最終更新日:2024年4月5日

1年次入学生:1年 3年次編入学生:3年 短期大学部:-
児童学部 児童学科

C010

教育社会学

教育・子どもに関わる現象を社会との関わりで考える

単位条件

通信 2単位

教員

上田 智子

履修条件

なし

到達目標

この科目の目的は、「教育」や「子育て」、「学校」や「子ども」を社会学的に捉え、理論的・実践的・歴史的に研究する視点・方法を獲得することである。教育に関する現代的なテーマを取り上げ、それらについて、どのような社会学的知見が蓄積されてきたのか学ぶとともに、「教育」や「子ども」をめぐる身近な現象について、自ら社会学的視点から考察する力を養いたい。

学習成果

教育・子育て、学校や子どもに関わる現象について、社会との関わりで考察することができるようになることを企図している。具体的には、
①子どもの育ちにおいて家族が果たす役割、家族の抱える課題を整理し、説明できる。
②現代社会における子育て支援の必要性、幼児教育の重要性について理解し、今後の実践につなげることができる。
③学校教育が社会の変化と発展のなかでどう形成されてきたかを理解し、説明できる。
④カリキュラムの改訂動向について、社会変化との関わりの中で捉えることができる。
⑤学校社会における人間関係や生徒文化が子どもの育ちにどう関わるかを理解できる。
⑥消費社会・情報社会と子どもの育ちとの関係について理解できる。
⑦教師の社会的位置づけと役割について理解し、それをふまえて教師のあり方を展望できる。
⑧子どもや教育をめぐる様々な課題に興味を持ち、その社会的背景に目を向けることができる。
合わせて、学術的な文章を読み解く力、書く力、図表データを解釈する力などを身につけることも学習成果としたい。

テキスト教材

陣内靖彦・穂坂明徳・木村敬子編著『教育と社会』(学文社)2012

評価の要点

学習成果に示した①〜⑧の課題に関して、教科書を読み解き、重要な知識・論点について適切に理解できているか、社会との関わりで「教育」「子育て」を捉える視点の重要性を理解し、実践できているかを評価します。そのために必要な学術的な文章を読み解く力、書く力、図表データを解釈する力も評価のポイントとなります。

評価方法と採点基準

レポート合格後の科目終了試験で評価します。
・レポート評価の要点...教科書の論点を適切に把握し、①~⑧の課題に照らし教科書を読み解くことができているか、評価します。正誤問題・穴埋め問題は、正解・不正解のどちらかになりますが、論述問題には部分点もあります。
・試験評価の要点...論述試験。教科書の中心的な論点について理解が十分であるか、課題に即して簡潔に分かりやすく論述できているか、評価
します。

履修上の注意事項や学習上のアドバイス

・まずは教科書をよく読んで下さい。教科書の内容に基づいてレポート課題は出されます。試験においては、教科書の論点に関する自らの考察も評価の対象になりますので、批判的に読むことも心がけましょう。
・社会学的な視点の獲得と、それらに基づく教育現象の把握・考察に努めてください。日常的にも教育に関するニュースに注目するなど、アンテナを高くし、教育現象への関心を高めていただきたいと思います。

レポート課題

提出数 2

第1課題

解答用紙あり

第1設題

I〜IV全ての問いに答えなさい。

I 次のことばについて説明しなさい。
(1)教育家族  (2)マルティプル・ペアレンティング  (3)社会関係資本

 次の文章の①〜⑩にあてはまることばを答えなさい。
落合恵美子*1は、日本の高度経済成長期に形成され、それを支えた家族、すなわち「( ① )年代家族」には、( ② )学的に見て特殊な状況があったと指摘している。人口学理論の一つである人口転換論によると、近代化にともない、( ③ )社会から( ④ )社会への移行が生じるが、「( ① )年代家族」は、その途上で出現する( ⑤ )型家族であり、( ⑥ )が多いという特徴を持っているというのである。
「( ① )年代家族」は、( ⑥ )のつながりを子育てにおいて大いに活用した。高度経済成長期以前の家族においては、( ⑦ )ネットワークが子育てにおいて重要な役割を果たしていたが、高度経済成長期まっただ中の「( ① )年代家族」においては、( ⑧ )ネットワークが子育てを支えていた。つまり、いずれの時代も( ⑨ )だけで子育てをしていたわけではなかったといえる。
そして、( ⑦ )ネットワークや( ⑧ )ネットワークに頼れなくなったため、1970年代以降の家族においては、( ⑨ )が社会問題化したといえるのである。
*落合恵美子『21世紀家族へ(第3版)』(有斐閣選書、2004)

 次の①〜⑤の文章のア〜コにあてはまることばを答えなさい。また、下記の(1)〜(2)の質問に答えなさい。
①伝統社会における「ムラ(共同体)」による教育(産育)は、七五三や成人式といった( ア )のほか、「( イ )」や「娘組」といった青年組織などを通じて行われた。
②( ウ )年の学制公布をもって日本に普遍的公教育の制度がスタートし、(a)「国民皆学」が唱えられた。
③大正時代には、民主主義の考え方とともに、アメリカの( エ )運動の思想が流入し、私立の学校を中心として大正( オ )教育が展開した。
④第二次世界大戦の敗戦に伴い、アメリカを代表とする連合国軍の占領下で、日本の教育制度は、戦前の(b)( カ )主義教育体制から、(c)( キ )主義教育体制へと大きく転換した。
⑤1984〜1987年の( ク )教育審議会は、( ケ )の諮問機関として召集され、戦後教育の見直しや教育分野における( コ )改革の足がかりとなる答申を行った。
(1)下線部(a)の原則を表す言葉として、「学事奨励の被仰出書」に示された言葉を書きなさい。
(2)下線部(b)と下線部(c)のそれぞれに関係するものを2つずつ下記から選び、答えなさい。

A.国定教科書 B.教育委員会制度 C.法律主義 D.師範学校

 幼児教育において特に市場化が進行している背景をまとめなさい。

第2課題

解答用紙あり

第1設題

I〜Ⅳ全ての問いに答えなさい。
 次のことばについて説明しなさい。
(1)教科書検定制度  (2)隠れたカリキュラム  (3)インティメート・ストレンジャー

 次の①〜④の文章のア〜コにあてはまることばを答えなさい。また、下記の(1)の質問に答えなさい。
①学問の構造に基盤を持ち、体系的な知識を効率的に伝達するのに有効な(a)( ア )カリキュラムに対し、子どもの生活経験に由来する興味・関心をもとに教育内容を構成したものを(b)( イ )カリキュラムと呼ぶ。
②1947年に出された『学習指導要領』は、カリキュラムについて「教師自身が自分で研究していくための( ウ )」として位置づけられており、「( エ )」という言葉が添えられていた。しかし、1958年改訂の『学習指導要領』から文部省( オ )として出されることとなり、( カ )力をもつものとなった。
③1968年改訂の『学習指導要領』は、( キ )期を経て発言力を増した産業界からの要請により、かつてないほど教育内容が高度化したため、やがて( ク )教育と批判されることになった。
④2003年、「ゆとり教育」が原因とされる( ケ )が社会問題化したことを受けて、文部科学省は、『学習指導要領』が( コ )基準としての性格を持つことを明言し、これにより、教科書に「発展的な学習内容」を掲載することが可能になった。
(1)下線部(a)と下線部(b)のそれぞれに関係するものを2つずつ下記から選び、答えなさい。

ア.系統性 イ.社会科 ウ.総合的な学習の時間 エ.教育内容の現代化

 

 次のA〜Dの文章の①〜⑩にあてはまることばを答えなさい。
A .一斉教授を可能にする現在の教室空間の原型は、( ① )革命時のイギリスにおいて、できるだけ少数の教師で、多数の子ども達を監督する必要から発明されたものに求められる。それらは、( ② )を活用して、多数の子どもを一度に監督するシステムであったことから( ③ )システムと呼ばれている。
B.明治期に欧米から学校教育制度が「輸入」された当初は、「( ④ )」と呼ばれる学力別のクラスが用いられていたが、1900年、クラスを( ⑤ )別に編成するとする「学年別学級制」が採用されることになった。
C .日本においては、学級に対し、単なる学習のための組織ではない、特別な意味が与えられ、「生活( ⑥ )」と捉える傾向が強い。そのため、他の学級への無関心・不干渉をともなう「学級( ⑦ )」と呼ばれることもある。
D .教師像をめぐっては、1950年代半ば、教師は私欲を追求すべきでないという、古くから日本に存在する「( ⑧ )」論と、教師もまた日々の生活を向上させたいと願う権利を有するという「( ⑨ )」論の間で熾烈な論争が繰り広げられた。その後、ILOとユネスコの共同勧告が出た事により、「( ⑩ )」論という新たな見方が提示された。

 次の問いに答えなさい。
(1)教師の「新しい専門職性」とはどのようなものか、説明しなさい。
(2)学校に子どもたちが「お客様」意識を持ち込むことにはどのような問題があるか、説明しなさい。

備考・補足

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授業回数別教育内容 身につく資質・能力 学習範囲
(予習・復習を含む)
子どもにとっての家族の役割を社会学の諸概念を用いて理解する。現代日本の家族の現状をデータをもとに検討する。 子どもにとっての家族の役割をふまえ、現代日本の家族の現状を説明できる。 教科書
pp.9-17
現代日本の「家族意識」の現状を理解し、家族の課題や今後のあり方について考察する。「教育家族」の誕生と普及とその背景について理解する。 現代日本の家族意識の現状をふまえ、家族の課題について述べることができる。 教科書
pp.17-26
子育て支援の法的根拠、社会的根拠について、理解する。高度経済成長期の社会変化が、子育てに与えた影響について理解する。 子育て支援の重要性や、子育て支援が求められる社会背景について説明できる。 教科書
pp.27-32
「育児不安」に関する研究知見をふまえて、子育て支援の課題を考察する。子育て支援施策の歴史と現状を理解する。 種々の研究知見をもとに、子育て支援の課題を説明できる。 教科書
pp.32-43
幼児教育への関心の高まり、幼児教育の「多様化」「市場化」の実態とその社会的背景について理解する。 幼児教育の多様化・市場化とその背景について説明することができる。 教科書
pp.44-55
p.60
幼児教育の内容・形態における変化を、社会の変化を関連づけて検討する。集団を重視した保育と自由保育の趨勢を、社会変化と関連づけて検討する。 幼児教育の内容・形態の変化を社会の変化と関連づけて検討できる。 教科書
pp.55-60
前近代における教育のあり方を理解する。近代化のなかでの学校教育制度の誕生と展開を、社会の変化と関連づけて考察する。 前近代の教育、学校教育制度の誕生と発展を社会変化と関連づけて説明できる。 教科書
pp.64-73
pp.84-85
戦前・戦後の学校教育の歴史を社会の変化と関連づけて考察する。民主主義国化、産業化、ポストモダン化が学校教育に与えた影響について理解する。 民主主義化、産業化、ポストモダン化と学校教育の関係を説明できる。 教科書
pp.73-83
カリキュラムとは何かを理解する。学習指導要領を手がかりに、カリキュラムの変遷を社会変化との関連で捉える視点を身につける。 学習指導要領の変遷を、日本社会の変化と関連づけて説明できる。 教科書
pp.87-95
教科書の検定・採択のシステムを理解し、日本の教科書制度のあり方を考察する。カリキュラムの社会統制機能について理解する。 教科書検定・採択の仕組みやカリキュラムの社会統制機能について説明できる。 教科書
pp.95-102
「教室」や「学級」の成立と普及の歴史を理解し、教室空間や学級制度を、社会学の視点から捉え、理解する。 教室空間や学級を社会学的に捉える。学校経験を、異なる視点からふりかえる。 教科書
pp.103-105
学校文化・生徒文化・隠れたカリキュラムという概念を理解する。学校の慣習や人間関係、様々な価値をめぐる葛藤をそれらの概念を用いて考察する。 学校文化とは何か説明できる。自分の学校経験を、異なる視点からふりかえる。 教科書
pp.109-118
消費社会・情報社会とは何かを理解する。
消費社会・情報社会が子どもの文化や生活に与える影響を考察する。
消費社会や情報社会が子どもの文化や生活に与える影響を説明できる。 教科書
pp.119-135
日本の教師の仕事の特徴について理解する。
今日の学校と教師に対する役割や仕事の変化について理解する。
日本の教師の仕事の特徴、教師に対する期待や役割の変化について説明できる。 教科書
pp.137-142
教員養成や教員の身分・待遇をめぐる制度を理解する。教員をめぐる制度や「問題」の実態をふまえ、今後の教師のあり方について考察する。 日本の教師の現状をふまえ、今後の教師のあり方について考察し、適切に表現できる。 教科書
pp.142-151
試験
第1〜15回の内容を復習し、目標が達成できたかを確認する。
学習をふりかえり、要点をまとめることができる。
学習をふまえ、自らの考えを文章で表現することができる。