新日:2024年3月12日

1年次入学生:2年 3年次編入学生:3年 短期大学部:-
文学部 文学科

U095

日本古典文学講読Ⅱ

原文から読み解く和泉式部日記

単位条件

通信 2単位

教員

松本 麻子

履修条件

なし

到達目標

日本の古典文学作品は、もとは写本として伝存し、それらの変体仮名で書かれた原典を校訂本文に直す作業を経て、現在見るような活字本で読んでいる。この講座は、変体仮名を現行文字に翻刻したのみのテキストを用いて、句読点・濁点を付し、足りない送り仮名を補い、圧倒的に多い平仮名を適宜漢字に改めるなどの作業を経て、古文特有の文章に慣れることを目指す。

学習成果

日本の古典文学は写本の形態で伝存して来たが、写本は変体仮名を基に書写されたこと、また、その変体仮名は中国から渡来した漢字を基に派生したこと、したがって、現代と異なり、一音を表す文字は原則として複数あること(一音多字)、更には平仮名の外に片仮名も作られ、それに漢字をも取り込んで書写本が作られたこと、このような経緯を辿って古典文学作品が今日に伝わって来たことを勘案すれば、平安時代の文学がいかに稀有な存在なのかということが自ら理解されるはずである。

テキスト教材

平田喜信『和泉式部日記 影印校注古典叢書22』(新典社)

参考図書

中嶋尚『和泉式部日記全注釈』(笠間書院)
『日本古典籍書誌学辞典』(岩波書店)

評価の要点

レポートは、教材の内容の理解度、参考文献の活用の有効性、表現したい内容を論理的に過不足なく叙述しているか、試験は、基礎的理解度と、教材の内容を正しく把握しているか、という点を重視して評価する。

評価方法と採点基準

レポート合格後の科目終了試験で評価する。
上記と重なる点も多いが、レポートは文章表現力の如何に左右されるので、述べたい内容が正確に叙述されているか。試験は基礎知識が定着しているか否か、古文読解が正確にできているかどうかということを基準にして採点する。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

教育内容(1〜15)のうち1〜6は参考文献を参照してよく理解すること。7〜9はテキストにも解説があるが、他文献をも参酌すること。
10〜15は作品内容をよく読み、自分の考えを纏めること。以上の要点に従って学習することが望まれる。

レポート課題

提出数 2

第1課題

縦書きパソコン印字可
[1600]

第1設題

①テキスト11ページ1行目〜12ページ7行目「ゆめよりも…とかたる」、②テキスト23ページ1行目〜24ページ3行目「つこもりの…あかしつ」の①・②のいずれか1つについて、校訂本文(句読点・濁点・送り仮名を補い、適宜漢字を宛てる)に直し、現代語訳せよ。
語釈は不要とするが、難語句について言及することは可。
※現代語訳は主語に注意する。また、敬語表現や助動詞の意味も正確に識別して訳すこと。

第2課題

縦書きパソコン印字可
[1600]

第1設題

教育内容のうち、8〜15の中の興味ある問題点を1つ選び、原文を引用するなど客観的根拠を掲げて、自己の見解を述べよ。
※テキストや研究書等の丸写しをしないように。作品を読んだことが分かるようにまとめること。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
古典のテキストと変体仮名 古典テキストの特徴が分かる 変体仮名世界の特質 を学ぶ
変体仮名の発生 文学の歴史を学ぶことができる 字母とのかかわりを 理解する
複数の字母と一音多字の世界 現行仮名世界とのちがいが分かる
古典籍の文章 1句読点・濁点の無表示 古典籍特有の表記の特徴が分かる 古文特有の言い回し をよく学ぶ
古典籍の文章 2送り仮名の省略、少ない漢字
校訂本文作成の要点と現行活字本テキスト 古文独特のルールを理解できる 歴史的仮名づかいの 特徴を知る
和泉式部日記のテキスト──三条西家本と異本 古典のテキストの特質が理解できる 現存本文の由来・特 徴を知る
和泉式部の生涯 1家系・父母・娘 日記作者の生立ち、境遇が分かる テキストp.4〜9
和泉式部の生涯 2二度の結婚・宮仕え
和泉式部日記の世界──たった二人の世の中 日記の世界の特徴を理解できる 帥宮と女との交渉を 理解する
日記の冒頭と執筆の動機 日記作品の独特の動機が分かる テキストp.4〜9
弾正宮追慕から帥宮へと揺れる心 女心の軌跡を辿ることができる テキスト・参考文献 の全般に亘る
贈答歌応酬に見る女心の変化 和歌で表現する女心の世界を味わう
帥宮邸入りと周囲の軋轢 日記の終焉を告げる筆致が分かる
帥宮追悼の孤愁──家集の帥宮哀悼歌群 哀しい女心の表現の妙味が分かる 日記と家集とのかか わりを学ぶ
試験
筆記試験。テキスト・ノートの持込みが認められないので、基礎知識を問う設問が中心になるが、重要事項に関する見解を纏める文章
題も課される。